2011年07月27日

●「なぜ、世間は小沢を悪くみるのか」(第3106号)

 小沢一郎ほど、ここまで悪しざまにいわれる政治家も少ないで
しょう。多くの人が小沢を慕い、そして多くの人が小沢から離れ
ていくといいます。「来る者は拒まず、去る者は追わず」、そし
て「言い訳をしない」──これが小沢氏の信条です。
 しかし、小沢一郎について調べていくと、世間一般で認識され
ている評価は非常に歪められていることがわかります。明らかに
彼はある勢力によって意図的に悪者に仕立てられています。どう
いう意図をもって彼らは小沢氏を貶めているのでしょうか。
 小沢氏の身近に仕え、彼を知り尽くしている元秘書の石川知裕
氏はこれについて、次のように述べています。
―――――――――――――――――――――――――――――
 新生党を立ち上げ、細川政権を樹立した時は「剛腕」と称賛さ
 れた。だが、「普通の国」と言い出したとたんに「独裁者」と
 なった。小選挙区制や国民福祉税を掲げると「強権」と言われ
 保保連合が取りざたされると「悪魔」と呼ばれた。新進党を解
 党した時、「壊し屋」が定着。そして、近年、「政治とカネ」
 が小沢の代名詞になった。政策や理念に共鳴しているなら、小
 沢の評価は変わらないはず。それなのに、人は離れていく。新
 進党、自由党にいた人は自民党に戻った。民主党でも近づいて
 きた人がいたが、小沢が代表や幹事長を辞任した後には菅さん
 や前原さんのもとに移っていった。いつも小沢が下野している
 時、人は離れていく。そんなものだ。    ──石川知裕著
         『悪党/小沢一郎に仕えて』/朝日新聞出版
―――――――――――――――――――――――――――――
 ブログやツイッターで小沢氏のことを取り上げると、「なぜ小
沢を擁護するのか。小沢にどれほどの政治的業績があるのか。彼
はただの壊し屋じゃないか」というような意見をいただくことが
あります。テレビや新聞などのマスコミが意図的に小沢氏を貶め
ている効果がここまで浸透してしまっているのです。
 同じようなことをカレル・ヴァン・ウォルフレン氏がいってい
るのです。ウォルフレン氏は日本で講演する機会が多いそうです
が、必ずといってよいほど次のような質問が出るといいます。
―――――――――――――――――――――――――――――
 ウォルフレンさん、あなたのおっしゃることはほぼすべてにつ
 いてもっともだと感じます。しかしあなたがなぜ小沢ファンな
 のか、私には理解できません。
       ──カレル・ヴァン・ウォルフレン著/井上実訳
         『誰が小沢一郎を殺すのか?』/角川書店刊
―――――――――――――――――――――――――――――
 ウォルフレン氏は、日本政治の現代史を調べるなかで、小沢一
郎に関するさまざまな資料を集めて彼がこれまでやってきたこと
を踏まえて、彼が日本の政界できわめて重要な存在であることを
認識しているのです。
 しかし、日本人の多くのは小沢一郎の政治的業績についてロク
に調べもせず、彼の書いた本も読まず、テレビや新聞の報道を見
て「小沢は悪い奴だ」というイメージを持っているのです。テレ
ビや新聞が小沢一郎という政治家を意図的に貶めているのではな
いかとなぜ考えないのでしょうか。
 ウォルフレン氏は、しだいに日本人の小沢一郎観がわかってき
て、事態が飲み込めるようになってきたといいます。そして小沢
一郎という希有な政治家が、このままでは政治的に「殺される」
ことを危惧して『誰が小沢一郎を殺すのか?』という本を上梓し
たのです。その中で、ウォルフレン氏は小沢一郎について次のよ
うに書いています。
―――――――――――――――――――――――――――――
 やがて自分にも、小沢氏の強烈な個性と果断さ、傑出した政治
 手腕が理解できるようになった。するとなぜ彼のやり方が、当
 時、世間に賛否両論を呼び起こしたのか、ということがわかっ
 た。それは小沢氏がその非凡な能力ゆえに、日本の政治システ
 ムという旧態依然とした体制を維持しようともくろむ勢力にと
 って真の脅威であるからだった。早くも一九九三年と九四年に
 その政治的な動機にあらぬ疑いをかけ、小沢氏の立場を貶めよ
 うとする動きが生じ、さまざまな異論が噴出したのはなぜか?
 私から見ればその答えは単純明快である。それは小沢氏が疑い
 もなく、日本の政治システムを運営し、権力の頂点に達し、さ
 らにはほかの政治家たちの支持をも集めることのできるような
 効果的で、なおかつ従来とは異なるやり方を、だれにも増して
 熟知しているという点で、改革を志す政治家のなかでは最強の
 人物だったからである。要するに、小沢氏は日本の政治システ
 ムという現体制の最大の脅威となり得る人物だということなの
 だ。小沢氏の著書『日本改造計画』(1993年/講談社)を
 読めば、彼が日本の政治の弊害をいかによく理解しているかが
 わかる。  ──カレル・ヴァン・ウォルフレン著/井上実訳
         『誰が小沢一郎を殺すのか?』/角川書店刊
―――――――――――――――――――――――――――――
 ウォルフレン氏の推薦する『日本改造計画』には、小沢氏が日
本の政治体制はかくあるべしということが具体的に記述されてい
ます。そして、その多くのことを小沢氏自身が既に実現してきて
いるのです。小選挙区制、政党助成金制度、国会改革などなど、
日本の政治の世界で既に実現していることが『日本改造計画』に
は既に書かれていたのです。1993年の出版であり、小沢一郎
という政治家がいかに先見の明があるかがよくわかります。
 そして、民由合併によって民主党入りして6年、諸悪の根源で
ある自民党を倒して政権交代を成し遂げて最後のステージに入っ
ているのです。これからが小沢氏の本番であったのです。
 小沢氏は最後の総仕上げに取りかかっており、これぞというと
きに、危機を感じた旧態依然たる体制を維持しようともくろむ勢
力によってフェアでない足払いをかけられ、その動きを止められ
てしまったのです。     ── [日本の政治の現況/32]


≪画像および関連情報≫
 ●『日本改造計画』について
  ―――――――――――――――――――――――――――
  小沢が自民党の幹部時代、講談社から1993年5月20日
  に発表され、実際に書店に並んだのは6月下旬だった。内容
  は小沢の政策やビジョンをつづったもので、小沢が自民党を
  離党して、新生党を立ち上げ、細川連立内閣が成立するとい
  う政治の激動期において、中心人物の小沢の考えを知るため
  の書として、発行部数72万5000部の年間3位のベスト
  セラーになった。かつて、小沢の師の田中角栄が1972年
  に著してベストセラーになった『日本列島改造論』の平成版
  ともいわれる。           ──ウィキペディア
  ―――――――――――――――――――――――――――

小沢一郎/『日本改造計画』.jpg
小沢一郎/『日本改造計画』
posted by 平野 浩 at 04:08| Comment(1) | TrackBack(0) | 日本の政治の現況 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
勿論!この本も持っています!
Posted by とみちゃん at 2011年07月27日 18:58
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