2006年07月27日

メッセージを伝えたかった人とは誰か(EJ1886号)

 映画の冒頭に人が一人殺される――誰が誰に何のために殺され
たのか。現場に残されたわずかな手がかりをたよりに、刑事たち
は犯人を捜しはじめる――サスペンス・ドラマのよくあるプロッ
トです。
 映画『ダ・ヴィンチ・コード』の場合も、映画の冒頭に人が一
人殺される――サスペンス・ドラマタッチです。しかし、この映
画の場合、殺された者も殺した者も観客にはわかっています。
 殺されたのはジャック・ソニエール――パリのルーヴル美術館
の館長であり、殺したのはシラスという色素欠乏症の若者――オ
プス・デイという宗教組織の修行僧です。
 わからないのは殺人の目的です。何のためにシラスはソニエー
ルを殺したのでしょうか。映画におけるシラスとソニエールの会
話を再現してみます。
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
 シラス  :おまえや同胞たちは、おのれに属さないものを隠
       しもっている。
 ソニエール:なんの話かわからない。
 ――ソニエールに銃口を向ける――
 シラス  :命を懸けるほどの秘密なのか。
 ――ソニエールは頭を下げ、すすり泣きをはじめる――
 ソニエール:頼む。
 シラス  :それが答えか。
 ――シラスは親指で撃鉄を起こす
 ソニエール:待ってくれ。
 ――ソニエールは目を上げる。恐怖で涙ぐんでいる――
 ソニエール:神よ。許したまえ。
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
 ここで、ソニエールは何かをシラスに告げるのです。シラスは
それを聞き、満足したようにうなずくと、銃口をソニエールに向
けて引き金を引きます。ソニエールは何を告げたのでしょうか。
 ソニエールがシラスに告げたことばは、おそらく次のことばで
あると思われます。なぜ、このような表現をするのかというと、
それが原作にも映画にも登場しないからです。
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
    サン・シュルピス教会のローズ・ラインにある
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
 実はソニエールは、表向きの仕事はルーブル美術館の館長です
が、シオン修道会という秘密結社の総長なのです。シオン修道会
という秘密結社についてはいずれ詳しく説明しますが、総長のほ
かに3人の参事がおり、同じ重要な秘密を共有していたのです。
 そして4人は、もし緊急の事態に陥って、秘密を明かせと迫ら
れたときは、上記のことばを述べる約束になっていたのです。も
ちろんそれは真実ではなく、たとえ殺されても秘密は守るという
固い結束をしていたのです。
 シラスはソニエールのところに来る前に3人の参事を殺してき
ているのです。そして、3人とも死ぬ前に上記のことばを話した
ので、ソニエールのことばはウソでないと考えて、満足そうな表
情を浮かべたというわけです。
 しかし、胃に弾丸を撃ち込まれたソニエールは意識ははっきり
としていたのです。ダン・ブラウンの記述によると、胃を撃たれ
ると、死にいたるまで15分かかるとのことですが、同時に他の
重要器官の損傷にもよりますが、もっと長く生きていても不思議
はないそうです。腹腔を撃たれた人間の平均死亡率は12%程度
であるということです。もちろん耐えがたい苦痛はあるでしょう
が、身体を動かすことは十分可能なのです。
 「何とか秘密を伝えなければ・・」――こう考えたソニエール
は死力を尽くして、ある人物に宛てて、自分の身体に五芒星を描
き、床に暗号を書き残したのです。五芒星や暗号については、添
付ファイルを参照してください。
 自分の身体に書いた五芒星と自らの身体で示したウィトルウィ
ウス的人体図――これが聖なる女性をあらわしていることは昨日
のEJで述べていますが、それはソニエールの孫娘ソフィー・ヌ
ヴーに宛てたメッセージだったのです。
 ソニエールは、ソフィーの小さいときからパズルや謎解きや暗
号に関心を持たせ、誕生日やクリスマスのプレゼントなども何ら
かの暗号を解かないと与えなかったのです。
 これは、単にソニエールの趣味の押しつけではなく、明確な目
的を持ってソフィーにそういう謎解きの才能を高めようとしたの
です。その結果、ソフィーはその才能を開花させ、司法警察の暗
号解読官を職業にするまでになったのです。
 ソニエールはプロの暗号解読官であるソフィーに宛ててメッセ
ージを送ったのです。ソフィーならきっと解いてくれるに違いな
いと信じて、あの奇怪な格好で密かにあることを伝えたのです。
 こういう想定に立ってソニエールのメッセージの最終行につい
て考えてみましょう。
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
     P.S.ロバート・ラングドンを探せ
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
 相手がソフィーであれば「ロバート・ラングドンを探して力に
なってもらえ」という意味であることはすぐわかります。それで
は「P.S.」とは何でしょうか。
 最初は「追伸」ととらえていたのですが、そうではなく「プリ
ンセス・ソフィー/P.S.」であることはソフィーにはわかっ
ていたのです。なぜなら、祖父ソニエールは彼女をよくそう呼ん
でいたからです。「お前は私にとってプリンセスだよ」と。
 しかし、「P.S.」には、もうひとつ重要な意味があったの
です。「フルール・ド・リス/百合」との関係において、不思議
な文様の鍵をソフィーは記憶していたのです。「ラングドンの力
を借りなさい」――秘密の解明にはラングドンの力が必要である
とソニエールは考えたのです。・・・・・・ [D−コード04]


≪画像および関連情報≫
 ・ソフィー・ヌヴー
  ―――――――――――――――――――――――――――
  「ソフィー」はギリシャ語の「ソフィア」に由来する名前で
  ある。ソフィアは英知を意味し、ギリシャ神話では擬人化さ
  れ、女神として描かれる。「ヌヴー」はフランス語の「新し
  い」という意味とともに「新たなイヴ」を連想させ、ソフィ
  ーには聖書や伝説におけるイヴの役割に通じるものがある。
  英知の女神、第二のイヴ、復活した聖なる女性、これらはす
  べてソフィー・ヌヴーの称号としてふさわしい。
          ――ダン・バースタイン編/沖田樹梨亜訳
       『ダ・ヴィンチ・コードの「真実」』より。竹書房刊
  ―――――――――――――――――――――――――――

1886号.jpg
posted by 平野 浩 at 06:31| Comment(0) | TrackBack(0) | ダ・ヴィンチ・コード | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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