2001年08月13日

首相の靖国公式参拝は合憲である(EJ678号)

 このところの靖国報道は本当に凄いですね。こういう中で同じ
テーマでEJを書くのは大変です。しかし、今週は、このテーマ
で通したいと思います。
 EJの若い読者の何人かから「A級」とは何かという質問がき
ていますので、このことから今朝のEJを始めたいと思います。
テレビなどではこういう説明はしていないのです。
 戦争犯罪人の分類の中で、捕虜虐待、非戦闘員への暴行虐殺な
どの国際法に違反したとされる者のうち、直接手を下した者をC
級、監督・命令権者としての行為の責任を負わされた者をB級と
呼んだのです。それではA級とはどういう人たちのことをいうの
でしょうか。
 極東国際軍事裁判所の起訴状によると、次の3項目に該当する
者がA級としています。
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
  1.通例の国際法の条規違反
  2.平和に対する罪
  3.人道に対する罪
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
 これら3項目のうち1については、C級、B級と同じ国際法の
通例の意味での条規違反なのですが、2と3については国際法に
は記載されていないのです。およそ裁判において人を裁くには法
的根拠が必要ですがそれがないのです。そういう意味で極東国際
軍事裁判は、昔からいう「法なくして罪なく法なくして刑なし」
という罪刑法定主義の大原則に違背している疑いがあるのです。
 さて、A級として実際に被告として訴追を受けたのは、当初は
28名、途中死亡の2人と免訴の1人を除いて25名の高官・軍
人が有罪の判決の宣告を受けたのです。
 しかし、最終的には、絞首刑になった東條、板垣、土肥井、松
井、木村、武藤、廣田の7人と未決拘留中に死亡した松岡、永野
の2人、受刑中に死亡した白鳥、東郷、小磯、平沼、梅津の5人
の計14人をA級といっており、現在靖国神社にはこれら14人
のA級戦犯が合祀されているのです。
 続いて、EJ677号の2つ目の問題である「内閣総理大臣の
靖国神社参拝は憲法上合憲であるか違憲であるか」について考え
てみたいと思います。
 現在、靖国神社は宗教法人です。これは米国占領軍によるポツ
ダム政令によって強制的にそうさせられたのです。その後靖国神
社を宗教法人の枠から外して国の神社とする靖国神社法案が5回
も国会に提出されたのですが、成立せず廃案となっています。
 そうなると、一宗教法人たる靖国神社に国が関わると憲法でい
うところの政教分離の原則に抵触してしまう恐れがあります。憲
法の該当条文は次の通りです。
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
 第20条  国及びその機関は、宗教教育その他いかなる宗教
   3項  活動もしてはならない。
 第89条  公金その他の公の財産は、宗教上の組織もしくは
       団体の使用、便宜もしくは維持のため・・・これ
       を支出し、またその利用に供してはならない。
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
 内閣総理大臣の靖国神社参拝が、これら憲法の該当条文に触れ
るかどうかですが、これについては既に結論が出ているのです。
これについては、昭和52年7月の最高裁の判決があり、合憲と
いうことになっているのです。
 それなのに、私人として参拝するとか、神職のお祓いを受けな
いとか、二礼二拍手一礼などの神道の儀式をやらないとかいうの
はいわゆる小細工というべきものです。
 内閣総理大臣の職にあるものが靖国神社を参拝すれば、個人で
あろうと公人であろうと、総理大臣が参拝したことには代わりは
ないのです。また、参拝する以上その方法はその神社の儀式に従
うべきであって、参拝の方法を変更するのは神社に対して失礼な
行為というべきでしょう。
 昭和41年1月のことです。津市体育館の地鎮祭において公金
支出があり、これが憲法第20条3項と第89条に違反するとし
て3月に共産党市議から訴訟が起こされ、2年をかけて争った結
果、昭和42年3月に原告敗訴の判決が出たのです。
 判決理由は、地鎮祭は宗教的行事というよりも習俗的行事であ
り、その行事において神職への謝礼と供物料を市の公金から支出
したとしても別段憲法違反ではないというものです。
 原告側はこれを不服として、名古屋高裁に控訴して昭和46年
5月に控訴審判決が出ます。結果は地裁の判決を全面的に覆すも
のであり、原告側の全面勝訴となったのです。
 もちろん被告側はこれを不満として最高裁に上告します。この
裁判は政教問題に関心のある人たちの間で大きな話題となり、最
高裁の判決がどうなるかを固唾を飲んで見守ったのです。
 最高裁判決は昭和52年7月に出たのですが、結果は二審判決
を覆しての原告側全面敗訴となったのです。津市の公金支出は合
憲ということになったのです。このとき最高裁判決で示されたの
が、「目的効果基準」というものです。
 「目的効果基準」というのは、その行為がその宗教(靖国神社
の場合は神道)をもっと普及させようとし、または他の宗教的活
動を妨害しようとする効果を実際に上げる可能性がある場合は違
憲だというわけです。
 ですから、内閣総理大臣が靖国神社を戦没者の慰霊に訪れて参
拝する行為が神道の普及につながったり、他の宗教的活動の妨害
にならない限り違憲ではないのです。中曽根康弘氏はこのことを
知りながら、あえて慎重を期して神道の作法を一切やらなかった
のですが、これが靖国神社側の反発を買ってしまうことになりま
す。これについては改めて述べます。
 このように、内閣総理大臣の靖国神社公式参拝は少なくても憲
法上は違憲ではなく合憲なのです。近隣諸国への配慮に関しては
明日述べることにします。
posted by 平野 浩 at 00:00| Comment(0) | TrackBack(0) | その他 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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