2001年06月20日

証券化のメリットを整理する(EJ641号)

 今朝は「証券化」のまとめをやります。「証券化」の話は今日
で終わりです。
 最近よく本社ビルを売却する話がニュースとなります。東京三
菱銀行も本社ビルを売却しましたね。東京三菱銀行は、政府から
の公的資金受け入れに反対して、本社ビルを売却すると宣言した
のです。その他、中央区銀座の日産自動車本社、港区虎ノ門のジ
ャパンエナジー本社、渋谷区渋谷の東邦生命本社ビルなどが売却
されています。
 ところで「本社ビルを証券化する」という表現もよく新聞で見
かけるのですが、どう違うのでしょうか。
 結論からいうと、日本では「本社ビルを証券化する」とは「本
社ビルを売却する」ことと同意義なのです。いまだに本社ビルを
売却することは恥ずかしいことだと思っており、それを単に「証
券化する」といっただけなのです。
 といっても、「本社ビルを証券化する」には、次の4つの段階
の手続きがいるのです。
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 1.オリジネータ(資産の原保有者)が本社ビルを信託銀行
に不動産管理処分信託をする。
 2.信託銀行がオリジネータに信託受益権を交付する。
 3.オリジネータは信託受益権を特定目的会社(SPC)に
   譲渡(売却)する。
 4.SPCは信託受益権を裏づけに社債を発行し、資金調達
   をする。
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 これは本社ビルを売却することと何も変わらないのです。しか
し、ほとんどのオリジネータは、将来本社ビルを買い戻す権利、
オプションをつけるのが通常のようです。
 本社ビルを売却することは経営の戦略のひとつであり、別に恥
ずかしいことではないのです。それでは、本社ビルを売却すると
どういうメリットがあるのでしょうか。
 本社ビルを売却することの最大のメリットは、多額の資産をバ
ランスシートから落とせることにあります。これによって、RO
A(純資産利益率)、ROE(株主資本利益率)という経営指標
が大幅に改善されるのです。
 このように資産をバランスシートから落とすことを「オフバラ
ンス」といいますが、これは真正な売買でなければ認められない
ことになっています。証券化は何の資本関係もないSPCに譲渡
するので、「真正な売買」と認められています。
 ここで「証券化する」メリットを整理しておきましょう。証券
化をオリジネートする側からのメリットをあげると次の4つにな
ります。
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     1.リスクを合理的に回避できる
     2.低コストで資金調達ができる
     3.オフバランス効果が得られる
     4.資金調達方法を多様化できる
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 証券化のメリットの第1は、資産を持ち続けることのリスクを
他者に移転させることによって、そのリスクを回避できることで
す。例えば、固定金利で住宅ローンを貸している金融機関は、つ
ねに金利上昇のリスクを負っていますが、証券化によってそれを
他者に移転すればリスクを回避できます。
 証券化のメリットの第2は、低コストで資金調達ができること
があげられます。どのような優れた商品を持っていても企業の信
用力がないと、銀行はなかなか融資をしてくれません。しかし、
証券化対象資産の信用力を使って、自らの信用力よりも高い証券
を発行することによって、より低コストで資金調達を行うことが
できます。
 証券化のメリットの第3は、オフバランス効果があがることで
す。具体的には、ROA、ROEの改善ですが、金融機関にとっ
てはBIS基準をクリアすることが求められており、経営指標の
改善は、より企業価値を高めることにつながります。
 証券化のメリットの第4は、証券化という金融技術を使うこと
によって、従来の銀行借り入れや社債発行という資金調達以外の
方法で資金調達が図れるメリットがあります。
 以上の4つは、オリジネータから見た証券化のメリットですが
投資家によって証券化はどういうメリットがあるかを考えてみる
と、次の3つになります。
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     1.商品特性が明確であること
     2.ポートフォリオの分散効果
     3.高格付けと高利回りがある
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 証券化による商品が出回ることは、投資家にとって投資対象に
なる商品の選択機会が増大すること――これが最大のメリットと
いえます。それを具体的にいうと、次の3つになるのです。
 第1のメリットは、証券化商品は投資家にとって通常の商品に
比べて特性が明確になっていることです。というのは、商品化の
過程で多くの専門家が関与することによって、資産の内容や価値
それにリスクの測定が容易になることです。
 第2のメリットは、ポートフォリオの分散効果があるというこ
とです。一つの借り主に対するローンに投資するのに比べて、住
宅ローンの証券化商品のように、多数のローンがプールされた商
品に投資する方が、投資家のリスクを分散できます。
 第3のメリットは、証券化商品への投資は、比較的高格付けの
商品に対して行うことができます。利回りについても通常の公社
債に比べて証券化商品として組成されたものは、高利回りのもの
が多いので投資家にとっては投資しやすいといえます。
 現在流行している証券化という金融技術――興味をもっていた
だけたでしょうか。

posted by 平野 浩 at 00:00| Comment(0) | TrackBack(0) | その他 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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