2006年07月25日

原作を先に読むか、映画を先に観るか(EJ1884号)

 2003年の夏、次の興味深い会話があったのです。HとJは
誰かわかるでしょうか。
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 H:今、君がとても好きそうな本を読んでいるんだ。休暇の楽
   しみにちょっと手に取ってみるとよい。――電話
     ・・・・・・・・・・・・・・・・・・
 H:例の本はもう手に入れたかい?
 J:ええ、買いました。
 H:そいつはいい。で、どうだった?
 J:いいえ・・・その、買ったんです。――映画化権を
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 HとJとは、それぞれソニー・コーポレーションハワード・ス
トリンガー会長と、映画『ダ・ヴィンチ・コード』の製作者、ソ
ニー・ピクチャーのジョン・コーリーCEOです。
 製作者のジョン・コーリーによると、ストリンガー会長から電
話のあったのが土曜日だったのですが、すぐその足で本を買いに
行き、日曜日の晩にはすべて読み終えて、この小説の映画化権を
買うことを決めたというのです。何とも素早い決断です。
 この小説の場合、映画を観てから原作を読むか、原作を読んで
から映画を観るか――あなたはどうされましたか。それともまだ
どちらもやっていませんか。
 私の場合、何か調べものをする場合は本を早く読めるのですが
小説を読むのは遅いのです。したがって、映画を先に観て、それ
から原作を読み、そのうえで、DVDを購入してもう一度観ると
いうようにしています。観る価値があればの話ですが・・・。
 しかし、映画『ダ・ヴィンチ・コード』のロン・ハワード監督
は、次のようにいっているのです。
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 『ダ・ヴィンチ・コード』に強く魅せられた人たちにこうお薦
 めしたい。まずダン・ブラウンの小説を読み、次にアキヴァの
 シナリオを読んで、それから私の映画を観てもらいたい。その
 後はもう一度、この3つを繰り返して・・・そしてさらに友達
 にも薦めて欲しい。魅力的なひとつの物語の3つのヴァージョ
 ンが、どれも満足のいく、わずかに違う、意味のあるものに仕
 上がっていることを望んでやまない。
                  ――ロン・ハワード監督
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
 映画『ダ・ヴィンチ・コード』の製作スタッフは、次の通りと
なっています。
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  脚 色:アキヴァ・ゴールズマン
  原 作:ダン・ブラウン
  制 作:ジョン・コーリー/ブライアン・グレイザー
  美 術:アラン・キャメロン
  監 督:ロン・ハワード
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 原作の冒頭のシーンは、ルーヴル美術館から始まります。暗殺
者シラスに追われて、ジャック・ソニエール館長が、グランド・
ギャラリーのアーチ型通路をふらつく足どりで死に物狂いで走っ
て行くシーンから始まるのです。そして、近くにある絵を力まか
せに床に引き降ろすのです。
 ルーヴル美術館の場合、陳列されている絵がはがされて床に落
ちると、警報が鳴り、盗賊が逃げられないように鉄格子が下りて
退路を塞ぐ仕掛けになっているのです。
 実は映画の場合も原作と同様に、ソニエール館長が走って行く
シーンからはじまるのですが、台本の段階ではそうではなかった
のです。台本では、映画の冒頭は、フランスの田舎にある緑に覆
われた古い石造りの農家――ソニエール館長の家からはじまるの
です。平和でのどかな風景です。
 しかし、平和に見えるのは見かけだけであり、この家には不穏
な空気が流れていたのです。中で何やら争う声が聞こえます。カ
メラが家に向かって接近します。そうすると、重い木の扉が開い
て、顔を涙で濡らしたかわいい少女が飛び出してきます。少女は
何歩か進むと、怒りと不信に満ちた目で家の方を振り返ります。
カメラが少女の目にズームアップ――そして少女の目にカメラは
固定され、オープニング・タイトルが出ます。
 それがルーヴル美術館の巨匠たちの描いた作品の目に切り替わ
り、場所は一転してルーヴル美術館の館内の光景になるのです。
そしてカメラは巨匠たちの作品の多くの目の位置に替わると、ひ
とりの男がグランド・ギャラリーに飛び込んできます。男は館長
のジャック・ソニエールです。それを上から見ていることになり
ます。見事な画面転換である――そう思えるのですが、どうやら
この案は採用にならなかったようです。
 この少女はソフィー・ヌヴー――台本担当のアキヴァ・ゴール
ズマンとしては、ソフィーとソニエールにいさかいがあったこと
を映画の冒頭で暗示したかったものと思われます。殺された館長
ジャック・ソニエールは、ソフィー・ヌヴーの祖父であり、ある
出来事で祖父といさかいを起こしたソフィーは、祖父の家を出て
暮らしていたのです。しかし、台本通りのオープニングにすると
サスペンス・ドラマ特有の迫力感が出せないということで変更に
なったものと考えられます。
 このソフィー・ヌヴー役の女優は、オドレイ・トトゥ――19
78年生まれのフランスの女優で、2001年にジャン・ピエー
ル・ジュネ監督作品の『アメリ』で好演し、世界中の映画ファン
にその名を知られる存在になった有望な若手女優です。
 暗殺者のシラスがソニエールを殺したあと、画面はアメリカン
大学のパリ校に切り替わるのです。そして、もう1人の主役が登
場します。ロバート・ラングドン教授です。ソニエールが殺され
た夜、ラングドンはパリに来ていたのです。そして、ソニエール
と会う約束になっていたのです。・・・・・ [D−コード02]


≪画像および関連情報≫
 ・ロン・ハワード監督のコメント
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  僕の仕事上のパートナーであるブライアン・グレイザーから
  「これ映画にすると良いと思うよ」と勧められたんだ。まだ
  脚本も書かれていなかった段階で、僕はあくまで一読者とし
  て読んだよ。読み終わった瞬間に僕は「この映画版を、ぜひ
  観てみたいな」と素直に感じた。と同時に、誰が監督をする
  ことになるのであれ、この作品の映画化には多大なるチャレ
  ンジが待ち受けているだろうとも思ったよ。
  ―――――――――――――――――――――――――――

1884号.jpg
posted by 平野 浩 at 04:51| Comment(0) | TrackBack(0) | ダ・ヴィンチ・コード | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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