きましたが、このあたりで電子書籍を定義する必要があります。
そうでないと、グーグルがこの電子書籍市場で本当は何を狙って
いるのかが明確にならないと思うからです。
8月4日のEJ第2869号でグーグルの電子書籍への取り組
みというか、訴訟と和解の繰り返しについて述べました。グーグ
ルは何を狙っているのでしょうか。アマゾンやアップルよりも早
く始めながら、明らかにその目指す方向は異なると思われるので
す。そして、訴訟によって締結された和解案とはどういう内容な
のでしょうか。この問題を究明していくと、グーグルの戦略の凄
さがわかってくると思います。
ところで、ブログにアップロードされるコンテンツは、電子書
籍でしょうか。ツイッターは電子書籍でしょうか。
ブログなんてただの個人の断片的な日記じゃないかという人が
います。ましてツイッターなどはただのつぶやきに過ぎないし、
そんなものが電子書籍であるはずがない──こういう人も少なく
はありません。
しかし、それは大きな認識違いであると思います。ツイッター
の場合は、ワンツィート140字という縛りがありますが、ブロ
グは字数の制限がないので、ブログで長文を書く人は少なくない
のです。私の場合は、メルマガのコンテンツをそのままアップし
ているだけですが、比較的長期連載になっているので、一冊の本
ぐらいの分量のあるテーマも少なくないはずです。
しかし、結論からいうと、ブログやツイッターは電子書籍とは
いえないのです。なぜなら、それらは作者の著作物ではあっても
出版物ではないからです。それにそのほとんどは無償であって、
有償のコンテンツではないということがあります。
新潮社に在籍し、同社の電子出版を手掛けたことのある弁護士
の村瀬拓男氏は、電子書籍を次のように定義しています。
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電子書籍とは、必然的にブログなどのように個人がそのまま著
作物を発表できる場ではなく、「何らかの編集行為が介在し、
出版物として有償の流通を想定して作られたもの」ということ
になります。 ──村瀬拓男著
『電子書籍の真実』より/マイコミ新書
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現在、問題になっている電子書籍は、紙の本がまずあって、そ
れをデジタル化する──つまり、同じ内容の紙の本と電子の本を
出版するというものです。定義にもあるように、電子書籍には、
「何らかの編集行為が介在」するという要件があるのです。そう
であるなら、電子書籍の特性を生かしたエディションがあっても
いいと思います。
コンテンツは紙の本と同じでも、電子書籍の特性を生かして、
音声読み取りソフトなどによる音声で聞けるバージョンや挿絵な
ども何らの工夫のできる余地がありそうです。
また、当面は紙の本は作らず、電子書籍だけという出版企画が
あっていいと思います。そのためには、電子書籍の定義というも
のをきちんと決めておくことが大切です。
もうひとつ考えてみるべきことがあります。それは「雑誌」の
電子化はどうなるのかという問題です。
既出の村瀬拓男氏は、出版市場は本だけで構成されているわけ
ではないとして、電子書籍としての雑誌について次のように述べ
ているのです。
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グーグルの和解案においては、定期刊行物すなわち雑誌は対象
から除外されていました。アメリカにおいては書籍と雑誌とは
かなり分かれていて、印刷物の流通も異なるようです。しかし
キンドルでは新聞や雑誌も書籍と同じように購入できますし、
アイパッドはやや大判のカラー端末ということもあって、グラ
フィックな雑誌コンテンツが主流になるのではないかとも言わ
れています。このように、電子書籍側では本と雑誌とを区別す
る理由はありません。そもそもデジタルデータとなっている段
階で、映像や音楽とも、コンテンツとしては共存するのですか
ら、本だけをイメージして電子書籍を論じるのは妥当ではない
ように思います。 ──村瀬拓男著の前掲書より
―――――――――――――――――――――――――――――
日本においては、多くの出版社が本と雑誌の両方を扱っており
雑誌を専業とする出版社は少ないのです。しかし、雑誌は明らか
に本とは違います。村瀬拓男氏によると、雑誌には次の3つの特
性があることを指摘しています。
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1.雑誌は一定の流通期間を想定して編集される
2.雑誌は多くの参加者によって制作されている
3.雑誌は記事単位での再編集が可能であること
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本にも出版物としての寿命はありますが、雑誌の寿命はもっと
短いのです。コンテンツにもよりますが、多くは週単位、月単位
とその流通期間は限られています。したがって、本とは同列に論
じられないのですが、そうであるからこそ、電子版だけでもいい
のではという考え方もあるのです。
一冊の本を分割して電子書籍版を作る状況は多くないですが、
雑誌の場合は記事単位で独立しており、分割して再編集すること
が可能なのです。むしろ電子化しやすいのです。誰でも考えられ
ることは、それをブログのコンテンツにするか、メルマガとして
配信することも可能です。
ただ、雑誌は複数の著者のコンテンツによって成り立っている
場合が多く、その電子化にあたってはそれらの著者の権利関係が
複雑になります。文章だけのメルマガと違って写真や図入りの文
書を送り、アイパッドなどで見ることができる現代、雑誌の電子
化は普及の可能性があります。 ──[メディア覇権戦争/20]
≪画像および関連情報≫
●株式会社クリエイシオン/高木利弘氏の「電子書籍論」より
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「電子書籍」とは、書籍のような体裁をしていて、ページを
めくりながら読書できるものと考えるべきでしょうか?「辞
書」も「地図」も、従来は「書籍」のひとつとして、書店の
書棚に並べられ、流通していました。インターネットが登場
するまでは、この仕組みがもっとも効率的な情報流通システ
ムであったからです。持ち運びやすく読みやすいからという
理由から、一定の大きさの紙を束ねた「書籍」という形状が
とられていたのです。ところが、辞書も地図も物理的な制約
から解き放たれたとたん、書籍のような体裁から自由になり
ました。(中略)「電子書籍」というのは、従来、広義の意
味における書籍、すなわち、「冊子の形をした情報パッケー
ジ」で流通していたものが、電子化によって紙という物理的
な制約から解き放たれ、ジャンルごとに別々の方向へ進化し
つつある「流動的なもの」として捉えたほうがいいのではな
いかと思われます。
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村瀬 拓男著『電子書籍の真実』


