2001年06月29日

電気と熱を両方利用できるエネルギー(EJ648号)

 28日の読売新聞夕刊の第1面に、次のような記事が出ていま
したが、気がつかれたでしょうか。今朝の読売新聞朝刊にも「京
都議定書」の問題が出ています。
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   「温室効果」を共同研究/日米首脳会議で一致へ
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 日本としては、米国の京都議定書からの離脱という事態に対し
て、引き続き米国を説得するために、米国から要請のあった共同
研究「グローバル・アジェンダ」を行うことに基本合意したとい
う内容の記事です。
 重要なのは、米国側から共同研究を持ちかけている点です。昨
日のEJでも述べたように、米国は地球温暖化論議の根拠に疑問
を抱いており、日本に研究を持ちかけてそれを明らかにしようし
ているのです。京都議定書に問題があることは、「ニューズウィ
ーク」7月4日号の、ロバート・サミュエルソンのレポート「京
都議定書は偽善だらけだ」を読んでも明らかです。
 そもそもCO2が悪玉にされたのは、1992年にブラジルの
リオデジャネイロで開催された地球サミットにおいて、地球温暖
化防止条約が締結されてからなのです。
 同会議の議長を務めたブラジル環境長官ゴルデンベルグなる人
物は同国トップの原子物理学者であり、この会議以後において世
界中の原子力産業がCO2による地球の温暖化説を引き合いに出
し、原子力推進論を展開するようになったのです。そこには、C
O2を悪玉にして原子力を守るという陰謀があるようです。
 しかし、原子力によってエネルギーを得るのは、チェルノブイ
リ事故や東海村臨界事故などによっても明らかであるように、き
わめて危険であり、より一層の自然破壊につながる恐れがありま
す。そういう事故が繰り返され、多くの人が原子力の危険性が分
かってくると、今まで以上の原発反対の渦が巻き起こることを恐
れる向きがあることは確かなのです。CO2悪玉説はそういうと
ころから出てきたのではないかと考えられます。
 夏になにると省エネが叫ばれますが、かつて「真夏の高校野球
のときに、エアコンをがんがんきかせて、ビールを飲みながらテ
レビを見る。そのときに電力の消費がピークに達する」というこ
とを繰り返し聞かされたことがあります。そういうとき原発の電
気がなければ電力不足が起こり、停電してしまうという原発の重
要性を訴えるストーリーです。
 この話、ちょっと聞くと「そうかな」と思ってしまうところが
あるのですが、実は正しくないのです。2000年8月25日に
1995年8月25日に記録したピーク消費電力1億7113万
キロワットを上回り、過去最高が記録されています。
 このときもエアコンの需要増加が指摘されたのですが、少なく
とも高校野球の決勝戦とは関係ないのです。高校野球の2000
年の夏は智辯和歌山高校が優勝したのですが、その日は8月21
日であり、1995年の帝京高校が優勝したときも、消費電力が
ピークに達した日とずれているのです。
 それでは、冷蔵庫、電灯、テレビ、PCまでを含めたすべての
家庭のエネルギー消費の中で、冷房エネルギー消費量が占める比
率はどのくらいでしょうか。
 広瀬隆氏は多くの人にこの質問をしていますが、20%〜30
%という答えが一番多かったといいます。しかし、住環境研究所
の統計によると、家庭用の冷房はわずか2%なのです。同統計に
よる家庭のエネルギーは次のように使われているのです。
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     照明・動力など ・・・・・ 35%
     給湯 ・・・・・・・・・・ 35%
     暖房 ・・・・・・・・・・ 28%
     冷房 ・・・・・・・・・・  2%
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 考えてみれば、夏は7〜9月の3ヶ月で、1年の4分の1に過
ぎないのです。さらに夏の猛暑の日数は、年間合計で多い年でも
20日(5%)程度でしかないのです。こういう事実を考慮する
と、家庭の冷房電力が年間の2%というのは別に不思議なことで
はないのです。
 ですから、「真夏の高校野球のときにエアコンがんがん・・」
というアッピールは、電力会社による国民に対するおどしという
ことになります。それでは、犯人はだれなのでしょうか。
 それは、工場、オフィス、学校、病院、公共施設など電気を大
量に消費する仕事場(ビル)なのです。これらの仕事場は商店を
含めて、日本の電力の70%を消費するのです。したがって、こ
れらの仕事場の省エネルギーは非常に重要です。
 ところが、この分野の電力消費の責任者は、大量に電力を消費
してくれると儲かる電力会社、「環境にやさしいオール電化」を
標榜し、省エネルギーを考えない設計施工をしているビルの建築
業者と設計者、それに自治体の都市計画担当者なのです。
 米国などは新築ビルにおいてはマイクロガスタービンを使い、
その排熱を吸収式冷却法によってビル冷房に利用するという方法
をとっていますが、これはビルの省エネルギーに大きく貢献する
のです。日本では、今まで電気の消費量だけを問題にしてきまし
たが、マイクロガスタービンや燃料電池のように、電気と熱を両
方利用できるエネルギー源が登場してきている現在では、すべて
のエネルギー形態をいかに効率的にできるかについて知恵を絞る
必要があるのです。
 7回にわたって、燃料電池やマイクロガスタービンを中心にエ
ネルギー問題について考えてきましたが、このテーマはひとまず
本日で終わりです。来週からは新しいテーマを取り上げます。
 参考文献は何冊かありますが、何といっても広瀬隆氏の390
ページに及ぶ大作、『燃料電池が世界を変える/エネルギー革命
最前線』(NHK出版/添付ファイル)が参考になりました。大
変なエネルギーで書かれた本です。

648号.jpg


posted by 平野 浩 at 00:00| Comment(0) | TrackBack(0) | その他 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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