2010年08月25日

●「ドイツの出版界はどう対応しているか」(EJ第2884号)

 ここでドイツの動きを見てみたいと思います。なぜ、ドイツな
のかというと、ドイツは日本と同様に出版社が新刊書籍の再販売
価格を拘束できる国であるからです。
 しかし、ドイツは日本と違って、不況や少子化の影響にもかか
わらず、年々少しずつではあるが、書籍の売り上げを伸ばしてお
り、2008年は前年比で0・4%成長しているのです。
 2008年度のドイツの書籍売り上げは、約96・6億ユーロ
──1兆3137億円(1ユーロ=136円)ですが、その内訳
は次のようになっています。
―――――――――――――――――――――――――――――
 新書店/専門書店   ・・・・ 52.6%(−1.0%)
 出版社直系      ・・・・ 18.2%(+0.2%)
 古書店/その他    ・・・・  9.2%(+0.1%)
 カタログ・ネット通販 ・・・・ 14.0%(+1.4%)
 読書クラブ      ・・・・  2.9%(−1.0%)
 デパート・小売店   ・・・・  3.0%(−0.7%)
             ──「週刊東洋経済」7/3より
―――――――――――――――――――――――――――――
 この中で注目されるのは、「カタログ・ネット通販」のシェア
が14%と大きく伸びていることです。そのため、2008年に
は4400店あった書店は4000店に減少しています。
 2009年に開催された「フランクフルト書籍見本市」におい
て、世界のメディア関係者に行った調査によると、回答者の50
%が次の結論を共有していることがわかったのです。
―――――――――――――――――――――――――――――
 ≪デジタル化展開は、出版界の紙媒体をどう変えるか≫
 2018年には電子出版物の売り上げは紙の書籍を上回る。も
 はや電子書籍化は避けられないとの認識は世界の出版界を支配
 している。
―――――――――――――――――――――――――――――
 冒頭に、「出版社が新刊書籍の再販売価格を拘束できる国」と
書きましたが、ドイツは日本とはかなり制度内容が違うのです。
 ドイツでは、書籍の価格は出版社が決め、書籍は卸売りや出版
社の配本に携わる会社──取次会社を通して書店に販売されるの
です。これは日本と同じですが、書籍は書店の買い取り制であり
返品できる書籍は出版社との契約によって定められた範囲内のも
のに限られるのです。したがって、ドイツ図書流通連盟の調査に
よると、返品率は次のとおりであり、10%以下なのです。
―――――――――――――――――――――――――――――
       2005年 ・・・・・ 6.8%
       2006年 ・・・・・ 7.2%
―――――――――――――――――――――――――――――
 書籍の価格は出版社が決定するのですが、書籍価格拘束保護法
に基づき、価格の全国統一が求められているのです。この法律は
小規模書店の保護に配慮しているのです。
 ドイツでは、新刊書籍については定価で売るという価格拘束が
あるのですが、書籍価格拘束保護法によると、18ヵ月以上前に
発行された書籍の価格拘束を終了させることができるのです。
 売れ行きの良くない本や出版から相当時間が経過している本に
ついては、18ヵ月が経過していれば、書店の判断で価格を落と
して廉価本として販売できるのです。ここが日本の場合と大きく
異なる点です。
 しかし、電子書籍の波は予想よりも早くドイツに押し寄せたの
です。ドイツ連邦統計局の5月末の推定によると、アイパッドな
どのタブレット型PCは、今年50万台の売り上げを達成すると
しています。これに対してドイツ連邦政府は、電子書籍端末にお
いても紙の書籍と同様に、著作権を守り、新刊書籍の再販売価格
拘束を維持する姿勢をとっています。
 それに、ドイツ出版界では、アップルに対するアレルギーがあ
るのです。2009年11月のことですが、アップルがドイツの
週刊誌「シュターン」のアイフォーンアプリをアップストアから
突然削除したのです。その理由についてアップルは、ヌード写真
が多過ぎるため、アップルの規範に触れたといっており、事実で
あれば当然と思われる理由です。
 しかし、これに対してドイツの出版団体VZDがアップルに抗
議したのです。このことから、出版社が主体的に運営できるプラ
ットフォームが必要であるという動きが強まったのです。
 この騒ぎの中で、ベルリンに本社を置くベンチャー企業「ネオ
フォニー」のCEО、ヘルムート・ホーファー・フォン・アンカ
ースホフェン氏は、「ウィタブ」というアンドロイド端末を発表
したのです。といっても端末を売るのがメインのビジネスではな
く、電子書籍を含めて、アップルのようなビジネスを目指してい
るというのです。
 「ウィタブ」はアイパッドより少し大ぶりの端末であり、価格
は449〜569ユーロ──1ユーロ=136円とすると、3・
3万円〜7・5万円と少し高めです。
 ウィタブを使うシステムとしては、電子書籍の価格は出版社が
決定し、書籍を購入する人は、出版社から割引価格でウィタブが
購入できるプログラムが用意されています。ウィタブは2010
年9月19日からドイツでは発売される予定ですが、国外への発
売は来年以降になるといっています。
 既に人気月刊誌「ゲオ」、週刊誌「スターン」、「ガラ」を発
行する大手出版社のグルナー・ヤー、欧州最大部数の新聞ビルト
を発行するアクセル・シュプリンガー、スイスのリグニアー出版
など、代表的な出版社との提携を計画しているといいます。
 といっても、ウィタブによってアイパッドを打倒し、欧州から
駆逐することは考えておらず、新聞や雑誌をPCやスマートフォ
ンで、読みやすくするソフト「ウィマガジン」を普及させること
に重点を絞っているといわれます。果たしてドイツ人はウィタブ
を選ぶかどうか注目されます。 ──[メディア覇権戦争/23]


≪画像および関連情報≫
 ●フランクフルト書籍フェアについて
  ―――――――――――――――――――――――――――
  フランクフルト・ブックフェアは500年以上の歴史を有す
  る見本市である。15世紀半ばにヨハネス・グーテンベルク
  がマインツで活版印刷を発明したさほど経たない時期に、す
  ぐ近くのフランクフルトで地元の書籍商らによって最初の本
  の市が開かれた。この市は17世紀末までヨーロッパでもっ
  とも重要な本の見本市となってきたが、政治的・文化的要因
  により18の啓蒙時代にはライプツィヒの書籍見本市がより
  重要となり、フランクフルトの地位を奪った。第2次世界大
  戦後、1949年にパウルス教会で戦後最初の書籍見本市が
  再開された。その後、出版都市ライプツィヒが東ドイツ側に
  なったこともあり、西ドイツ側のフランクフルトがヨーロッ
  パ最大の書籍見本市の地位に返り咲いている。
                    ──ウィキペディア
  ―――――――――――――――――――――――――――

フランクフルト書籍見本市会場.jpg
フランクフルト書籍見本市会場
posted by 平野 浩 at 04:13| Comment(0) | TrackBack(0) | メディア覇権戦争 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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