2001年05月16日

ディスプレイが変わる/有機EL編(EJ616号)

 5月8日のEJ610号で電磁波の話をしましたが、昨日の朝
日新聞の朝刊に重要情報が出ていましたのでお知らせします。総
務庁の調査によると、携帯電話端末から出て体内に吸収される電
磁波総量は、アンテナを伸ばした場合とそうでない場合とでは、
大きく異なることがわかったのです。
 安全性の指針とされる電磁波吸収量の基準は、体重1キロに対
し2ワットの出力までとされているのですが、アンテナを収納し
た場合は最大で1.86ワットを記録した端末も、アンテナを伸
ばすと半分以下の0.85ワットまで減少したといいます。
 アンテナを伸ばすと電磁波が周辺に拡散するためであり、端末
によっても異なりますが、平均すると70%近くは拡散するとい
う結果が得られたのです。携帯電話で話をするときは、アンテナ
を必ず伸ばしていただきたいと思います。
 さて、今朝は有機ELについてお話しします。その前に発光型
のPDP、LED、ELの正式名称を記しておきます。
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      PDP  Plasma Display Panel
      LED  Light Emitting Diode
      EL   Electoro Luminescence
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 液晶は画像の応答速度が「ミリ秒」の単位です。これでは動画
は目に残像が残ります。遅いから、画像を引きずる感じがあるの
です。その点有機ELは、「マイクロ秒」の単位ですから、残像
はまったくないのです。
 有機ELは、ガラス基板の上に、透明な電極と有機キャリア輸
送層、有機発光層、それに金属電極を置いたものです。ガラスの
厚さは0.7ミリ、挟み込む有機輸送層や発光層などは全部合わ
せても1ミクロンにもならないのです。
 しかも、TFT液晶のように、後ろにバックライトを抱える必
要がないので、とても薄いのです。電源は電池1つで駆動できる
ほど低電圧で、高輝度、高速応答が得られます。視野角は160
度と広いので、見る向きには影響されず、しかも電磁波も出さな
いというのですから、環境にやさしい技術といえます。
 ついこの間まで有機ELディスプレイは実験レベルで、画面サ
イズも10インチまでという限界があったのです。というのは、
画面を大型化すると輝度にばらつきが出てしまうのです。そのた
め携帯電話やPDAなどの小型ディスプレイに使うことを前提と
して研究されていたのです。
 ところが、2001年2月7日、ソニーはディスプレイデバイ
スに関する技術説明会を開催し、現時点では世界最大となる13
型のフルカラー有機ELディスプレイを披露したのです。ソニー
は有機ELに関する難点をどうやって克服したのでしょうか。
 資料には、克服した理由が詳しく説明してあるのですが、非常
に難しく完全には理解できません。簡単にいってしまうと、低温
ポリシリコンという液晶と有機ELを組み合わせて、有機ELを
バックライトのように使う方法でフルカラーを実現しているもの
と思われます。その方法を低温ポリシリコンTFTアクティブマ
トリックス方式というのだそうです。
 ソニーの開発した13型フルカラー有機ELディスプレイのス
ペックを示しておきましょう。
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  画面サイズ    13型(264×198ミリ)
  解像度      800×600ピクセル(SVGA)
  画素ピッチ    0.33×0.33ミリ
  輝度       300カンデラ以上
  コントラスト比  200:1
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 パイオニアでは、有機ELのガラス基板に換えてプラスティッ
ク基板の開発に成功しています。こうすると、軽い、割れない、
曲げられるディスプレイになるのです。曲げても画像表現に影響
はなく、ディスプレイのかたちの自由度が増します。そのうち、
巻紙のようなディスプレイが登場するかも知れません。使うとき
には、くるくると広げて使い、終ったら掛け軸のように巻いてし
まうというディスプレイです。これは、決して夢物語ではなく、
基板にガラスの代わりにポリマーフィルムを使えば十分実現可能
なのです。
 ところで、有機ELの「有機」とは、炭素化合物の総称です。
無機材料を使った無機ELというのもありますが、無機ELは発
光効率が悪く、しかもフルカラーという要件を満たすのは困難で
あるところから、マルチメディア時代のディスプレイの素材とし
ての実用性に乏しかったのです。
 しかし、有機ELディスプレイは、有機物に電流を流すため材
料劣化が早く、素子の寿命が短いことがかつての問題点だったの
です。しかし、これには改良と改善が行われ、素子の寿命は実用
レベルの1万時間を越えて、現在では、3万〜5万時間と大幅に
伸びているのです。
 13型のフルカラー有機ELディスプレイを開発したソニーで
も目下の課題は、「低消費電力の実現と有機ELの寿命を延ばす
こと」であるといいます。やはり素子の寿命を伸ばすことがポイ
ントのようです。
 ソニーは「有機ELディスプレイはポストCRTになる」とい
っています。CRTとはブラウン管型のディスプレイのことです
が、有機ELはブラウン管に近い特性があるのです。応答速度が
速く、動画表示もなめらかであるからです。
 現在ブラウン管や液晶が使われている家庭用テレビにも有機E
Lは使われ、究極の壁掛けテレビになる可能性があります。そう
いう意味で有機ELは、データ放送を受信するのに最適なブロー
バンド時代のデバイスであるといえます。
 こういう先端技術の話は難しいけれども夢があります。中村博
士の本はぜひお読みになるとよいと思います。

616号.jpg
posted by 平野 浩 at 00:00| Comment(0) | TrackBack(0) | その他 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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