2001年08月10日

中国は”連合国”に入っていない(EJ677号)

 首相の靖国神社への公式参拝はなぜ問題なのでしょうか。次の
2つのポイントから考えてみましょう。
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 1.中国をはじめ近隣諸国に迷惑をかけるか。
 2.それが憲法上合憲であるか違憲であるか。
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 まず、EJ677号では、第1の問題について考えます。
 近隣諸国といっても現在のところ中国が突出して反対を表明し
ています。かりそめにも一国の首相に対し「やめなさい」と命令
する権利など、どこにあるのでしょうか。
 感情的にならずに、日中平和条約とサンフランシスコ平和条約
の2つの面から検討してみたいと思います。
 日中平和条約の第一条および第三条には次のように相互の内政
不干渉を規定した条文があります。
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 第一条:両締結国は、主権および領土保全の相互尊重、相互不
     可侵、内政に関する相互の不干渉・・・の基礎の上に
     恒久的な平和友好条約を発展させるものとする。
 第三条:・・・平等および互恵並びに内政に対する相互不干渉
     の原則に従い・・・。
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 平和条約という以上、「内政に関する相互不干渉」は当たり前
のことです。主権国家である日本が先の戦争の戦没者が祀ってあ
る神社にその国の代表者である内閣総理大臣が公式に参拝するこ
と――これは内政である――がなぜ問題なのでしょうか。まして
「やめなさい」などという命令を日本が中国の外相から受けるい
われはないのです。内閣は「それは内政干渉であり、日中平和条
約第1条に抵触している」と抗議すれば済むことです。
 普通の戦没者ではなく、A級戦犯が合祀されているからという
ことに対しても、A級戦犯といえども国内では犯罪者ではなく、
A級戦犯として処刑されたり、獄死したりして罪をつぐなってい
る人たちであり、その人たちを戦没者として合祀することに外国
からクレームをつけられるいわれはないのです。したがって、中
国の干渉は明らかに甘受すべからざる内政干渉であります。
 続いて、サンフランシスコ平和条約について検討してみたいと
思います。少し長いですが、平和条約第25条をご紹介します。
一部漢字を現代的に修正してあります。
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 『この条約の適用上、連合国とは、日本国と戦争していた国ま
 たは以前に第23条に列記する国の領域の一部をなしていたも
 のをいう。ただし、各場合に当該国がこの条約に署名し、かつ
 これを批准したことを条件とする。
  第21条の規定を留保して、この条約は、ここに定義された
 連合国の一国でないいずれの国に対しても、いかなる権利、権
 限または利益も与えるものではない。また日本国のいかなる権
 利、権限または利益も、この条約のいかなる規定によっても前
 記の通り定義された連合国の一国でない国のために減損され、
 または害されるものとみなしてはならない』。
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 この条文の中の第23条は、この条約に署名し、批准する国の
名を列記した項なのですが、その列記された連合国の中には、中
華民国(台湾)も中華人民共和国(中国)も入っていないのをご
存知でしょうか。
 当時両国は代表権問題で紛争を生じたために、サンフランシス
コ平和会議に代表を送ることができず、会議に参加していないし
もちろん条約に署名も批准もしていないのです。
 しかし、「第21条の規定を留保して」とあるように、戦争中
に生じた損害に対する賠償請求権は保有しますが、戦犯裁判被告
に関わる問題で、日本政府に自らの立場からとやかくいう権利を
持っていないのです。
 この25条の条文をよく読んでいただくとわかると思いますが
この条文の書き方は、将来日本と中国との間にコトあることを予
想し、日本が不当な内政干渉を受けなくて済むように配慮されて
いるといったらいい過ぎでしょうか。
 しかし、このことを日本の政治家はちゃんと理解しているので
しょうか。とくに外務大臣はわかっているのでしょうか。
 もちろん中国外務省はこのことを百も承知しています。したが
って、靖国問題については、A級戦犯が合祀されるまでは公式に
は何もいってきていないのです。A級戦犯の合祀の問題は、EJ
678号で取り上げますが、中国はこの情報を入手するとさかん
に日本に非難の攻勢をかけてきているのです。
 中曽根康弘氏が総理大臣として靖国神社に公式参拝をした昭和
60年8月15日に中国の「人民日報」は、「東條英機を含む千
人以上の犯罪人を祀っている靖国神社」という表現で不快感を表
明しています。
 しかし、9月20日になると、今度は中国外務省談話として、
「A級戦犯も祀る靖国神社への公式参拝はわが国の立場を考えて
行事は慎重にして欲しい」というように、「A級戦犯」にマトを
絞ってきたのです。
 この中国の抗議を受けて10月28日に政府与党首脳会議の席
上、当時の金丸幹事長は「なぜ、A級戦犯が祀られているのか」
とあたかもそれを知らなかったとする発言をしているのです。
 そののち自民党の二階堂副総裁は、新たに着任した章駐日大使
に対して「A級戦犯の合祀は知らなかった」と明言して大使に謝
罪しているのです。なんというお粗末な話でしょうか。
 11月4日になって当時の桜内外務大臣は、中国の呉学謙外相
と会談し、「靖国神社へのA級戦犯合祀は、戦犯を認めたサンフ
ランシスコ平和条約の第11条から見て問題がある」と発言して
いるのです。何という無定見にして無知な発言でしょうか。外務
省は、このときすでに腐っていたのです。

677号.jpg
posted by 平野 浩 at 00:00| Comment(0) | TrackBack(0) | その他 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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