2001年06月26日

燃料電池は生物の営みそのものである(EJ645号)

 今朝も燃料電池の話です。こういう考え方があります、人間や
動物は、水に含まれる水素と酸素を飲み込み、有機物の栄養分を
食べ、空気中の酸素を呼吸し、炭酸ガスと水分を吐き出しながら
体内にエネルギーを生み出します。
 一方、燃料電池は、水素と酸素から電気を生み出す装置です。
この装置は、燃料と呼ばれる物質と空気を吸い込んで改質器(あ
とで説明)で炭酸ガスを、燃料電池部分で水と熱を吐き出すので
す。ここで燃料と呼ばれるのは、有機物か水素のことです。燃料
電池を人の肉体に見立てると、燃料は人の体内に吸収される栄養
素の役割を果たしていると考えられます。
 燃料電池の開発では、高分子膜(PEM)のコストと寿命が大
きなかべになっています。そのPEMという膜は、食塩の電気分
解用として使われてきた製品です。食塩は人体の血液で最も重要
な部分なのです。
 人間の血管は非常に薄い膜でできています。心臓と肺の作用に
よって、血液と酸素を得る血管は、すぐれた性能のごく薄い膜に
よってできています。この膜の中を血液が循環しながら、栄養分
を全身に運ぶところに燃料電池で使われる高分子膜と共通点があ
るのです。人間のからだはうまく使えば、100年は持つのです
から、適時ケアを行えば、燃料電池の高分子膜もそれと同じ寿命
を持たせることは不可能ではないといえます。
 ところで、人間の場合、空気を呼吸する肺は、酸素を取り込ん
で、二酸化炭素を排出しますね。これによって、体内で酸化分解
が行われ、体にエネルギーを供給します。燃料電池でこの作業を
行うのが、前出の改質器と呼ばれる装置です。燃料から水素を取
り出したあと、二酸化炭素を排出する機能を持っています。
 どうでしょう。燃料電池はあまりにも人体の働きと酷似してい
ると思いませんか。燃料電池のことを「フュエル・セル」といい
ますが、「セル」ということばは人間の細胞を意味するのです。
バラード社は、こういう方向からアプローチした結果、優れた高
分子膜を開発することができたのです。
 バラード社は、カナダ海軍の「音のしない潜水艦」のプロジェ
クトに参加して、燃料電池を使う潜水艦の研究を行っています。
そういう潜水艦が完成しているのかどうかは軍事機密のためわか
りませんが、潜水艦といえば、2000年8月に、ロシアの原子
力潜水艦クルスクの事故を思い出します。クルスクは、ムルマン
スク沖のバレンツ海で沈没し、救助できないまま全員死亡すると
いう痛ましい結果に終っています。
 潜水艦に原子力を使うのは、それから動力としての電気エネル
ギーを得るためですが、原子力の場合、燃料自体が少量のウラン
で済むという利点があるのです。
 しかし、動力を燃料電池でやった場合はどうでしょうか。電気
はもちろんのこと、真水も温水も同時に得られて、しかも騒音が
一切ない――潜水艦には理想的なのです。
 問題は燃料補給をどうするかです。それは何らの方法により海
中で水素が得られればよいのです。魚が海中に長時間潜っていら
れるのは、海中の微生物や小魚を食べているからです。このよう
なバイオマス(生物体)を海中で効率的に捕獲し、そこから水素
を製造できないものでしょうか。それなら、潜水艦はいつまでも
潜っていることができるはずです。
 「バイオマス」とは、エネルギー源または化学・工業原料とし
て利用される生物体のことであり、そのような生物体から得られ
るエネルギーを「バイオマス・エネルギー」というのです。バラ
ード社は、廃水処理プラントの分解ガスを使って作動する燃料電
池を開発した実績を持っており、バイオマス関連技術については
相当深いノウハウを持っているといわれています。
 われわれはエネルギー問題については、詳しい情報を得ている
とはいえない状況にあります。原発が必要である理由は電力会社
から何度も聞かされていますが、実は原発は旧式の火力発電と同
様のレベルであり、かなり効率の悪い発電システムなのです。
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             電力      捨てられる熱
 原子力・旧式火力   33%         67%
 新型火力       40%         60%
 コンバインサイクル  50%         50%
 マイクロガスタービン 80%         20%
 燃料電池       80%         20%
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 これを見ると、使う量の2倍のエネルギーが排熱として捨てら
れているのです。排熱を利用しようにも、発電所と消費者が遠く
離れてしまっているので、発電所で発生する熱は無駄になってし
まうのです。
 しかし、燃料電池とガスタービン(改めてEJで取り上げる予
定)は、電気を使う場所で発電するので、排熱の大部分を効果的
に使えるのです。具体的にいうと、電力で照明、動力、エレクト
ロニクス機器を動かし、排熱で冷暖房と給湯を行うことができる
のです。少なくとも家庭では、冷暖房用のエアコンと、バスルー
ムとキッチンの給湯設備がいらなくなってしまうのです。こうい
うエネルギーの使い方を「コジェネ」といいます。
 原子力などを使う従来の方法では、必要なエネルギー100を
確保するには303の燃料が必要になりますが、コジェネシステ
ムによって、発生したエネルギーの80%が使えれば、必要とす
る燃料は125で済む計算になります。
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   従来の方法    100=303×0.33
   コジェネシステム 100=125×0.80
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 125÷303=41%となりますが、燃料電池を使うことに
よって、従来の40%の燃料で同じ量のエネルギーを得ることが
できることになります。しかも、燃料電池で得られるエネルギー
は、クリーンな無公害エネルギーであり、危険はないのです。

posted by 平野 浩 at 00:00| Comment(0) | TrackBack(0) | その他 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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