2006年07月11日

ヒラム・アビフとは何者か(EJ1875号)

 2つの柱が「王権」(ポアズ)と「祭司権」(ヤキン)を象徴
している――これについては昨日のEJで述べています。このこ
とから、いわゆる「ダビデの星」が説明できるのです。
 「ダビデの星」といえば、今日ではユダヤ教のシンボルとされ
ていますが、これは2つのピラミッド、すなわち、上向きと下向
きの2つの三角形を組み合わせたものなのです。
 上向きのピラミッドは「王権」をあらわす古いシンボルです。
底辺が大地にあって、頂点が天に達しています。それに下向きの
ピラミッドは「祭司権」をあらわしており、その基盤は天にあり
頂点は地に向けられています。この2つの三角形によって「ダビ
デの星」はできているのです。
 この2つのピラミッドの組み合わせによるダビデの星――ここ
から2本の横線を取り除くと、フリーメーソンリーの「定規とコ
ンパス」になるのです。
 祭司のピラミッドが「定規」をあらわしています。定規は本来
建物などの正確さを計る道具ですが、ここから転じて人間の善を
判定する道具を象徴しているのです。古代エジプトの「マアト」
を思い出してください。(EJ第1851号参照)
 そして王のピラミッドが「コンパス」になります。コンパスは
王、すなわち、支配者の能力――間違いを犯さない範囲の円をあ
らわしているのです。
 ここで、EJ第1873号でご紹介したフリーメーソンの儀式
で行なわれる、ワーシップフル・マスターとシニア・ウォーデン
とジュニア・ウォーデンの会話をもう一度再現します。
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
 マスター  :失われたものとは何か
 Sウォーデン:マスター・メーソンの真の秘密です
 マスター  :それはいかにして失われたか
 Jウォーデン:われらがグランド・マスター/ヒラム・アビフ
        の突然の死によってです
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
 ここに出てくる「ヒラム・アビフ」とは何でしょうか。
 このヒラム・アビフ――ソロモン王自身がエルサレムに神殿を
建設したとき、その建築全般を指揮・監督した人物として、EJ
第1841号で紹介しています。
 フリーメーソンの問答は、「われらがグランド・マスター/ヒ
ラム・アビフ」といっています。フリーメーソンのグランド・マ
スターといえば、ソロモン王クラスの大物なのです。しかし、聖
書をいくら探してもソロモン王の神殿を建設した棟梁、ヒラム・
アビフの名前はどこにも出てこないのです。ヒラム・アビフとは
一体何者なのでしょうか。
 ただ、はっきりしていることがあります。ヒラム・アビフなる
人物は「突然の死」――すなわち、殺害されていることです。そ
れに、ヒラム・アビフという名前は後世の人の創作であると考え
られます。それは、名前を分解してみるとわかります。
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
       ヒラム = 高貴な、王のような
       アビフ = 失われた者
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 つまり、ヒラム・アビフとは、ヘブライ語で「失われた王」を
意味するのです。『封印のイエス』の著者であるフリーメーソン
のナイト/ロマスは、この「失われた王」――ヒラム・アビフの
探索をしています。そして、それは古代エジプトの王の一人に違
いないと結論づけているのです。
 EJ第1867号では、古代エジプトのことについて、次のよ
うにを述べています。
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
 しかし、古代エジプトは、13〜17王朝については、異民族
 支配の王朝だったのです。紀元前17世紀頃、メソポタミア地
 方の覇権を握っていたヒクソス人がエジプトを占領し、ヒクソ
 ス人が自らファラオになって君臨したのです。
            ――6月29日付/EJ第1867号
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 ヒクソス人のほとんどの王の支配は、その前期の王権において
は限定的であり、抑圧的ではなかったのです。当時はエジプトは
上下に分かれていましたが、ヒクソスの王たちは、下エジプトの
アワリスに都を置く王朝を開き、上エジプトに関しては、地方豪
族の統治を認める間接統治によって支配していたのです。
 しかし、支配の後期に入ると、古都メンフィスから上下エジプ
トを支配するようになったのです。その頃エジプトの本来の王統
一族は、上エジプトのテーベにおいて、メンフィスのヒクソス王
と努力して何とか良好な関係を保っていたのです。
 しかし、ヒクソス王たちは、しだいにエジプトの政治の実権だ
けでなく、霊的な力も欲しはじめてきたのです。つまり、彼らは
伝統的なエジプト王にならって真の意味のファラオ−−神の子に
なることを求めはじめたのです。
 なかでもとくに執着したのは「アポピ」というヒクソス王だっ
たのです。彼は本物のエジプト王になろうとし、本来のエジプト
王であるセクエンエンラ2世に対して、オシリスの秘儀を明かす
よう迫ったのです。
 しかし、セクエンエンラ2世はこれを頑として受け入れず、両
者の関係は険悪なものになっていったのです。そして、遂にヒク
ソスのアポピ王は、3人の暗殺者に命じてセクエンエンラ2世を
殺害してしまうのです。しかし、オシリスの秘儀は、代々のエジ
プト王から口述伝承されるものであるため、セクエンエンラ2世
の死と同時にそれも失われることになってしまったのです。
 このセクエンエンラ2世こそ、フリーメーソンリーの始祖であ
るヒラム・アビフその人である――このように、ナイト/ロマス
は結論づけています。このヒラム・アビフ――ロスリン礼拝堂の
南西の天井の隅に人頭像があるのです。・・・ [秘密結社49]


≪画像および関連情報≫
 ・セクエンエンラ2世/失われた王
  ―――――――――――――――――――――――――――
  1881年、セクエンエンラ2世のミイラが発見された。こ
  れを見ると、彼の額の中央は陥没し、右眼窩から右頬、鼻に
  かけても痛々しい打撃の跡があった。第3の打撃は右耳の後
  ろで、それは首まで達していた。生前は黒い髪を持つ背の高
  い美青年であった彼の頬は、その死の際の苦痛を物語ってあ
  まりあるものであった。しかもその死体は、ミイラ化される
  まえに、しばらくの間放置されていた形跡があった。
     ――クリストファー・ナイト/ロバート・ロマス著/
     松田和也訳、『封印のイエス/「ヒラムの鍵」が解く
                  キリストのミステリー』
  ―――――――――――――――――――――――――――

1875号.jpg
posted by 平野 浩 at 06:21| Comment(1) | TrackBack(0) | 秘密結社の謎と真相 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
凄い!

この写真が欲しかったんです!
有難うございました。

それぞれの解説は一級品です!

私のブログが恥ずかしくなります!
こサイトに出会えて数々の疑問が氷解いたしました!
Posted by ミナミの吟遊詩人 at 2006年07月21日 20:10
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