2010年09月02日

●「情報の扱いに慎重な米国と甘い日本」(EJ第2890号)

 クラウド・コンピューティングについてEJでは、昨年スマー
トフォンを中心に52回にわたって取り上げています。
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 2009年10月14日〜12月29日までの52回
 http://electronic-journal.seesaa.net/category/7164880-1.html
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 「クラウド」とは「雲」という意味ですが、もともとは、コン
ピュータシステムを図であらわすときネットワークは雲のかたち
で表現することからきています。
 クラウド・コンピューティングを大別すると、次の3種類に分
類することができます。
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    1.SaaS/Software as a Service
    2.PaaS/Platform as a Service
    3.IaaS/Infrastructure as a Service
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 「SaaS」とは、ネット経由でソフトウェア機能のうち、ユ
ーザーが必要とするものだけをサービスとして提供し、利用でき
るようにしたソフトウェアの配布形態のことです。
 PCには非常に多くのソフトウェアがインストールされていま
すが、使っているのはそのほんの一部であり、実にもったいない
話です。そこで、ユーザーが使いたいソフトウェアだけをネット
を通じてダウンロードし、それらを使った時間だけ料金を支払う
システムが誕生したのです。それがSaaSです。
 「PaaS」というのは、アプリケーションソフトが稼動する
ためのハードウェアやOSなどの基盤をネット上のサービスとし
て遠隔から利用できるようにしたもので、これは個人が利用する
ものではなく、事業上のモデルです。SaaSを事業として展開
したいとき、その実行環境や課金システムなどの基盤をまとめて
提供してくれるサービスがPaaSです。
 「IaaS」は、企業が業務用のシステムを構築する場合にあ
らゆるものを提供するサービスのことで、「イアース」と呼称し
ます。企業が業務用のシステムを構築するときはいろいろなもの
が必要になります。開発・運用のための事業所や機材、回線、O
Sなどのソフトウェア環境や開発環境などを購入・入手し、これ
らを組み合わせてシステムが稼動するためのインフラを構築・維
持する必要があり、莫大なコストがかかるのです。
 IaaSは、こうした基盤一式を大規模なデータセンターなど
に用意して、仮想化されたサーバーなどのかたちで、顧客企業が
ネットを通じて必要なだけ利用し、利用実績に応じて課金すると
いうサービスのことです。
 このようにクラウドは、企業にとって非常に低コストでサービ
スが受けられるので、多くの企業に利用されています。しかし、
このクラウド・サービスを提供している業者のほとんどは、米国
のプラットフォーム企業なのです。そして、このクラウド・コン
ピューティングの運営には、米国連邦政府の意向が深く関わって
いるのです。
 米国においては、連邦政府がこのサービスを調達する場合、サ
ービスを提供する側が守るべき要件として、米国連邦一般調達庁
(GSA)の「IaaSに関するRFQ」というものがあるので
す。RFQとは、一種の見積書のようなものですが、ここでの意
味は調達基準というべきものです。GSAの調達基準は、次のよ
うなものなのです。
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 『IaaSに関するRFQ』──データセンターの施設やハー
 ドウェアが米国本土に置かれていること
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 要するに、クラウド・サービスを行うには、多数のサーバーを
設置するデータセンターが不可欠ですが、データセンターの場所
は外国であってはならず、米国本土であることが条件だというの
です。つまり、仮にハワイであってもダメというわけです。
 米国政府は、情報を扱うサービスについては、安全保障の観点
から非常に慎重なのです。クラウド・サービスに関する米国事情
に詳しい既出の岸博幸氏は次のように述べています。
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 米国の州政府や市政府などでもクラウド・コンピューティング
 のサービスを導入する例が増えていますが、例えば2009年
 にカリフォルニアのロサンゼルス市がグーグルの提供するクラ
 ウド・サービスを導入しようとしたときには、プライバシー、
 セキュリティ、情報の機密性の維持の観点から本当に安全なの
 かという議論が地元で高まり、市民団体が市政府にまずリスク
 ・アセスメントをしっかりと行うよう要求しました。ロサンゼ
 ルス市警察署も情報の機密性についての懸念を表明しました。
            ──岸 博幸著/幻冬舎新書/156
 『ネット帝国主義と日本の敗北/搾取されるカネと文化』より
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 しかし、情報の扱いは米国と日本では大きな差があるのです。
日本の場合は、行政や民間は、あまりにもクラウド・コンピュー
ティング・サービスを安易に受け入れてしまっているのです。ま
して、データセンターがどこにあるのかなどほとんど問題になっ
ていないのです。
 これは、平均的日本人がインターネットに関する知識が乏しく
ネットサービスの仕組み自体をよく理解していないケースが多い
のです。したがって、クラウドに不可欠なサーバーがユーザーの
意識の中に明確に存在していないのです。
 現代はインターネットの時代であり、非常に多くの人がネット
を日常的に使っていますが、ネット関する教育はどうなっている
のでしょうか。どこで指導を受けているのでしょうか。専門家は
別として、学校でもきちんとした指導が行われていないことは確
かなのです。         ──[メディア覇権戦争/29]


≪画像および関連情報≫
 ●屋根のない第四世代型データセンター構想/マイクロソフト
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  サーバやそれを収納するラックのことを考えた場合、最も気
  になるのはその密度。データセンター自体の面積に制限があ
  る以上、可能な限り密度を高めるべく、ブレードサーバやサ
  ーバの仮想化など、様々な方式がこれまで考えられてきまし
  た。が、それらを入れる「建物」から根本的に変えるべきだ
  とマイクロソフトは考えているらしく、なんと、屋根がなく
  工期も短いデータセンターを構想しているようです。これは
  過去30年間にわたるデータセンターの歴史において、一種
  のパラダイム的出来事であるとしています。
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屋根のないマイクロソフト社データセンター.jpg
屋根のないマイクロソフト社データセンター
posted by 平野 浩 at 04:10| Comment(0) | TrackBack(0) | メディア覇権戦争 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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