2011年08月10日

●「与党と内閣の一体化/小沢提案」(EJ第3116号)

 日本の政治体制は「議院内閣制」です。議院内閣制とは、立法
権を有する議会と行政権を有する政府(内閣)が分立しています
が、政府は議会の信任によって存在するとする制度のことです。
議会内閣制、政党内閣制などとも呼ばれます。議会と政府の関係
を整理しておきます。
―――――――――――――――――――――――――――――
        議会 ・・・・・・ 立法権
        政府 ・・・・・・ 行政権
―――――――――――――――――――――――――――――
 議会の多数派が内閣を組織し、責任を持って政治を担当する制
度であり、立法府の多数派と行政府が手を握るのですから、本来
であれば、首相は強力な指導力を発揮できるはずです。
 しかし、皮肉なことにその制度自体が、首相のリーダーシップ
の足を引っ張っていると小沢氏は指摘するのです。その理由につ
いて小沢氏は次のように述べています。
―――――――――――――――――――――――――――――
 ところが、(日本の場合)戦前からの官僚制を温存したため、
 権力の中枢は「官」であり、政治家は「民」の代表にすぎない
 という意識をそのまま引きずってきた。だから、たとえ国会の
 多数派となって、ある政党が政権を担っても、統治機構の外部
 の存在にすぎないという意識が残りつづけた。たとえば、与党
 である自民党は、しばしば「政府」に対して「要望」を出して
 いる。このような習慣があるのは、「官」としての政府が政治
 の頂点であり、与党はその周辺に存在しているものという図式
 になっているからだ。議会内の多数派である与党が名実ともに
 政権を担当するという意識が欠けているのではないだろうか。
 憲法に定められた制度は建前上の制度であり、実際には、戦前
 のように権力が「官」の世界に分散している状態がつづいてい
 るというほかない。
        ──小沢一郎著/『日本改造計画』/講談社刊
―――――――――――――――――――――――――――――
 内閣における一番重要な会議が「閣議」です。政策はすべて閣
議にかけられ、合議されることになっています。閣議の意思決定
には「閣議決定」と「閣議了解」がありますが、「意思決定は閣
僚の全員一致を原則」とするのです。
 議院内閣制の下では、各省庁のトップである大臣は同時に国政
全体に責任を持つゼネラリストとしての国務大臣の役割があるの
です。したがって、閣議に参加するときの資格は本来国務大臣と
してなのであり、各省庁の代表としてではないのです。
 しかし、現実には、各大臣は各省庁の代表として参加しており
ほとんどの大臣は自分の省庁についての知識がないので、官僚の
言い分を代弁する役割をしているに過ぎないのです。これでは閣
議において政策の調整をすることはきわめて困難になります。し
かも、「意思決定は閣僚の全員一致を原則」とするからです。
 そうなると、閣議にかけられる案件は事前に根回しの済んでい
るものに限られることになります。そこで実際にその調整をする
のは各省庁の事務次官であり、閣議の前日に開かれる事務次官会
議において提出案件が決められることになります。そうならざる
を得ないのです。そのため、閣議そのものは単なる儀式に過ぎな
いものになってしまいます。
 しかも、民主党政権では、その事務次官会議をかたちのうえで
は廃止しているので、閣議にかけられる案件の調整が、不十分に
なっているのです。その解決策として小沢氏は次のことを提案し
ているのです。
―――――――――――――――――――――――――――――
 具体的にどうするか。まず党の重要な役職者を内閣に取り込ん
 でしまう。そして、党の政策担当機関を内閣のもとに編成しな
 おし、正式な機関として位置づける。党の中枢イコール内閣と
 いう体制にするのである。まず、与党の重要ポストを内閣に取
 り込むことだが、イギリスでは、中世以来の重要ポストで現在
 は名目化している閣僚ポストに、議会運営の責任者や特命事項
 の担当者を任命する慣行ができている。それを参考にして日本
 でも、法案について内閣が責任を十分負えるよう、与党側の議
 会運営の最高責任者、たとえば幹事長を閣僚にする。それによ
 って、内閣と与党が頂点で一つになり、責任を持って政治を運
 営できる。  ──小沢一郎著/『日本改造計画』/講談社刊
―――――――――――――――――――――――――――――
 上記の小沢氏の考え方に基づいて、民主党は各省庁に副大臣や
複数の政務官を入れたのです。それまで各省庁の大臣は「民」の
代表としてひとりぼっちで省庁に乗り込んだのです。大臣の下に
は官僚のトップである事務次官がいるので、これでは官僚が反対
する政策がスムーズに進むはずがないのです。
 政務官の正式名称は「大臣政務官」といい、そのポジションは
副大臣の下で、事務次官の上であって権限はあるのです。そのた
め、大臣としては自分の下に政治家の部下がいることによって、
以前よりは仕事が進めやすくなったことは確かです。
 しかし、いかんせん政治家に経験が不足していることや官僚が
抵抗してサボタージュをすることによって必ずしも仕事が順調に
進んでいるとはいえない状況にあります。それに人数も明らかに
足りないのです。
 小沢氏は『日本改造計画』において「省庁ごとに2〜3人の政
務次官と4人〜6人の政務審議官のポストをつくり・・」と述べ
ています。政務次官を副大臣、政務審議官を政務官と考えると、
大臣の下には6人〜9人のスタッフが入ることになります。これ
によって、160人程度の議員が政府に入ることになりますが、
小沢氏は1993年の時点で著書においてそのことを提言してい
るのです。民主党政権でそのことが一歩進んだと思いますが、最
初からうまくいかないのは当たり前の話です。継続して時間をか
けるしかないのです。    ── [日本の政治の現況/42]


≪画像および関連情報≫
 ●「大臣政務官」について
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  大臣政務官は、国会審議の活性化及び政治主導の政策決定シ
  ステムの確立に関する法律により、従来の政務次官を廃止し
  て副大臣とともに設けられた。従来の政治任用ポストであっ
  た政務次官は権限も小さく役割も不明確であったため、「省
  庁の盲腸」と揶揄され軽んじられてきた。この点を反省し、
  国会審議の活性化と政治主導の政策決定システムを確立する
  ため、国会における政府委員制度を廃止し、副大臣と大臣政
  務官に適材適所の実力者を登用することとした。
                    ──ウィキペディア
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歴代内閣総理大臣の花押.jpg
歴代内閣総理大臣の花押
posted by 平野 浩 at 04:11| Comment(0) | TrackBack(0) | 日本の政治の現況 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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