2011年07月05日

●「陸山会公判重要局面へ」(EJ第3091号)

 陸山会公判が重要な局面を迎えています。2009年の衆院選
の直前に東京地検特捜部は、当時民主党代表の小沢一郎氏の第一
秘書である大久保隆規氏をいきなり逮捕・起訴したのです。特捜
部は、その取り調べの模様を記者クラブを通じてリークし、テレ
ビや新聞はそれを使って派手に書き立てたのです。
 政権交代が起きる可能性のある選挙の直前であり、どう考えて
も、小沢氏の失脚を狙った選挙妨害ともいえる逮捕であったとい
えます。しかし、小沢氏は代表を鳩山氏に譲り、選挙担当として
選挙戦を勝ち抜いて、民主党の政権交代は実現したのです。
 ところが、強引に起訴した大久保隆規被告の裁判では検察側が
きわめて劣勢であり、検察側の立てた証人の供述によってその立
証の根拠が崩れ、2010年2月に予定されていた判決では無罪
を勝ち取る可能性が高くなったのです。
 そうすると、東京地検特捜部は、今度は小沢氏の資金管理団体
「陸山会」の土地購入問題を取り上げ、大久保隆規氏を含め、衆
議院議員で元秘書の石川知裕氏、同じく元秘書の池田光智氏の3
人を政治資金規正法違反の容疑で逮捕したのです。
 政治資金収支報告書に虚偽記載があったという容疑ですが、そ
れも土地購入の登記日にずれがあったというだけのものであり、
通常であれば形式犯として訂正で済む事案なのです。まして通常
国会開催の直前に衆議院議員の逮捕をするなどあまりにも強引な
やり方なのですが、マスコミは「小沢一郎=悪人」の証明ができ
たとばかり、鬼の首でも取ったように書き立てたのです。
 そのさい、無罪判決が間違いないところにきていた大久保隆規
の容疑の訴因変更を行い、3人をまとめて起訴したのです。つま
り、無罪必至の事件は訴因から外しているのです。これはとんで
もないことです。そして当時幹事長の小沢氏に関しては2回の事
情聴取を行い、テレビや新聞・雑誌はそれを派手に取り上げたの
です。しかし、小沢氏は結局不起訴になったのです。いや、起訴
したくてもできなかったというのが正しいといえます。そのとき
証拠改竄の前田事件は起こっていないのです。前田元検事の証拠
改竄が報道されたのは2010年9月のことです。
 結局、小沢氏は鳩山氏と一緒に辞任し、菅政権が誕生するので
すが、それまで急落していた民主党の支持率は急回復しているの
です。しかし、菅陣営が支離滅裂な選挙を行ったことにより、参
院選では大敗したのです。そして、2010年9月の代表選に敗
れた小沢氏に降りかかったのは、検察審査会による2回にわたる
「起訴相当」による強制起訴です。代表選と検察審査会の決定に
は大きな疑惑があり、これについては改めて取り上げです。しか
し、いずれにしても、これによって小沢氏は表立った政治活動が
できなくなってしまったのです。
 さて、その陸山会公判は最初から異常だったのです。検察側は
起訴事実とは関係のない証人を次々と立てて証言させ、4億円の
出所がゼネコンからの献金であるかのように印象づけたのです。
新聞は例によって検察側の主張のみ派手に書き立てたのです。目
的はただひとつ小沢氏を貶めることにあるようです。
 しかし、陸山会公判は既に最終段階にきており、7月20日に
論告求刑、8月22日に最終弁論が行われることになっているの
です。これに伴い、地裁は6月30日付で検察が証拠申請をして
いた3人の秘書の捜査段階の供述調書38通のうち12通を「任
意性がない」として全部却下し、他にも多数の調書を一部棄却し
たのです。検察の面子丸つぶれです。
 これは検察にとって想定外のことであったようです。とくに小
沢氏に虚偽記載することを報告して了承を得たとする調書はすべ
て任意性がないとして却下されているからです。
 ここで触れておくべきことがあります。そもそも事実と異なる
調書になぜ容疑者がサインするかということです。そこに検事の
駆け引きがあるのです。もし、事実と少しでも異なる調書にサイ
ンしないで突っ張ると、検事は「それなら保釈させないぞ」と脅
して実際にそうするのです。大久保氏はそれを貫き、ほとんど調
書にサインしなかったので、長期にわたって保釈は認められてい
ないのです。これは違法なのですが、実際には行われています。
 そこで昨年1月の逮捕時では、3人は多少のウソが入っていて
も認めてサインしています。しかし、証拠改竄の前田事件が起き
るまでは、その調書が有罪の決め手になっているのです。開示さ
れない取り調べでは検事による脅しや取引が平然と行われている
のです。このあたりのことを今回の裁判長の登石郁朗氏はていね
いに調べ上げ、これらの調書を却下させているのです。前田事件
の影響がこのようなところに及んでいるのです。登石裁判長は、
検察側提出の供述調書を大量に却下した理由について次のように
検察側を批判しているのです。これは極めて異例のことです。
―――――――――――――――――――――――――――――
 威迫と利益誘導を織り交ぜ、硬軟両面の言辞で調書に署名させ
 ている。そのため石川は強い心理的圧迫を受け、小沢氏に類が
 及ばないよう妥協していた。      ──登石郁朗裁判長
―――――――――――――――――――――――――――――
 検察側は「調書は採用されるはず」と楽観視していたフシがあ
り、大量の調書却下に衝撃を受けています。とくに小沢氏を強制
起訴した指定弁護士は、今回却下された調書を基に起訴しており
裁判長は変わっても調書は採用されない可能性があります。
 そうなると、小沢氏の無罪の可能性は高くなり、これ以上検察
審査会の起訴裁判で与党の有力政治家の行動を制限することは国
益に反することです。指定弁護士は自らの面子にとらわれること
なく、早期に収束を図るべきであると思います。なお、今回の証
拠却下について、郷原信郎弁護士と徳山勝氏のコメントが参考に
なるので、「関連情報」をご一読いただきたいと思います。もし
大久保秘書の逮捕がなければ、現在のような醜い民主党の混乱は
なかったといっても過言ではないと思います。「姿なき権力者」
の姿が少し見えてきています。── [日本の政治の現況/17]


