2001年06月27日

マイクロガスタービンと原子力発電(EJ646号)

 今朝は、燃料電池に関連して「ガスタービン」についてお話し
します。ガスの話は、EJの読者に専門家がおられるので、あま
り気が進まないのですが、間違っていることがあればご指摘いた
だきたいと思います。
 1991年1月に始まった湾岸戦争では、「砂漠の嵐作戦」と
名付けられたわりには地上戦闘はほとんどなく、もっぱらミサイ
ルによるピンポイント攻撃が中心でした。しかし、どんなにエレ
クトロニクスが発達しても戦争というものは、やはり地上戦、海
上戦なのです。人間が人間に直接戦闘行為をとるのが戦争なので
す。それでは、米、英、仏を主力部隊とする多国籍軍は、なぜ、
地上戦闘をあえて避けようとしたのでしょうか。
 それは、多国籍軍が「あること」を恐れたからです。その「あ
ること」とは、砂漠での戦闘です。その砂漠での戦闘において多
国籍軍は、戦車の燃料補給に不安を抱えていたからです。
 戦車の燃料補給にはガスタービンが使われますが、当時のガス
タービンでは、戦車のあとから燃料補給タンク車を従える必要が
あったのです。そうでなければ、砂漠の中を長距離走行すること
はできなかったのです。
 しかし、この場合、タンク車が攻撃されると、たちまち燃料が
大爆発を起こし、戦車が立ち往生してしまうことになります。こ
れでは、戦車部隊が全滅してしまうこともあり得るのです。この
事態を多国籍軍側は恐れたのです。
 幸いにしてイラク軍が弱かったため、湾岸戦争は多国籍軍の一
方的な勝利に終わりましたが、米国国防総省は本気でこの燃料補
給問題の解決に乗り出したのです。何とかガスタービンを小型化
して燃料を食わない高性能な動力を開発し、それを戦車の中に収
められないものか――日夜研究が続けられたのです。
 もっとも戦闘機などのほとんどの軍用機は、ガスタービンと同
じ原理の高性能ガス噴射エンジンを使っていたので、これを応用
すればよかったのです。湾岸戦争の翌年の1992年から次々と
小型ガスタービンが開発され、発表されます。その中心にいた企
業がアライドシグナル社だったのです。
 ちょうど1991年末にソ連が崩壊して冷戦が消滅し、軍事用
技術を民事用に転用しようという試みがはじまっていたのです。
アライドシグナル社は、1996年には、同社開発のマイクロガ
スタービンがフォードとルノーのハイブリット自動車用エンジン
としてテストされ、それが成功して75キロワットの超小型発電
機「ターボジェネレータ・パラロン75」という画期的な商品の
生み出しに成功したのです。
 ちょうどそのときダイムラー・ベンツが燃料電池車の量産を宣
言した時期と重なるのですが、それはガソリンエンジンの存続を
賭けた死ぬか生きるかのサバイバル競争そのものといえます。
 しかし、この「ターボジェネレータ・パラロン75」は大きな
波紋を呼び、ヨーロッパ原子力産業の中心的存在であったフラン
ス電力が、アライドシグナル社の発電部門の子会社であるアライ
ドシグナル・パワー・システムズ社とヨーロッパと北アフリカで
マイクロガスタービンの市場を開拓する契約に調印したのです。
 それはまさにフランスの原発と再処理からの撤退を意味する出
来事といえます。今まで世界の原発を持つ国は、フランスをモデ
ルとし、目標にしてきたからです。日本などもそうです。確かに
フランスは発電量の80%を原発でまかない、その電力の半分以
上をヨーロッパ各国に売って自国の産業を維持してきたのです。
 しかし、アライドシグナル社の発電用マイクロガスタービンを
テストしたフランス電力は、その驚異的な性能と本体価格5万ド
ルという価格に仰天し、これが相手では、性能面、コスト面で原
発ではとうてい太刀打ちできないことを知って、契約に踏み切っ
たというわけです。
そうしないと、フランス電力は現在手にしている電力利権を失
いかねないからです。これを守るには、他社よりも早くアライド
シグナル社の新エネルギーを、ヨーロッパに販売するしか手がな
かったといえます。
 このアライドシグナル社は、1999年はじめには日本にも総
代理店を置いています。そして、1999年5月には、東京ガス
とマイクロガスタービンの実用テストを行う契約を結んでいるの
です。東京ガスはガス会社ですから、アライドシグナル社の発電
機の性能をもっと高める数多くの技術やノウハウを持っているは
ずです。
 しかし、東京電力もフランス電力が契約したわずか3ヶ月後に
アライドシグナル社とキャプストーン社の両方からマイクロガス
タービンを購入して実験を開始しているのです。大口電力の自由
化がスタートする2000年3月直前のことです。キャプストー
ン社というのは、アライドシグナル社からスピンアウトした企業
であり、今やアライドシグナル社のライバル企業なのです。
 そして、同年9月、日本の原子力産業史上最悪の臨界事故が東
海村で発生します。これは、原発とその再処理からの撤退を一層
加速させる要因になったといえます。「原発は安全」、「原発は
安い」といってきたことがすべて覆されてしまうあまりにも悲惨
な大事故でした。
 2000年6月には、アライドシグナル社は、150億ドルで
ハネウェル社を買収し、買収した企業名をとって「ハネウェル・
インターナショナル」、マイクロガスタービン開発部門の子会社
は「ハネウェル・パワー・システムズ」と名前を変更し再出発を
しているのです。ハネウェルの名前の方が世界に知られているの
で、そういう処置をとったのです。
 燃料電池とマイクロガスタービンという発電装置が従来型の発
電システムを揺さぶっています。実は、この問題が、地球温暖化
論議と密接に関係するのです。なぜ、米国はこの問題に対して冷
淡なのか。その原因について少し掘り下げて考えてみる必要があ
りそうです。バラード社はカナダですが、アイダテック社にして
も、アヴィスタ社にしても、ハネウェル・インターナショナルに
しても、すべて米国の企業なのですから・・・。
posted by 平野 浩 at 00:00| Comment(0) | TrackBack(0) | その他 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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