2011年08月31日

●「民主党が躓いた2つの原因」(EJ第3131号)

 EJで再び日本政治のテーマを取り上げたのは、この国の政治
には異様なものが存在するからです。民主党の代表選に決着がつ
いたので、このテーマをさらに掘り下げて行くことにします。
 理想を掲げて悲願の政権交代を実現した民主党は、なぜ現在の
ようなテイタラクになってしまったのでしょうか。それは見るも
無残な状態で、修復が困難なほどです。
 経産省官僚で今や一番の有名人である古賀茂明氏は、民主党が
躓いた基本的な原因を2つ上げています。
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    1.民主党が何をやりたいのか、明確でないこと
    2.政治主導のための仕組みを確立できていない
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 民主党は何をやりたいのでしょうか。民主党がそれを掲げて選
挙を戦ったマニュフェストを熟読しても、民主党が目指している
国家観が伝わってこない──このように古賀氏はいっています。
 しかし、民主党を政権交代に導いた小沢一郎元代表は、その著
書である『日本改造計画』(講談社)において、既に1993年
にそれを明確にしています。それだけではないのです。小沢氏は
新生党、新進党、自由党において、野党でありながら、与党と連
立を組むなりして、それをひとつずつ実現してきていることは、
ここまで述べてきている通りです。
 しかし、民主党の議員たち──とくに反小沢陣営の議員たちは
果たしてこの本を読んでいるのでしょうか。テレビなどで、そう
した議員たちの発言を聞くと、とてもそう思えない人もたくさん
いるのです。小沢氏に対して「政治とカネ」のレッテルを貼るだ
けで、小沢一郎という政治家についてろくに研究もせず、理解し
ようとしていないのです。それではいつまで経っても「脱小沢」
はなくならないのです。
 民主党が評判を落としたことのもうひとつは、政治主導に失敗
したことです。少し厳しくいうと、官僚の前から尻尾を巻いて逃
げ出した観があります。その理由は2つあります。
 第1は、最初の鳩山内閣が「弱い内閣」を作ってしまったこと
にあります。それは鳩山首相が小沢氏を「条件付き」の幹事長に
しか起用しなかったことにあります。そのため、鳩山内閣は小沢
氏の剛腕をフルに使えなかったのです。政治の制度改革には与党
として相当の覚悟で取り組む必要があります。そのため、政治改
革を政治目標としてこれまでやってきている小沢元代表を使うべ
きだったのにそれをしなかったのです。
 古賀茂明氏は民主党の「政治主導」について次のように述べて
います。
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 官僚が国民の代表である政治家の考えを半ば無視して、自分た
 ちの利益につながる政策を立案している。これを改革するキー
 ワードが「政治主導」なのは間違いないが、言葉だけが独り歩
 きしていて、そのための仕組みが整えられておらず、掛け声倒
 れになった。そうなってしまったのは、政治の制度改革が遅れ
 ていたからだ。国家公務員制度改革推進本部で公務員制度改革
 に取り組んでいたときに、行政と政治の制度改革はセットで行
 うべきだと強く感じた。公務員制度が改革され、官僚が国民の
 ために働く仕組みになっても、政治がそれを使いこなし、政策
 に活かせる体制になっていなければ、行政は正常に機能しない
 からだ。  ──古賀茂明著/『日本中枢の崩壊』/講談社刊
―――――――――――――――――――――――――――――
 第2は、民主党議員の勉強不足です。「政治主導」とは、政治
家が「主」になって、官僚を「従」として使いこなし、物事を決
めていくことですが、知識や知恵が不足しているために、政治家
が「主」になれなかったのです。ところで、政権交代の前に民主
党は次のようなことをいっていたのを覚えているでしょうか。
―――――――――――――――――――――――――――――
 霞が関の幹部職員(事務次官など)には、全員辞表を書いて
 もらう。それが政治主導というものである。
―――――――――――――――――――――――――――――
 これについて古賀茂明氏は、うまくやると、これはきわめて効
果的であったと述べているのです。どうすればよかったかのとい
うと、内閣発足と同時に本当に幹部職員から辞表を書いてもらう
のです。もちろん、公務員には身分保障があるので、有無をいわ
さず、クビにはできないのは当然です。
 鳩山内閣では辞表すら集められませんでしたが、辞表は集める
べきであり、その辞表は大臣預かりにするのです。これだけでも
官僚は相当プレッシャーを感ずるものです。そのうえで、例えば
「独法の天下りポストをすべて廃止せよ」とか「無駄なコストを
2割削減せよ」という指示を一定の期限を切って出し、それがで
きれば留任させ、できなければ辞表を受理するか、他のポストに
異動させるのです。
 米国では、政権が変われば政権を支えたスタッフは全員代るの
です。しかし、そういう習慣のない日本でこれをやるには、閣僚
としての相当の度胸と決断力が必要です。民主党は結局は何もし
ないまま、自民党のときの幹部官僚を全員そのまま受け入れてし
まったのです。これで政治主導ができるはずがないのです。
 己の力を過信し、政治経験豊富なベテラン政治家を遠ざけ、官
僚を敵視して相手にせず、結局何もできないで終る──これが現
在の民主党の現状であるといえます。
 民主党が最初にぶつかったのは、既に概算要求として財務省に
提出されていた予算の扱いです。これは自民党政権下において提
出されたものであり、民主党としてはそれをそのまま追認するわ
けにはいかなかったのです。一から組み直す時間がない。予算編
成の経験もない。結局、妥協の産物として、財務省に頼らざるを
得なかったのです。これによって財務省にすっかり取り込まれた
のです。        ──── [日本の政治の現況/57]


≪画像および関連情報≫
  ●予算の概算要求について
  ―――――――――――――――――――――――――――
  年度の予算編成にあたっては、前年度の夏から秋頃までに各
  省庁が必要な予算額を財務省に示す。これが「概算要求」で
  ある。これを財務省の主計局がとりまとめて「財務原案」と
  呼ばれる予算の原案を作成するという手順になる。概算要求
  基準は、この概算要求の上限をあらかじめ財務省が設定して
  各省庁に通知するものであり、英語で天井・限度を意味する
  「シーリング」と称される。この数字は経済財政諮問会議で
  議論された上で閣議了解されることで決定される。
                    ──ウィキペディア
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経産省・古賀茂明氏.jpg
経産省・古賀 茂明氏
posted by 平野 浩 at 04:15| Comment(0) | TrackBack(0) | 日本の政治の現況 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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