2010年09月07日

●「プラットフォームと端末の融合戦略」(EJ第2893号)

 インターネットが日本でも利用されるようになって約15年が
経ちます。その時代から私はインターネットを使っていますが、
最近になってつくづく考えることがあります。
 現代はリアルの世界と並んで、ネットの世界がまるでパラレル
ワールドのように存在し、ネットの世界で起こったことが、リア
ルの世界に強いインパクトを与えるようになってきています。報
道にしても、リアルの世界の新聞やテレビなどのメディアの情報
だけでなく、ネットの世界の情報を見たうえで判断しないと、判
断を間違えることがあるようになっています。
 この原稿は9月4日に書いていますが、その時点での民主党の
代表選の候補者の支持率の情勢は、リアルの世界の新聞では「菅
支持85%VS小沢支持15%」なのに、ネットの世界では次の
ようになっているのです。リアルの世界とネット世界では正反対
の結果が出ているのです。
―――――――――――――――――――――――――――――
                 菅支持    小沢支持
 ライブドア         37・2%   62・8%
 スポニチネット       20・0%   80・0%
 グーニュースネット     36・1%   63・9%
 ロイター通信オンライン調査 8162票   8477票
           ──9月4日発行/日刊ゲンダイより
―――――――――――――――――――――――――――――
 しかし、ネットの世界はPCやケータイなりでアクセスしない
と、見ることはできない世界です。ところが、「人間というもの
は目に見えないものは信じない」傾向が強いのです。そういう世
界があることはわかっていても、積極的に見ようとしない。日本
人はとくにそういう傾向の強い国民であると思います。
 したがって、リアルの世界では菅支持が圧倒的だが、ネットの
世界では真逆であるといくら強調しても、誰もアタマから信じな
い。新聞・テレビに完全に洗脳されてしまっているのです。
 これが進むとどうなるかというと、リアルの世界のことしか関
心を持たない人と、リアルとネットの両方を参照する人とは物事
に対する判断のしかたが大きく異なることになります。
 今回のテーマである「メディア覇権戦争」でも、ネットの世界
で起きつつある事態が、リアルの世界に大きな影響を及ぼしてき
ていることをここまで書いてきたのですが、リアルの世界で変化
が起きてはじめてわかるという人が多いのです。
 多くの人はインターネットにどのようにして接続するかについ
ては知っていますが、いったん繋がってしまうと、それから先の
ことには関心を持たないものです。しかし、その先のところで熾
烈な戦いが展開されているのです。それがプラットフォーム企業
によるメディア覇権戦争です。
 もちろん一般ユーザーにとっては、ネットの先のことまで知る
必要はありません。水道の蛇口をひねると水が出る──それだけ
知っていれば、どのようにして水は出るのかについて考える必要
がないのと同じです。
 しかし、国や企業はネットの先のところで起こっている戦争に
について熟知している必要があります。そうでないと、安全保障
やビジネスの肝心なところを米国のプラットフォーム企業に押さ
えられてしまうからです。
 2009年から新たなプラットフォーム・レイヤーの展開が本
格化しています。「ネットサービスの4つのレイヤー」を再現し
て、説明します。
―――――――――――――――――――――――――――――
      1.コンテンツ/アプリケーション
      2.プラットフォーム
      3.インフラ
      4.端末
―――――――――――――――――――――――――――――
 それは、プラットフォーム・レイヤーと端末レイヤーとの融合
の動きです。具体的な例として、アマゾンの電子ブックリーダー
「キンドル」がそれです。実はこのキンドル、端末としての完成
度は高く、なかなかの優れものなのです。
 アマゾンは、このキンドルによって、プラットフォーム・レイ
ヤーと端末レイヤーの融合を実現し、2つのレイヤーで強い競争
力を持ったことになります。
 アマゾンの戦略は、プラットフォーム・レイヤーにはグーグル
をはじめとするアップルやフェイスブックによって代表されるS
NSなどの強力な競争相手がひしめいていて、とうてい勝ち目が
ないので、プラットフォームに端末を融合させることによって、
対抗しようとしたものと考えられます。
 アップルは、アイフォーンやアイパッドなどの端末をアイチュ
ーンズというプラットフォームに融合させています。これに対し
てグーグルは、携帯用の自社OS「アンドロイド」を無料で配布
し、世界中に多くのアンドロイド携帯を誕生させています。
 これらはそれぞれメーカーは異なるけれども、グーグルとして
はOSを押さえているので、自社のプラットフォームと融合でき
るのです。これもプラットフォーム・レイヤーと端末の新しいか
たちの融合です。現在は、携帯電話からのネット利用が世界中に
急増しており、グーグルの戦略は実にタイムリーといえます。
 携帯端末からのネット検索の割合は、米国市場でも世界市場で
も、2009年段階ではPCなどを含む検索全体の1%程度です
が、今後これが大きく伸びることが予想されます。
 また、世界における携帯端末の売り上げは、2009年までは
少ししか伸びていないのですが、ネット接続機能やメール機能を
重視したスマートフォンの売り上げは、約13%も増えており、
今後は携帯端末からのネット利用が大幅に伸びることが予想され
ます。このように、現在でもプラットフォーム・レイヤーでの覇
権戦争は激化しており、予断を許さない情勢なのです。
               ──[メディア覇権戦争/32]


≪画像および関連情報≫
 ●パラレルワールドとは
  ―――――――――――――――――――――――――――
  「この現実とは別に、もう1つの現実が存在する」というア
  イディアは、「もしもこうだったらどうなっていたのか」と
  いう考察を作品の形にする上で都合がよく、パラレルワール
  ドはSEにおいてポピュラーなアイディアとなっている。登
  場人物が何らかの切っ掛けで、自分が知っているのとは違う
  現実に迷い込んでしまうといった作品が多く存在する。この
  アイディアは広く一般化し、SF以外の作品でも、パラレル
  ワールドの概念を取り入れたものが作られることは珍しくな
  い。架空戦記作品に見られるような、史実とはどこかが異な
  る「もう1つの歴史」を扱うフィクションは多数存在するが
  これも我々の知る世界から見ればパラレルワールドである。
                    ──ウィキペディア
  ―――――――――――――――――――――――――――
 ●図の出典/岸 博幸著/幻冬舎新書/156
 『ネット帝国主義と日本の敗北/搾取されるカネと文化』より

プラットフォームと端末の融合.jpg
プラットフォームと端末の融合
posted by 平野 浩 at 04:10| Comment(0) | TrackBack(0) | メディア覇権戦争 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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