≪画像および関連情報≫
 ●東京地裁の証拠却下決定についての意見/郷原信郎氏
  ―――――――――――――――――――――――――――
  民主党の小沢元代表の政治資金を巡る事件で、起訴された元
  秘書らの主な供述調書のほとんどが証拠請求を却下された。
  NHKニュース「裁判所特捜部の取り調べ批判」によると、
  裁判所は、決定の中で「心理的圧迫と利益誘導を織り交ぜな
  がら、巧妙に供述を誘導した」と指摘し、東京地検特捜部の
  取り調べを厳しく批判した。今回の決定は、特捜検察の従来
  の捜査・取調べの手法に対して、村木事件における大阪地裁
  の証拠却下決定と同様に、裁判所が正面から否定的な判断を
  示したものであり、私が「検察の正義」(ちくま新書)「検
  察危ない」(ベスト新書)等で批判してきた一連の小沢事件
  捜査の暴走に対する司法判断として極めて重要な意味を持つ
  ものである。http://www.twitlonger.com/show/bfqpmu
 ●ニュースクリップ/徳山勝氏
  震災報道の所為か意識的にかは知らないが、マスコミは陸山
  会事件の公判で被告側に有利な報道は全くして来なかった。
  だが、裁判所が公表したからには報道せざるを得なかったの
  だろう。1日の新聞・テレビではその内容に濃淡の差はある
  が、陸山会事件で検察が証拠として申請した検察調書38通
  の内12通を、東京地裁(登石裁判官)が証拠として採用し
  ないことを決定したことを報じた。
  http://www.olive-x.com/news_30/newsdisp.php?m=0&i=12
  ―――――――――――――――――――――――――――

郷原信郎氏.jpg
郷原 信郎氏
posted by 平野 浩 at 04:12| Comment(0) | TrackBack(0) | 日本の政治の現況 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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