2010年08月16日

●「キンドルの画期的な4つの特色」(EJ第2877号)

 ここでもう一度電子書籍の話に戻ります。今後この分野が激変
すると思われるからです。
 電子書籍端末としていちばん最初に普及したのは、アマゾンの
「キンドル」です。
 さて、このキンドル──名前の方は有名ですが、日本語対応さ
れていないので、詳しく知る人は少ないと思います。既にアップ
ルの「アイパッド」が発売されているので、アイパッドの書籍専
用版のようなイメージを描いている人は多いと思います。
 確かにキンドルは、アイパッドと基本的には変わりありません
が、キンドルはアイパッドにない大きな特色も持っています。そ
れにキンドルの発売は2007年11月であり、アイパッドより
もかなり早いのです。キンドルは、それまでの電子書籍端末に比
べて次の4つの特色があります。
―――――――――――――――――――――――――――――
       1.PCは不要で単体で操作可能
       2.膨大な数の書籍が購入できる
       3.書籍の価格が激安であること
       4.ネットワークを意識している
―――――――――――――――――――――――――――――
 第1の特色は「PCは不要で単体で操作可能」です。
 キンドル以前の電子書籍端末はPCが不可欠なのです。なぜな
ら、PCの画面から本を購入し、そのコンテンツをUSBケーブ
ル経由で端末にコピーしてやっと読める状態になるからです。し
かし、キンドルは電源オンで表示されるメニューから「キンドル
ストアで買う」を選択し、欲しい本の「購入」ボタンをクリック
するだけでOKなのです。
 つまり、キンドルは「音声通話のできない携帯電話」というこ
とができます。3G並みの通信機能が付いているのですが、通信
代金はアマゾン持ちなので、ユーザーには請求されないのです。
したがって、どこでも本を読んだり、購入したりできるのです。
 第2の特色は「膨大な数の書籍が購入できる」です。
 キンドルでは、購入対象になる書籍(電子ブック)の数が圧倒
的に多いことが大きな特色として上げられます。スタート当初に
おいて既に9万冊、現時点では約50万冊といわれています。
 50万冊といってもピンとこない人は、巨大書店として有名な
ジュンク堂池袋本店で約150万冊であり、その3分の1に当た
りますが、その数は今後ますます増えるものと思われます。
 アップルの書籍数はせいぜい6万冊ですが、グーグルエディシ
ョンは、400万冊を超える電子書籍を有しており、この分野で
恐るべき存在になりつつあります。
 第3の特色は「書籍の価格が激安であること」です。
 米国では紙の書籍のほとんどはハードカバーで売られており、
価格は2500円前後とかなり高いのです。日本の文庫本のよう
なものは少ないのです。しかし、キンドルストアでは、ハードカ
バー本の多くが9ドル99セント(約900円)で売られていま
す。このいきさつについては、EJ第2868号では述べていま
すが、アマゾンの電子書籍は、まさに価格破壊的な安さです。
 どうしてこんなに安いのでしょうか。
 実はアマゾンはハードカバーの紙の書籍を約13ドルの卸値で
仕入れているのですが、電子書籍にもこの価格を適用しているの
です。そうすると、13ドルで仕入れて10ドルで売るので、電
子書籍が一冊売れるごとにアマゾンは3ドルずつ損をしているこ
とになります。
 なぜ、こんなばかなことをやっているのでしょうか。
 それがアマゾンの電子書籍戦略なのです。アマゾンとしては先
行の利を生かして、電子書籍のプラットフォームを独占したいの
で、損を承知でやっているのです。
 第4は「ネットワークを意識している」です。
 キンドルストアから本を購入すると、それは指定するデバイス
──PCやアイフォーンなど──にも表示されます。少し難しく
いうと、デバイス間の同期が自動的に行われるのです。
 これについて、フリージャーナリストの佐々木俊尚氏は次のよ
うに述べています。佐々木氏は、既にキンドルを使って電子書籍
を読んでいます。
―――――――――――――――――――――――――――――
 たとえばある日、キンドルのリーダー上である本を34ページ
 から45ページまで読み進めたとしましょう。次に同じ本をパ
 ソコンのアプリで開いて見た時には、ちゃんと45ページが表
 示されています。パソコンでさらに54ページまで読み進めれ
 ば、次にキンドルリーダーで開くとちゃんと54ページが表示
 されます。つまり「どこまで読んだか」という情報もすべての
 デバイス間で同期してくれるのです。   ──佐々木俊尚著
  『電子書籍の衝撃/本はいかに崩壊し、いかに復活するか』
                 ディスカヴァー携書048
―――――――――――――――――――――――――――――
 以上がキンドルの特徴ですが、キンドルのハードウェアについ
ても述べておきます。最新の「キンドル2」は、重量は300グ
ラム以下であり、普通のPCの3分の1程度の大きさで、価格は
259ドル(約23000円)です。
 画面は液晶ではなく、「イーインク」という企業が生産してい
る電子ペーパーであり、白黒です。バックライトはないので、暗
いところでは読めません。
 電子ペーパーの問題点は動作が若干遅いことですが、画面を切
り替えない限り、電池はほとんど減らないのです。フル充電して
おき、かなり良く使うと2日、何もしないで放置しても一週間は
十分持ちます。なお、キンドルにはキーボードが付いています。
キンドルはPCとUSBケーブルで接続することができます。
 なお、無線LANには対応していないのです。これは不思議な
話です。おそらく新機種(キンドル3)からは対応すると思われ
ます。            ──[メディア覇権戦争/16]


≪画像および関連情報≫
 ●「イーインク」とは何か
  ―――――――――――――――――――――――――――
  米マサチューセッツ州のベンチャー企業が開発した超薄型デ
  ィスプレイの名称。企業名や商標にもなっている。2002
  年6月に発表された。「電子ペーパー」と呼ばれる技術の一
  種で、薄く軽量で紙のように折り曲げることができる表示装
  置である。表示方式はマイクロカプセル型電気泳動方式と呼
  ばれるもので、基材面に多数の小さい透明なカプセルをコー
  ティングし、カプセル内の帯電した白と黒の粒子に電圧をか
  け、電圧の強弱でグレースケール表示を行っている。紙に印
  刷した文字と同じく、外部からの光を反射して表示を行う反
  射型の表示法で、180度近い視野角があるとされる。また
  一度表示した画像の保持には電力が不要なため、消費電力が
  少ない利点ももつ。電子ブックや、デジタル時計、交通機関
  の表示板などへの応用が期待されている。
  ―――――――――――――――――――――――――――

アマゾン/キンドル.jpg
アマゾン/キンドル
posted by 平野 浩 at 04:11| Comment(0) | TrackBack(0) | メディア覇権戦争 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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