2001年06月21日

燃料電池でマイエレキ時代が到来する(EJ642号)

 6月15日と16日の日本経済新聞に次の2つの注目すべき記
事が出ています。
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 6/15:「燃料電池バストヨタが試作/来秋にも東京都と
営業実験」
 6/16:「燃料電池使い生ごみ発電/富士電機/月末、神
      戸に完成予定」
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 ところで「燃料電池」とは一体何でしょうか。実はこれはかな
り古い技術なのです。燃料電池を簡単にいってしまうと、次のよ
うになります。
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 『天然ガスなどから抽出した水素を、空気中の酸素と電気化学
 的に反応させることによって電気を取り出すシステム』
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 6月15日の日経の記事によると、トヨタ自動車は「燃料電池
バスの試走車を開発し、公道での運用実験を行い、2002年秋
から都内のバス路線で営業運行する予定というのです。
 しかし、既に燃料電池自動車については、1997年12月に
ダイムラー・ベンツが「燃料電池自動車を2004年に4万台、
2007年に10万台生産する」と発表しています。
 この発表は全世界の自動車メーカに大衝撃を与えたのです。と
いうのは、ベンツには、バラード社製の高性能燃料電池が使われ
ていたからです。この発表を機に、世界中の自動車メーカが提携
を求めてバラード社に殺到したといわれます。そして、1999
年4月20日に、「カルフォルニア燃料電池パートナーシップ」
が結成されることになるのです。
 燃料電池の歴史を調べてみると、これに関する象徴的な出来事
がすべて「9」の年に起こっていることがわかります。
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 1839年:ウィリアム・グローヴ卿が初めて燃料電池の発
       電メカニズムを発見
 1889年:ルートヴィッヒ・モンドが初めて「フュエル・
       セル」という言葉を使って実用化を試みる
 1959年:フランシス・ベーコンが初めて燃料電池の実用
       化に成功
 1969年:アポロ11号が燃料電池を積んで人類最初の月
       面着陸を成功させる
 1999年:バラード社を中心に「カルフォルニア燃料電池
       パートナーシップ」が結成
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 燃料電池には、次の5つのタイプがあります。このあとの話の
展開のためにご紹介しておきます。
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  1.高分子膜 型燃料電池
  2.リン酸  型燃料電池
  3.アルカリ 型燃料電池
  4.セラミック型燃料電池
  5.溶融炭酸塩型燃料電池
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 このなかで現在話題を集めているのは「高分子膜型燃料電池」
であり、カナダのバラード社によって、これまでにない低コスト
で開発されたものです。
 ごく簡単に原理を説明しましょう。
内部には、真ん中に薄い膜があります。これを電解質膜といい、
物質を電気的にプラスとマイナスに分解する性質があります。こ
の膜をはさんで、陰極(アノード)と陽極(カソード)が配置さ
れています。
 これら2つの電極は、氷砂糖や繊維のように内部が隙間だらけ
の構造をしていて、この多孔質の物質がガスを通すのです。膜側
の表面には薄く触媒が塗ってありますが、現在までほとんどの燃
料電池では、触媒として白金か白金の合金が使われています。し
かし、白金は高価であってこれが燃料電池のコストを引き上げて
しまうのです。基本的な構造はこれだけです。
 発電するには、陰極の内部に水素ガスを送り込みます。水素ガ
スは、電解質膜と触媒の作用によって陽子と電子が分離して、陽
子だけが+の陽イオンとして電解質の膜を通り抜け、陽極に向っ
ていきます。
 一方、陽子が去ってしまうと、取り残されたマイナスの電子は
電極につないである電線のなかを走ってやはり陽極に向って行く
のです。このようにして電線のなかを電子が走ると電流が流れる
ことになります。ですから、そこにテレビつなげば、テレビが映
るのです。
 そのうえで陽極に空気が送り込まれます。空気には、約20%
酸素が含まれています。酸素は多孔質の陽極に吸収され、それが
電位を生じるため、電線を通ってきた電子を取り込んでマイナス
の酸素イオンに変化するのです。この酸素イオンが膜を通ってき
た水素の陽子と結合して水が生まれます。
 酸素と水素が結合して水になると、電子の持つエネルギーは、
熱として放出され、水は100度の熱湯になります。この熱湯は
もちろん飲料水として使えるわけです。
 ここで重要なことは、この装置の内部では、水素と空気により
「電気が流れ」、「熱を出し」ながら「水(100度の熱湯)が
できる」ことです。一般家庭では、台所やバスルームで使うお湯
のために給湯器を設置しますが、その給湯器に支払うお金で、つ
いでに家中の電気がついてしまうのです。
 燃料電池によって、「マイエレキの時代」が実現することにな
ります。しかも、燃料電池であると、窒素酸化物や硫黄酸化物の
ような有害物質はまったく排出されないのです。したがって、ゼ
ロミッションと呼ばれます。燃料電池はまさに究極のクリーン・
エネルギーであるといえます。

posted by 平野 浩 at 00:00| Comment(0) | TrackBack(0) | その他 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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