2006年04月05日

日本は米国の通貨植民地(EJ1809号)

 宗主国と植民地――既にどちらも死語ですが、支配する国を宗
主国、支配される国を植民地と呼んだのです。宗主国は必ずしも
圧倒的な軍事力ですべてを支配したわけではなく、その経済関係
を通じて、植民地の国民にそれとわからないように、巧妙に富の
収奪を行ったのです。
 宗主国と植民地の経済関係は、宗主国が自国の生産力以上に消
費できたのに対し、植民地は逆に自国の消費を生産よりも抑え込
んで、宗主国にその余剰生産分を引き渡さなければならない仕組
みになっていたのです。
 といっても宗主国は、植民地の生産物を無償で取り上げたわけ
ではなく、あくまで商取引を通じて生産物を購入していたに過ぎ
ないのです。具体的にいうと、宗主国は植民地に対し、自国通貨
で輸入代金を支払っていただけなのです。
 英国の植民地だったインドのケースで考えてみましょう。
 インドの通貨はルピーです。インドは香辛料などの原材料を英
国に輸出しようとしたのです。英国はこれを受け入れ、インドは
英国を相手に多額の黒字を計上したのです。しかし、その輸出代
金はインドの通貨であるルピーではなく、英国の通貨であるポン
ドで決済されたのです。これがポイントです。
 当時は金本位制だったので、インドは金を要求したのです。し
かし、英国はインドを次のように説得したといわれます。
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
 金を持っていても金利はつかないですよ。しかし、ポンドで運
 用すれば、金利がつくので有利です。    ――英国の説得
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
 英国の立場からすると、ルピーの為替レートはポンドで固定さ
れているので、英国はいくら赤字を計上しても、ルピーが切り上
がることはなく、高い輸入コストを負担することを心配する必要
はなかったのです。
 英国のインドへの説得は、輸出代金をポンドで受け取らせ、そ
のポンドを英国の銀行で運用させる――その一点に絞られたので
す。英国の説得は硬軟の戦術を駆使して行われ、結果は英国の思
い通りになったのです。インドの稼いだ黒字分はポンドのまま英
国国内に貸し置かれたのです。つまり、インドは英国に資本輸出
をしたことになるのです。
 これがどのような結果を生んだのでしょうか。
 まず、英国人はインドから輸入した品物で生活を豊かにするこ
とができたのです。しかも、インドに支払ったはずのポンドは英
国の銀行にそのまま貸し置かれたままで残っているのです。した
がって、名義はインド人に変わっても英国の銀行は、そのお金を
元に貸し出しをして、国内経済を豊かにできたのです。
 しかも、英国人の預金は、いつ引き出されてしまうかわかりま
せんが、インド人の預金はその心配はなく、増える一方です。こ
の赤字によって、英国に流入するポンドは、積極的に貸し出され
赤字分に匹敵する以上に英国人の預金を生むという英国にとって
は笑いの止まらない状態になったのです。
 しかし、インドの方はどうなったのでしょうか。
 ルピー預金が黒字分に見合うポンド資産の獲得に使われたので
す。そのため、国内に流通するルピーは当然不足します。つまり
お金は回りにくくなり、やがてデフレになって国内経済は不振を
極めたのです。資本輸出によってインド国内の需要を減らしたこ
とがデフレの原因となったのです。
 しかし、そうかといって、ポンドをルピーにかえてインドに持
ちかえろうとすると、ルピーはポンドに対して切り上げられてし
まうので、それもできないのです。したがって、宗主国はますま
す富み、植民地は貧乏をかこつということになります。
 これは石橋論文が指摘していることそのものです。三国陽夫氏
は、これに関して次のように述べています。
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
 当時のインドがイギリスの通貨植民地だったなら、現在の日本
 はアメリカの通貨植民地ということになるだろう。植民地イン
 ドがポンドに支配されて黒字に見合った冨を宗主国イギリスに
 吸い上げられたと同様に、植民地日本はドルに支配されてやは
 り黒字に見合った冨を宗主国アメリカに吸い上げられていると
 いっても過言ではない。基軸通貨ドルの傘下に甘んじている日
 本の立場は、インドのそれと変わらない。中国をはじめとして
 アジア諸国も同様である。
   ――三国陽夫著『黒字亡国/対米黒字が日本経済を殺す』
                      文春新書481
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 日本の黒字が米国に大量に流入した結果、ドルは米国の銀行か
ら金融市場に広く行き渡り、米国経済拡大のために投資されてい
るのです。つまり、日本の黒字によって米国は膨大な赤字にもか
かわらず、大量の輸入を可能にし、米国国内の消費はとどまると
ころを知らないでいます。
 これに関連して、元米国の財務長官で現ハーバート大学長であ
るローレンス・サマーズ氏は、2004年の国債研究所での講演
において、次のように述べています。
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
 経常収支の赤字の増加が「投資」目的の資金調達なら心配は無
 用で、「消費」目的の資金調達なら心配だ。アメリカの場合は
 「消費」のための資金調達になっている。  ――三国陽夫訳
                ――三国陽夫著の上掲書より
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
 日本の経済成長を何によって上げようと政府・日銀もいろいろ
と努力を重ねてはいますが、日本経済に一向に持続性のある力強
い改善が見られないのは、日本が米国の通貨植民地になっている
ことにある――三国氏はこのように指摘しているのです。
 日本と米国の通貨問題――これがどうなっているかについて勉
強する必要があると考えます。   ・・・[日米関係の謎04]


≪画像および関連情報≫
 ・英国の植民地について
  英国のの最初の植民地は、イングランドが中世以来入植を繰
  り返してきたアイルランドといえるだろう。その後大航海時
  の波に乗って北アメリカ大陸に植民し、ニューイングランド
  植民地が成立、さらに当初は交易を目的として東洋に渡った
  東インド会社はインドの諸勢力を巧みに操ってインドに植民
  地を広げる。七年戦争ではフランスと争い、カナダを獲得、
  インドからフランス勢力をほとんど駆逐した。
                  ――ウィキペディアより

1809号.jpg
posted by 平野 浩 at 04:33| Comment(0) | TrackBack(0) | 日米経済関係の謎 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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