2011年09月14日

●「事務次官会議をなぜ復活するのか」(EJ第3141号)

 2007年8月のことですが、当時の防衛相・小池百合子氏は
守屋武昌防衛事務次官を更迭し、かねてから親交のある警察庁出
身の西川徹氏を防衛事務次官とする人事案を実現させようとして
密かに動いたのです。
 しかしこの人事情報は、たちまち守屋事務次官の知るところと
なり、守屋氏は小池大臣ではなく、当時の安倍首相や塩崎恭久官
房長官に対して直接人事案の撤回を直訴し、塩崎官房長官が守屋
氏の肩を持つという異常事態が発生したのです。
 人事権者は明らかに小池防衛相です。しかし、小池氏が決めよ
うとした人事案を部下の守屋氏が撤回させようと政権のトップに
直訴したのです。「何とかしてくれ!」と・・・。
 常識的には人事権者の決めたことであり、守屋事務次官の撤回
要求はスジが通らないものです。ところが塩崎官房長官は小池防
衛相の方にクレームをつけたのです。「官僚の人事には介入しな
い」という慣例に反する行為だからです。
 これに激怒した小池防衛相は辞任を口にして抵抗したのですが
安倍首相、塩崎官房長官らは、守屋留任でも西川でもない「第3
の人事案」を小池防衛相に提案して事態の収拾を図ろうとしたの
です。マスコミはこれを「痛み分け」とか「けんか両成敗」など
と書き立てる事件があったのです。
 民主党はこういう人事を巡るドタバタをやめて、次の方針を掲
げたのです。
―――――――――――――――――――――――――――――
 事務次官・局長などの幹部人事は、政治主導の下で業績の評価
 に基づく新たな幹部人事制度を確立する。政府の幹部職員の行
 動規範を定める。   ──民主党マニュフェスト/2009
―――――――――――――――――――――――――――――
 しかし、これをやられると官僚側には何かと都合のわるいこと
が多く、絶対に受け入れられないことなのです。そのため、これ
を計画的に潰しにかかったのです。
 さらにこれに関連して鳩山政権は、次のように事務次官会議の
廃止を宣言しています。
―――――――――――――――――――――――――――――
 これまでの事務次官等会議などは廃止し、政府の決定について
 事務次官など官僚のみによる事前調整にゆだねることはしない
―――――――――――――――――――――――――――――
 これは単なる会議の廃止ではないのです。事務次官会議には全
省の事務次官が一堂に会するのです。毎週月曜日と木曜日──閣
議の前日に総理官邸で行われることになっています。この会議を
仕切るのは、官房副長官です。これは全事務次官の上に立つ存在
であり、文字通り官僚のトップということになります。
 野田政権では、この官房副長官には竹歳誠氏(元国土交通省事
務次官)が就いていることはEJ第3134号でお知らせした通
りです。勝英二郎財務事務次官の画策によるものです。ちなみに
官房副長官は政治任用の特別職であり、法律では3人と定められ
ており、そのうち2人は政府の副長官として国会議員が、1人は
事務の副長官として事務次官経験者が就くことが慣例となってい
るのです。
 事務次官会議に関連して、昔から守られてきている、ひとつの
不文律があります。次のような慣習です。
―――――――――――――――――――――――――――――
 総理以下、各大臣が勢揃いして閣議で決定する案件は、必ず、
 前日の事務次官会議で、全会一致で了承されなければならない
―――――――――――――――――――――――――――――
 例えば、ある省で法案を国会に提出する場合、事務次官会議は
全会一致と決められているので、事務次官会議の前の段階で、全
省と根回しをして、事務次官会議で賛成してもらうよう調整する
必要があるのです。そのための会議が「各省協議」です。
 この各省協議で、相撲取りの星の貸し借りのように、この法案
は賛成するから、うちの出す法案は賛成してくれといったような
取引が行われるのが通例になっています。こういうものがあるの
で、事務次官会議や閣議は儀式化してしまうのです。こういうや
り方が120年間以上続いてきたのです。
 民主党はこういうやり方を変えようとしたのです。これは画期
的なことです。政権交代がなければ絶対にできないことです。政
治家同士が議論して方針を決定するトップダウン型にすれば、事
務次官会議などは不要になるのです。政策調整は「閣僚委員会」
で行うことになります。
 閣僚委員会は、正式には「基本政策閣僚委員会」といい、閣議
の前に主要閣僚による政策協議を行い、閣僚が課題を調整するこ
とによって、政治主導を行おうとするものであり、鳩山内閣の政
権構想としてはじめられたものです。これは英国の議会制度を参
考にしたものです。(「関連情報」参照)
 鳩山内閣は迷走したといわれます。確かに沖縄問題などの外交
問題では、そういう面もありましたが、慣れないなか、随分がん
ばったと思うのです。支持率が下がったのは、明らかにこの政権
を潰そうとするある勢力が働いたからなのです。
 少なくとも選挙前に打ち出したマニュフェストを何とか守ろう
とする民主党政権に対しては、官僚機構は記者クラブメディアを
使って潰しにかかっています。そういう政権が存続することは官
僚機構にとって困るからです。
 そういう意味で野田内閣になってから、直ちに事務次官会議が
復活したことにきは違和感を感じます。事務次官会議が復活する
と、既に禁止されている「事務次官会見」も復活する可能性があ
ります。この会見は「あくまで官が政の上の存在である」ことを
誇示するものであり、政治主導に反するものです。
 民主党にとって敵は自民党などの野党ではないのです。官僚機
構なのです。民主党として力のある政治家を結集することこがな
ぜできないのでしょうか。 ─── [日本の政治の現況/67]


≪画像および関連情報≫
 ●民主党政権と「政治家主導の政治」/富士通総研
  ―――――――――――――――――――――――――――
  民主党のマニフェストにも記されている閣僚委員会とは、イ
  ギリスのCabinet Committeeの日本語訳であろう。イギリス
  でも内閣は閣議においてその意思決定を行うが、閣議の構成
  員である閣内大臣は20名を越えるため、その場での実質的
  な議論は困難である。そのため省横断的な場合、予算規模が
  大きい場合、新たな政策展開を行う場合には、その政策課題
  ごとに総理を含む関係大臣が定期的に集まり、少人数で実質
  的な議論を通して総合調整を行い、その結果を閣議に報告し
  て正式に意思決定する。イギリスではサッチャー政権におい
  て、閣議よりも「閣僚委員会」が実質的意思決定を担うよう
  になったと言われている。
  http://jp.fujitsu.com/group/fri/column/opinion/200908/2009-8-4.html
  ――――――――――――――――――――――――――

小池百合子衆議院議員.jpg
小池 百合子衆議院議員
posted by 平野 浩 at 03:28| Comment(0) | TrackBack(0) | 日本の政治の現況 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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