2010年08月19日

●「本が売れない原因は流通機構にある」(EJ第2880号)

 電子書籍がなぜこれほど問題になるのでしょうか。若者の「活
字離れ」が問題視されてもう十数年経ちます。もし、これが本当
なら、電子書籍はこれほど大きな騒ぎにならないと思うのです。
 現在、書店に行くと新刊書があふれています。その中には見る
からにくだらない本もたくさんあります。新刊点数は今や年間8
万点に達する勢いです。
 しかし、新刊点数は増えているのに売上冊数は減少しているの
です。80年代は年間8億冊、ピークは、1996年の9億15
00万冊ですが、2008年には7億5000万冊まで減少して
しまっています。本一点当たりの売上は80年代と比べると、5
分の2ぐらいに減少しているのです。
 この数字を目の当たりにすると、「若者の活字離れ」論が出て
くるのですが、既出の佐々木俊尚氏は「それは間違いである」と
して、次のように述べています。
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 そもそも、若い人ほ活字離れしていません。それを示す統計が
 いくつもあります。たとえば文部科学省が2009年11月に
 発表した調査結果。図書館を使う小学生が、2007年度に借
 りた本の冊数は平均で35・9冊もあり、これは過去最高でし
 た。1995年には15・1冊しかなかったのが、その後3年
 おきの調査で25・8冊、30・5冊、33・0冊と増えて、
 2007年には35冊を超えてしまったのです。図書館の利用
 回数も、95年の3・2回から07年には6・7回にまで増え
 ています。また、全国学校図書館協議会は毎年5月に「5月中
 に読んだ本の冊数」を調査していますが、高校生が1970年
 代には平均4・5冊だったのが、2004年には7・7冊にま
 で増えています。            ──佐々木俊尚著
  『電子書籍の衝撃/本はいかに崩壊し、いかに復活するか』
                 ディスカヴァー携書048
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 今やブログや掲示板やSNSの時代です。これらのメディアが
出てくる以前の世代は、いわゆるテレビ世代であり、それこそ活
字離れはあったと思いますが、現代では「書く」と「読む」が中
心の時代なのです。
 かつてこんな話があったのです。現在巨人の監督をしている原
辰徳氏が人気絶頂の頃、テレビの番組で山岡荘八の『徳川家康』
を「読んでいる」ではなく、「聞いている」と発言したことがあ
るのです。私は偶然その番組を見ていたのですが、その発言を聞
いて「エッ」と思ったのです。
 彼は『徳川家康』の本ではなく、カセットテープを購入し、聞
いていたのです。そのとき、多くの人は時代が変わったなと思っ
たものです。ちょうど現在の原監督の前後の世代──現在50歳
〜60歳までの世代は確かに活字離れが進んでいたことは確かで
す。しかし、今の若者は違います。活字を使っての発信力が非常
に優れている世代なのです。
 前掲の佐々木氏の本によると、2008年に米国人が消費した
情報量は全体で36億テラバイトに達していて、動画やゲームが
占めるのはそのうちの55%、残りは文字情報で、毎日10万5
百語もの文字に触れ、そのうち36%を実際に読んでいるといわ
れています。今や活字離れどころか活字の時代なのです。
 それでは、なぜ本が売れないのでしょうか。
 それは若者の活字離れでも、コンテンツの問題でもなく、本の
流通構造の問題なのです。本に関わる日本の流通構造の問題につ
いては、8月5日のEJ第2870号で詳しく述べていますが、
本というコンテンツを流通させるプラットフォームが驚くほど劣
化してしまっているのです。
―――――――――――――――――――――――――――――
≪EJ第2870号/2010年8月5日≫
http://electronic-journal.seesaa.net/article/158498267.html
―――――――――――――――――――――――――――――
 それは「取次」という機構に問題があるのです。佐々木氏は取
次のビジネス機能として次の3つを上げています。
―――――――――――――――――――――――――――――
 1.本を出版社から書店に運ぶ ・・・・・・「モノ」の流通
 2.本の代金の回収と支払いという ・・・・「カネ」の流通
 3.どんな本をどの書店には配本するかという「情報」の流通
               ──佐々木俊尚氏の前掲書より
―――――――――――――――――――――――――――――
 この3つの流通のうち3番目の『「情報」の流通』がまともに
機能していない──このように佐々木氏は指摘しています。
 書店によく行く人であれば、気がつくことですが、大型書店ほ
ど、同じような本が並んでいることに気がつくはずです。取次か
ら送られてくる本は大型書店ではどこも同じになるからです。
 私の事務所に近い人形町に「ピスモ/PISMO」という書店
があります。さほど大きくない小型書店ですが、この書店は品ぞ
ろえに特徴があり、他の書店では置いていない本がたくさんある
のです。私は週に2〜3回はその書店に行きますが、品ぞろえに
は、いつも変化があるのです。
 この書店で本を見つけ、ポイントの関係でそのあと大型書店に
行くのでそこで買えばよいと思って大型書店に行くとほとんどな
いということが何回もあったのです。それ以来、ピスモで見つけ
た本は必ずピスモで買うようにしています。
 しかし、大型書店の場合は、品揃えの特色が見られない──取
次から送られてくる本は返品できるので、それを並べておけばリ
スクがないのです。しかし、中小書店の場合は配本も少ないので
本を選んで注文を出さなければならないのです。注文した本は返
品はできないので、真剣に考えて選ぶことになるわけです。
 欧米の書店は、本は書店の買い切り制になっているのです。し
たがって、無駄な本が書店に並ぶことはないのです。日本の制度
は何かがおかしいといえます。 ──[メディア覇権戦争/19]


≪画像および関連情報≫
 ●出版取次とは何か
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  出版取次とは、出版とその関連業界で、出版社と書店の間を
  つなぐ流通業者を指す言葉。単に取次とも。取次と書店との
  関係は卸売問屋と小売店の関係に当たるが、返品を前提とし
  た委託販売制度により、書店が在庫管理を考えなくて済むの
  が大きな違いである。その代り、客からすれば、すぐに棚の
  中身が入れ替わる不便を強いられる。日本の取次会社数は、
  100社あまりと推定されているが、業界団体である日本出
  版取次協会の加盟会社数は2004年現在33社である。こ
  のうち2社でシェアの70%以上を占めるといわれるトーハ
  ンと日販が二大取次と呼ばれる。また、神田に中小取次が集
  中しているが、これを通称神田村という。
                    ──ウィキペディア
  ―――――――――――――――――――――――――――

佐々木俊尚氏.jpg
佐々木 俊尚氏
posted by 平野 浩 at 04:05| Comment(0) | TrackBack(0) | メディア覇権戦争 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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