2001年06月25日

燃料電池を支える先行3社とは(EJ644号)

 PCの発達もそうですが、世界的な革命は米国のワシントン州
の一帯を中心として起こっているようです。ワシントン州といえ
ば、あのマイクロソフト社があります。マイクロソフト社と燃料
電池との関係についてはあとで述べるとして、なぜワシントン州
が中心であるかについてお話しします。
 燃料電池の雄であるバラード・パワー・システムズ社はカナダ
のバンクーバーに本拠を構えています。バンクーバーは、ワシン
トン州のシアトルから車で3〜4時間くらいで国境を越えて行け
る距離なのです。私も行ったことがあります。
 このバラード社に対抗しようとしているノース・ウェスト・パ
ワー・システムズ社は(のちにアイダテックと社名変更)、19
96年にワシントン州の南に隣接するオレゴン州ベンドに設立さ
れたのです。
 さらにワシントン州の地元にアヴィスタ社という会社がありま
す。この会社は「ワシントン水力発電」を社名としていた電力会
社なのですが、ビル・ゲイツが個人所有の投資会社を通してアヴ
ィスタ株を5%購入したのです。2000年1月のことです。
 このニュースがウォール街に流れると、アヴィスタ社の株価が
16ドルから一時は60ドルまで上がったといわれます。それに
しても、マイクロソフトは、この会社に対して何を評価したので
しょうか。
 アヴィスタ社は、もともとワシントン州、アイダホ州、オレゴ
ン州からカルフォルニア州にいたるまで、太平洋岸を中心に電力
と天然ガスを提供してきたのです。この会社の開発する燃料電池
は、PCの操作中に燃料が切れても、絶対にPCがダウンしない
メカニズムを持っているのです。
 アヴィスタ社は特許のカートリッジを使って燃料電池が作動し
ている時には、常に自動メンテナンスが行われ、性能に悪影響を
与える湿度と温度をモニターするシステムによって各部の作動状
況がチェックされ、異常が発生する前に修復回路が作動するメカ
ニズムになっているのです。この場合、たとえ燃料電池が故障し
てもPC本体には影響せず、カートリッジの交換だけで済むとい
う利便性を持っています。
 アヴィスタ社はもともと携帯電話用の超小型燃料電池の開発を
手がけており、ポータブル型に強く、何らかの機器に燃料電池を
内蔵するのは得意わざなのです。
 もっと重要なことがあります。エレクトロニクス機器を初めと
するほとんどの電気製品には直流が使われています。しかし、そ
れらの電気製品は交流のコンセントから電源をとるのです。その
ため内部に変換機を装備し、交流を直流に変換しているのです。
 しかし、燃料電池はすでにお話ししたように、水素電極から酸
素電極に向って一方向に流れる直流なので、燃料電池が電気製品
に内蔵されると、変換による電気のロスがなくなり、エネルギー
効率が抜群によくなるのです。
 しかも、燃料電池が生み出す直流は従来の電力会社のものに比
べて電圧がきわめて安定しており、PCをはじめとするエレクト
ロニクス機器にとって最適なのです。ビル・ゲイツがアヴィスタ
社に目をつけたのはこの点なのです。彼は、「アヴィスタ社の無
停電タイプの燃料電池は、PCなどのエレクトロニクス製品用と
して、ここ数年以内にトップに踊り出る」と予測をしています。
 それでは、冒頭で取り上げたノース・ウェスト・パワー・シス
テムズ社について述べてみたいと思います。バラード社が車の燃
料電池に力を入れ、アヴィスタ社がエレクトロニクス製品内蔵型
で成功しつつあるのに対して、ノースウエスト社は家庭用の燃料
電池に力を入れたのです。
 ノースウエスト社は、1996年オレゴン州のベンドにノース
ウエスト・パワー・システムズという米国北西部の位置を社名に
した会社を設立したのです。会社といってもガレージに機材を持
ち込む典型的なガレージカンパニーだったのです。
 その中心人物はアラン・グッケンハイムで、彼を中心として2
人の仲間――化学エンジニアのデヴィッド・エドランドとウィリ
アム・プレッジャーが集まって燃料電池に取り組むことになった
のです。彼らは、すぐ近くの国境を越えたバンクーバーでバラー
ド・パワー・システムズが燃料電池で成功をおさめるのを見てい
て、それに刺激されたのです。
 資本を出して社長になったグッケンハイムは、2人のエンジニ
アと一緒にどうすればバラード社を抜けるかということを考えた
というのです。これまた凄い話です。当時バラード社は大発展し
ており、それはできたばかりの3人の会社が「どうしたらソニー
に勝てるか」を議論するようなものだからです。
 バラード社は水素を使って電気を生み出していたのですが、彼
らは、これがひとつのポイントになると考えたのです。当時、燃
料電池に使える水素はどこでも製造されていたのですが、とても
高コストだったのです。
 何とか低コストで水素が作れないかいろいろ実験してみたので
すが、水素分子だけを透過する金属膜が高価で使えず、そうかと
いって安い膜を使うと、今度は不純物が混ざってしまい、意図し
たような成果があがらなかったのです。
 しかし、彼らはそこで発想を転換したのです。それは、不純物
が含まれる質の悪い水素を使って、それに純度を高める化学反応
を加えることはできないかと考えたのです。それは見事に成功し
て、彼らはどこにでもある当たり前の技術を使って革命的な水素
発生装置を手にすることができたのです。そして、家庭で使うの
に十分な5キロワットの電気を生み出す画期的な燃料電池を製作
することに成功したのです。会社を設立してからわずか3年後の
ことです。
 ノースウエスト社は、これによって家庭用燃料電池のレースで
トップに並ぶ1社として踊り出たのです。同社は2000年2月
に新潟市・三条市にあるコロナ社と技術提携し、日本における燃
料電池の開発をスタートさせています。燃料電池の開発競争は今
や過熱しつつあるのです。
posted by 平野 浩 at 00:00| Comment(0) | TrackBack(0) | その他 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前: [必須入力]

メールアドレス: [必須入力]

ホームページアドレス:

コメント: [必須入力]


この記事へのトラックバック