2010年12月15日

●「グラバーの目的とは何か」(EJ第2959号)

 グラバーという人物は、幕末の各藩の軍艦や大砲、鉄砲などの
武器の斡旋などで大儲けをした英国の「死の商人」という評価が
定着しているようです。
 留学生の密航の手配についても、それによって藩の信認を得て
武器斡旋などにつなぐためのビジネスと見ることもできますし、
わざわざ自分の邸を増築してまで大勢の志士を自身の屋敷に匿い
便宜を図ったのも、維新革命の成就の暁には大きなビジネスに結
び付くと考えてやったことといえると思います。確かにそういう
面も少なからずあるのです。
 しかし、グラバーのやった行動はビジネスのソロバン勘定に合
わない面もたくさんあるのです。加治将一氏はそういうグラバー
を評して次のようにいっています。
―――――――――――――――――――――――――――――
 江戸末期の殺伐とした人命軽視の時代背景。その中でグラバー
 のやったことは、国禁を犯す命懸けの行為でした。どんな気持
 ちで取り組んだのでしょうか?単なる金銭目当てということだ
 けでは、とても解明できるものではありません。なぜなら、彼
 はもうすでに充分富を築いていたからです。豪邸に住み、なに
 不自由ない暮らしに浸っていられる状態でした。危ない橋を渡
 ってまでの金儲けは必要なかったのです。事実彼は、奉行所に
 危険分子として徹底的にマークされており、おりあらば何度も
 取調べを受け、あまつさえ撰夷派の浪士に襲撃まで受けている
 のです。そんな中で、彼のやったことは、けっしてソロバン勘
 定だけではないということです。私はその行為の中にグラバー
 の封建社会打倒という正義感と伸びやかな発想、そして冒険を
 面白がる好奇心を垣間見るのです。     ──加治将一著
    『石の扉/フリーメーソンで読み解く歴史』/新潮社刊
―――――――――――――――――――――――――――――
 ソロバン勘定に合わないグラバーの活動の中で見えるものは、
「封建社会打倒という正義感」──このように加治氏はいってい
ますが、それは「自由」というものに深い関係があります。どこ
かの国で起きる大きな政変のときには、必ずといってよいほど、
フリーメーソンがそのバックで大きな働きをしていることが多い
という事実は歴史が証明するところです。
 誰でも知っている有名な例を上げると、米国独立戦争とフラン
ス革命があります。これら2つの政変にはフリーメーソンが深く
関与しています。そのように考えると、明治維新は日本における
最大の政変であり、フリーメーソンが関与しても何も不思議はな
いといえます。
 米国の独立戦争はフリーメーソンが深くかかわる「ボストン茶
会事件」を契機にして起こっています。ボストン茶会事件(ボス
トン・ティーパーティー)は1773年12月16日に、米国マ
サチューセッツ州ボストンで、英国本国議会の植民地政策に憤慨
した植民地人の組織が、アメリカ・インディアンに扮装して、港
に停泊中のイギリス船に侵入し、英国東インド会社の船荷の紅茶
箱342箱をボストン湾に投棄した事件です。
 米民主党が大敗した今年の米国中間選挙において、保守系の草
の根運動「ティーパーティー(茶会運動)」の存在が注目を集め
ましたが、このネーミングは明らかにボストン茶会事件を意識し
ていると思います。つまり、何かを大きく変えたいとき、フリー
メーソンが何らかのかたちで絡んでくるのです。
 これまでも述べてきたようにグラバーがフリーメーソンであっ
たことは、まず間違いがないと思われます。既に述べたように、
グラバーが入会したのは英国の「上海ロッジ」ですが、清国が共
産主義国家に変わった瞬間に「上海ロッジ」は消滅し、記録も消
滅してしまっています。
 欧米の軍は伝統的にフリーメーソンの牙城であるといわれてお
り、とくに英国軍はメーソンでなければ上級軍人にあらずという
風潮があるのです。軍の内部にロッジを置いているケースも多く
上級軍人のほとんどはフリーメーソンであるといっても過言では
ないほどです。
 上海ロッジには、ユダヤ系財閥、政治家、政府高官、上級軍人
それに冒険商人たちがつねに集っていたのです。いわば情報のす
べてが上海ロッジに集まっており、上海で何かをしようと思った
ら、メーソンになっていないと何もできなかったのです。
 それにジャーディン・マセソン商会は、ロスチャイルド系の財
閥であり、フリーメーソンを金銭面で支援していたものと思われ
ます。グラバーはグラバー商会として、日本の革命のためにフリ
ーメーソンの力を結集し、それをジャーディン・マセソン商会が
資金面で支えるという構図だったのです。
 しかし、明治維新は日本の革命であり、日本の志士たちが主導
的に動く必要があります。グラバーはそういう志士たちの中で使
える人間をピックアップしてスタッフとして使い、彼らを中心と
する活動を物心両面で支援したのです。志士を匿うための自宅の
増築もそのためのものです。
 もうひとつグラバーはビジネスの勘定に合わないことをやって
います。グラバー商会は革命を進めている雄藩に信用貸しをして
いるのです。幕府は倒れて、新政府になれば藩が消滅するのは自
明の理であり、その藩のために信用貸しをするのは自殺行為に等
しいことですが、それをあえてやったのです。実際にグラバー商
会はそのために明治になってから、実際に倒産の憂き目にあって
いるのです。
 さて、グラバーのスタッフの一人が五代友厚であり、坂本龍馬
もそうであることはわかっています。しかし、五代友厚の活動に
ついてはある程度把握できていますが、龍馬についてはグラバー
との接点があまり見えないのです。龍馬はグラバーについて一切
話していないからです。しかし、グラバーとの接点が相当あった
ことは、龍馬の行動や発言のいろいろな面において数多く見られ
るのです。     ――――― [新視点からの龍馬論/50]


≪画像および関連情報≫
 ●ティーパーティ運動はアメリカ保守の逆襲か/若林秀樹氏
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  アメリカ人にとって、「ティーパーティ」とは、政治的抗議
  の象徴である。これは言うまでもなく、1773年12月、
  イギリス政府が押し付けた茶税に反対し、植民地の住人がボ
  ストン湾に停泊中の東インド会社船の積荷である茶を海に投
  げ捨てた「ボストン・ティー・パーティ」に由来するもので
  あり、この事件が発端で後にアメリカ独立戦争が勃発した。
   http://opinion.infoseek.co.jp/article/755
  ―――――――――――――――――――――――――――

ティーパーティー運動のシンボル旗.jpg
ティーパーティー運動のシンボル旗
posted by 平野 浩 at 04:11| Comment(0) | TrackBack(0) | 新視点からの龍馬論 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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