2010年09月01日

●「情報技術に弱い平均的日本人」(EJ第2889号)

 グーグルと中国政府との検索結果検閲問題についてあなたはど
のように考えるでしょうか。
 国民に対して情報の制限を行う姿勢は一党独裁の国ではありう
ることです。しかし、その一方で中国は、グーグルに負けない検
索エンジンを開発しようと努力しています。これは強い国をつく
ろうとすれば当然のことです。
 中国は「百度──バイドゥ」という検索エンジンを開発してい
ますが、これはなかなかの優れものなのだそうです。現在、億人
単位の利用者をカバーできる汎用検索エンジン制作企業としては
次の3社しかないのです。
―――――――――――――――――――――――――――――
          1.グーグル
          2.百度
          3.マイクロソフト
―――――――――――――――――――――――――――――
 グーグルは中国の政府方針に反対し、香港に移動することによ
って、事実上中国の検索市場から撤退したのですが、本音は撤退
したくなかったのです。なぜなら、1億人以上のユーザーをカバ
ーする市場での体験が今後役に立つからです。
 これによって中国の百度は、シェアを70%以上に高めながら
その精度をさらに磨き、日本や他のアジア地域への事業拡大を目
指しているのです。
 そういう姿勢は正しいのです。ヨーロッパの国々は、プラット
フォーム・レイヤーの米国支配に反発し、米国ネット企業の植民
地状態からの脱却を目指しています。
 中でもフランスは、自国の文化と伝統を大事にする国なので、
米国の支配をとくに嫌うのです。そういうわけで、フランスは、
2006年にドイツと共同で、グーグルの覇権を打破することを
目標に国産の検索エンジンを開発する「クエロ」というプロジェ
クトを立ち上げています。
 このプロジェクトは、全体資金の40%を政府、60%を民間
が拠出する方式でスタートしたのですが、その後何があったかは
知りませんが、ドイツが途中で離脱しています。しかし、プロジ
ェクト自体は現在も進んでいるといわれています。
 ところが日本にはそういう危機意識はないないようです。もっ
とも、2007年に経済産業省は、国産の検索エンジン開発プロ
ジェクトを「情報大航海PT」としてスタートさせています。し
かし、巨額な予算を食い潰すだけでまるで進んでいないのです。
おそらく事業仕分けで廃止に追い込まれると思います。
 そういうわけで、日本においては「情報データの空洞化」が一
段と進み、米国への依存度を強めています。軍事で米国へ依存す
るだけでなく、情報技術においてもほとんど完全に米国におんぶ
にだっこの状態です。
 日本では、政府でも企業──とくに大企業の、いわゆるエライ
人は情報技術やシステムについては専門家のやることだとして、
自ら真剣に勉強しようとはしない人が多いのです。したがって、
トップとエンジニアのコミュニケーションが成立しないのです。
 ある大企業のトップは、情報システム部が役員会に提出した事
案について、その内容が専門的過ぎると不満を漏らし、「オレに
わかる案を持ってこい!」と情報システム部長に対して注文をつ
けたそうです。
 コンピュータやシステムの事案は、どうしても内容が専門的に
なりやすいものですが、トップといえどもエンジニアと最低限コ
ミュニケーションが成り立つレベルの常識的な基本知識について
は、勉強しておくべきです。しかし、それができていない人が多
いのは事実です。
 政治家にもそういう人が多いです。首相に就任して以来の菅直
人氏の発言を聞いていると、ITとか、情報システムとか、ネッ
トワークとかいう言葉はいっさい聞こえてこないのです。彼は工
学部出身者ですが、現在の情報技術に関し、どれほどの知識があ
るか疑問です。何しろ鳩山首相もやったツイッターですら、彼は
やろうとはしないからです。
 どうも平均的日本人は、情報技術に弱いようです。しかし、そ
のようなことをしていると、ある日突然日本中のネットが使えな
くなり、次のようなことが起きる可能性があります。
―――――――――――――――――――――――――――――
 テレビをつけてみる。「日本国内から米政府への重大なハッキ
 ングが判明したため、米政府は日本から米本土へのアクセスを
 全面停止した模様です」──アナウンサーが繰り返し緊急ニュ
 ースの文面を読み上げていた。「今入った情報です。米政府は
 愛国者法に基づき、グーグルに日本人ユーザーのGメールデー
 タを一定期間分すべて提出するよう要請。グーグルは応じた模
 様です。         ──『週刊東洋経済』7/3より
―――――――――――――――――――――――――――――
 けっしてあり得ない話ではないのです。日本では現在いわゆる
「クラウドサービス」が大変盛況なのですが、それを支えるデー
タセンターのほとんどが日本にはなく、米国本土にあるのです。
この場合、そのデータはそのサーバーが置かれている国──米国
の法律の管理下にあります。当然のことです。
 上記のストーリーは、日本国内から米政府のシステムに重大な
ハッキングがあったということなので、米政府が業者であるグー
グルに対し、一定期間のデータの提出を米国の法律により、調べ
ることができるのです。
 クラウド・サービスについては明日のEJで述べますが、なぜ
データセンターが日本にないのかについては、理由があります。
それは、法人税や電力の価格、地価にかかるコストが高いことや
データセンターを作るには、建築基準法や消防法などのいろいろ
な法律に抵触するからです。そのため、米国のプラットフォーム
企業は日本を素通りして、シンガポールにデーターセンターを多
く作っているのです。     ──[メディア覇権戦争/28]


≪画像および関連情報≫
 ●フランスノ「クエロ」プロジェクトについて
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  シラク仏大統領は2006年4月25日、インターネットの
  新検索エンジン「クエロ」の開発など、産業革新庁の6つの
  プロジェクトを発表した。2年間で20億ユーロ(約280
  0億円)を投じる。クエロは米グーグルやヤフーに対抗、文
  字だけでなく音声や映像の膨大なコンテンツ(情報の内容)
  から欲しい情報をネットで容易に探しだせる検索エンジンを
  目指す。            ──「日経ネット」より
  ―――――――――――――――――――――――――――

データーセンターのイメージ.jpg
データーセンターのイメージ
posted by 平野 浩 at 04:08| Comment(0) | TrackBack(0) | メディア覇権戦争 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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