2001年06月19日

診療報酬債権を証券化する(EJ640号)

 今朝も「証券化」の話です。6月15日付の日本経済新聞には
「診療報酬債権を証券化/三井・住友海上と日生提携」という記
事が出ていました。
 三井海上火災保険と住友海上火災保険の2社は10月に合併す
ることになっていますが、今回日本生命保険と組んで、病院が健
康保険組合などの医療保険に対して有している「診療報酬債権」
の証券化事業で提携すると発表したのです。
 そういえば、日本生命と三井・住友火災海上保険は、2000
年秋に、サービスや商品の相互供給を行う提携を発表していまし
たが、これがその第一弾というわけです。
 この最新のニュースを手がかりとして「証券化」の問題を考え
ていきましょう。少しずつ、ワンステップずつやれば、けっして
難しくありませんから・・・。
 資産には、証券化しやすい資産と証券化しにくい資産とがあり
ます。一般論としてですが、証券化しやすい資産と証券化しにく
い資産を上げてみることにします。
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 証券化しやすい資産      証券化とにくい資産
  @住宅ローン         @商業不動産担保ローン
  Aリース債権         A商業不動産の所有権
  Bクレジットカード債権    B不良債権
  C自動車ローン債権      C更地
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 「証券化しやすい資産」と「証券化しにくい資産」の差は何で
しょうか。それは「キャッシュフローが読みやすい」か「キャッ
シュフローが読みにくい」かの違いです。すなわち、「証券化し
やすい資産」はキャッシュフローが読みやすく、「証券化しにく
い資産」はキャッシュフローが読みにくいのです。
 それでは、「キャッシュフロー」とは一体何でしょうか。
 「キャッシュ」とは、現金のことですが、キャッシュフローに
おける「キャッシュ」は現金だけではなく、「現金および現金同
等物」ということになります。「現金同等物」とは、現金ではな
いが、容易に換金可能で、現金にほぼ等しいものという意味にな
ります。
 「容易に換金可能」ということを具体的にいうと、取得日から
満期日または償還日までの期間が3ヶ月以内ということになって
います。これが判定基準というわけです。
 「キャッシュ」は次のように整理することができます。
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  ●現   金
   1.手元現 金
           2−1 普通預金
   2.要求払預金 2−2 当座預金
           2−3 通知預金
  ●現金同等物
   1.定期預金
   2.譲渡性預金
   3.CP/コマーシャルペーパー
   4.売戻し条件付現先
   5.公社債投資信託
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 さて、キャッシュフローとは、以上のような現金および現金同
等物の増減のことをいうのです。表現を代えると、「お金の支払
い(出)と受け取り(入)のことであり、資産金融でいうところ
のキャッシュフローとは、「実質的総収入から営業経費を差し引
いた残余のマネー」ということになるのです。
 さて、新聞報道の「診療報酬債権」とは何でしょうか。
 病院は患者の治療に要した費用を診療報酬として企業の健康保
険組合や国民健康保険に請求する権利を有しています。これが、
「診療報酬債権」です。これによって、病院は経営をしているの
ですから、その請求権は病院にとって資産といえます。
 診療報酬は、通常請求して現金を受け取るまでには1〜2ヶ月
かかるのですが、現金になることが明確であるので、この債権は
キャッシュフローが確実にあるといえます。ですから、証券化し
やすい資産といえます。
 そういうわけで、この病院の請求権を住友・三井海上保険が設
立した特定目的会社(SPC)が買い取って、証券のかたちにし
て、機関投資家などに販売するというのです。病院にとってのメ
リットは、すぐ現金になること、それに証券化に伴う手数料も銀
行に借り入れするよりも安く済むということです。
 証券化をさらに理解するため、「住宅ローン」について考えて
みましょう。「住宅ローン」なら誰でもビンとくるからです。
 日本の銀行は、住宅ローンを組むとき「変動金利」で貸したが
ります。なぜかというと、低い固定金利で貸して途中で金利が上
昇するリスクを負いたくないからです。それは、住宅ローンが、
20〜30年という長期のローンだからです。
 ところが米国では、住宅ローンを低い固定金利で借りることが
できます。いや、固定金利で借りるのは当たり前なのです。米国
で変動金利で住宅ローンを組む人は、よほど信用状態に問題があ
る人に限られているのです。
 どうして日本と米国の銀行でこういう差が出るかというと、日
本の銀行は、ローン債権を完済されるまで持っているのに対し、
米国の銀行は途中で証券化してしまうからです。つまり、証券化
という金融技術を持つか持たないかの差なのです。
 米国の銀行の場合、途中で政府系の金融機関が住宅ローン債権
を買い上げてくれるので、低い固定金利で住宅ローンを組んでも
大丈夫なのです。その政府系の専門金融機関は、民間銀行の住宅
ローン債権を買い取り、それに政府の保証を付けて証券化するの
です。これは「公的MBS」と呼ばれる金融商品ですが、国の保
証付きですから、国債並みの信用力のある金融商品といえます。

640号.jpg
posted by 平野 浩 at 00:00| Comment(0) | TrackBack(0) | その他 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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