2010年08月13日

●「ネットビジネスを本格化させるテレビ局」(EJ第2876号)

 書籍、雑誌、新聞のデジタル化の現状について述べてきました
が、テレビはどうなるのでしょうか。『週刊東洋経済』7/3号
を参考にしながら考えていくことにします。
 実は雑誌、新聞と同様に、テレビ広告はまるでつるべ落としの
ように減少していたのです。それは2005年から2009年ま
で5年連続で前年割れが続いていたのです。
 テレビ広告には、大別すると次の2つがあります。これがテレ
ビ局の収益の2本柱なのです。
―――――――――――――――――――――――――――――
   1.スポット ・・・ 番組と番組の間に流すCM
   2. タイム ・・・ 番組スポンサーになる広告
―――――――――――――――――――――――――――――
 スポットとは、番組と番組の間の時間(ステーション・ブレイ
クと呼ぶ)に流すCMのことです。番組と連動しない単発売りの
CMがスポットです。
 これに対して、タイムとは、時間売りの番組提供のことです。
「この番組は××、○○、△△の提供でお送りしました」と名前
を出すスポンサー企業が局に支払う金額がタイムなのです。
 このうち、スポットについては、さまざまなクライアントが入
れ替わりますが、タイムについては、3ヵ月〜1年の長期契約に
なるので、固定的なスポンサーがつき、局側にとっては安定的な
収入源になっています。
 このうち、スポットについては、2009年までは続落してい
たのですが、東京地区に関しては2009年2月から上昇に転じ
たのです。これについては、添付ファイルのグラフを見ていただ
きたいと思います。
 しかし、タイムに関しては、景気の先行きが不透明な現況では
戻っていないのです。これについてキー局の首脳は、「タイムの
回復には2〜3年かかる」といっています。
 一方、東京のキー局5社──フジテレビ、日本テレビ、TBS
テレビ朝日、テレビ東京──については、顕著な業績の改善が行
われています。2008年度については全社減益でしたが、20
09年度については、日本テレビ、テレビ朝日、テレビ東京の3
社が増益を確保しています。番組制作費などの大幅削減や見直し
が行われたからです。
 業績面での落ち込みを何とか食い止めたテレビ局は、ネットに
対する戦略の見直しを行ったのです。これまでテレビ局は、ネッ
トを視聴者や広告を奪う「敵」と考えていたのですが、その考え
方を改め、積極的にインターネットの分野へ本格的な進出をはじ
めたのです。その動きをメモしてみます。
―――――――――――――――――――――――――――――
 ・2008年
    11月:「フジテレビオンデマンド」で地上波番組の配
        信サービスを開始
    12月:「NHKオンデマンド」開始
 ・2009年
     4月:「TBSオンデマンド」で地上波で放送した連
        続ドラマなどの配信を開始
     6月:「テレ朝動画」で地上波ドラマなどの配信開始
     9月:フジテレビ、日本テレビがヤフー傘下の映像配
        信会社のギャオに出資
       :TBS、テレビ朝日がユーチューブに公式チャ
        ンネルを開設
 ・2010年
     3月:テレビ朝日、TBS、テレビ東京ギャオに出資
     4月:テレビ東京ユーチューブに公式チャンネル開設
     5月:TBSは地上波とユーストリームを連動させた
        生放送の情報番組「革命×テレビ」を開始
             ──『週刊東洋経済』7/3号より
―――――――――――――――――――――――――――――
 実は2005年に動きがあったのです。日本テレビは、動画配
信サイト「第2日本テレビ」を立ち上げているのです。ここでは
地上波での人気番組「電波少年」などをネットに配信したのです
が、テレビと同じ無料の広告モデルをネットで行ったのです。し
かし、番組スポンサーはトヨタ自動車やKDDIなど16社が名
前を連ねているのです。
 第2日本テレビを運営している日テレ編集局の土屋敏男エクゼ
クティブディレクターは次のように述べています。
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 テレビに固執していても先細りになるだけ。多メディア化は大
 きなチャンス。様子見している段階ではなく、自分たちで積極
 的に仕掛けて新しいモデルを作っていく時代に入っている。
             ──『週刊東洋経済』7/3号より
―――――――――――――――――――――――――――――
 日本テレビが目指しているのは、あくまで心を動かす作品を作
るコンテンツメーカーであり、アップルのようなプラットフォー
ムを持つつもりはないのです。
 当面ターゲットになったのは、ヤフー傘下の映像配信会社であ
るギャオ(Gyao)とユーチューブです。ギャオへの出資は、
東京キー局5社全部が行っているし、ユーチューブに関しては、
第2日本テレビを持つ日本テレビをのぞく4つのキー局すべてが
公式チャンネルを開設しているのです。
 昨年から今年にかけてテレビ局には、大きな地殻変動が起きて
いるようです。テレビとネットとの融合です。具体的には、既に
スタートしている地上波番組のネット配信がそれです。
 ネットの良い点は情報の即時性とコミュニティができる点にあ
ります。世界から生で発信されるネットの映像にテレビのノウハ
ウが加わることによって、今までにないクオリティの高い映像配
信が行われることが期待できます。
               ──[メディア覇権戦争/15]


≪画像および関連情報≫
 ●日本民間放送連盟会長/広瀬道貞氏の話
  ―――――――――――――――――――――――――――
  (テレビとは敵対しないのかの質問に)そう。今はビデオ・
  オンデマンドが先行しているが、これはパソコンでの通信の
  話。地上波をアイパッドで受信できるようになるのは時間の
  問題。テレビは家で見るものだと思うが、持って回れれば便
  利なことは問違いない。CMも見てもらえるだろう。問題は
  それ以上の価値を付けられるかどうか。テレビを見られる端
  末が増え、テレビの影響力が今より大きくなっても、それを
  理由に広告料がすぐに上がるとは思わない。独自の展開を考
  える必要がある。   ──広瀬道貞日本民間放送連盟会長
  ―――――――――――――――――――――――――――
 ●グラフ出典/『週刊東洋経済』7/3号より

東京地区スポット出稿額の前年同月比推移.jpg
東京地区スポット出稿額の前年同月比推移
posted by 平野 浩 at 04:15| Comment(1) | TrackBack(0) | メディア覇権戦争 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
いつも参考にしております。
また遊びにきます。
ありがとうございます。
Posted by 履歴書の添え状 at 2010年08月15日 16:14
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