2010年08月10日

●「産経、毎日、読売の業績とネット対応」(EJ第2873号)

 産経新聞は、2008年12月にアイフォーン上で新聞紙面を
無料で読めるサービス──『産経ネットビュー』を開始して話題
になっています。今まで産経新聞を読んでいなかった私は、この
サービスを利用して産経新聞を読み始め、残しておきたい記事が
あるときは、紙の産経新聞を買うようにしています。
 実は産経新聞は、PC上で新聞がそのまま見られる『産経ネッ
トビュー』を2005年からはじめていたのです。しかし、こち
らは有料で月額315円です。アイフォーンの無料版とどこが違
うのかというと、PC版は一週間分が読めるのに対し、アイフォ
ーン版はその日の新聞しか読めないことぐらい──しかし、タダ
の威力は大きく、PC版をやめてアイフォーン版に切り替えた人
は少なくないはずです。
 ところが、産経新聞はアイパッドが発売されると、高精細版と
称して有料にしたのです。問題はその価格なのです。「30日ご
とに1500円」──アイパッドで産経新聞を無料で読もうとし
ていた人はがっかりでしょう。どうしてこの新聞社は、このよう
に価格の振幅が大きいのでしょうか。
 これにはいろいろな説があります。産経新聞は当初700円に
しようと考えていたのですが、他の大手新聞幹部から安売りしな
いよう圧力がかかったというもの。もっともこれについて、産経
デジタルの近藤哲司社長は「自社で決めたもの」としています。
 しかし、産経新聞の発行部数は次のように減少する一方なので
す。この数値は、毎年の4月実績です。
―――――――――――――――――――――――――――――
  ≪産経新聞発行部数≫
    2008年    2009年    2010年
  2220762  1889069  1675744
―――――――――――――――――――――――――――――
 上の数値の2010年4月は167万5744部ですが、5月
は161万0241部と1ヵ月で65503部も減少してしまっ
ており、同新聞社の先行きに不安が広がっています。
 次は、産経新聞と同様に部数減少が顕著で心配されている毎日
新聞の対応です。
―――――――――――――――――――――――――――――
  ≪毎日新聞発行部数≫
    2008年    2009年    2010年
  3900544  3830582  3028656
―――――――――――――――――――――――――――――
 普通の新聞社は「新聞の情報をネットへ」という流れを作ろう
としていますが、毎日新聞社の場合、逆に「ネットの情報を新聞
へ」流そうとしているのです。それが「毎日RT」です。
 毎日新聞社はかねてからネットには力を入れており、同社の総
合ニュースサイト「毎日JP」には、ツイッターを組み込み、読
者の声を生かす工夫をしています。
 この「毎日JP」でよく読まれた記事をピックアップして、ツ
イッターによる読者の声を合わせて、タブロイド判の紙面に掲載
し、「毎日RT」として販売しているのです。ターゲットは、若
い層であり、毎日新聞にとってシェアの低い首都圏の新しい読者
を開拓するのが狙いです。月額1980円で販売は東京都、神奈
川県、千葉県、埼玉県であり、駅売りなどはしておらず、毎日新
聞の販売店から毎朝配達されるのです。しかし、そういう努力に
もかかわらず、2009年からの1年間で80万部が減少してい
るのです。
 それでは読売新聞はどうでしょうか。
 読売新聞は王者だけあって、1000万部以上の部数を維持し
ており、その結果、経営は安定しているといえます。2010年
3月期の経常利益は前期比55%増の127億5400万円にな
っています。巨人優勝も大きく貢献しています。
―――――――――――――――――――――――――――――
 ≪読売新聞発行部数≫
    2008年     2009年    2010年
 10020392  10020688 10010724
―――――――――――――――――――――――――――――
 その余裕のせいか、同社の掲げる目標の中にはデジタル戦略の
記述はないのです。ネット事業としては、医療情報サービス「ヨ
ミドクター」記事の一部を有料化して販売している程度です。料
金は月額420円、読売新聞購読者は210円です。
 読売新聞の総帥、渡邊恒雄会長は、2009年合同新春所長会
議において次のように述べて、日本の新聞事業について自信を示
しているのです。そこにはネットの「ネ」の字もないのです。
―――――――――――――――――――――――――――――
 欧米の新聞は収入の八割を広告に依存しており、半分になった
 らもう経営できない。戸別配達の割合が少ないので販売収入も
 安定しない。日本は広告依存度が三割程度で、完全戸別配達網
 が確立されているおかげで収入は安定している。
 必要はない。   ──河内孝著『次に来るメディアは何か』
                    ちくま新書/826
―――――――――――――――――――――――――――――
 実際に渡邊会長にネットの可能性について聞いてみると、次の
返事が返ってきたというのです。
―――――――――――――――――――――――――――――
 IT企業の社長も毎日、新聞を読んで情報を仕入れている。こ
 れからも紙の新聞が揺らぐことはない。    ──渡邊会長
―――――――――――――――――――――――――――――
 要するに、渡邊会長の言いたいことは、「紙の新聞に影響を与
えるようなデジタルビジネスはやらない」ということなのです。
毎年1000万部以上の実績が自信の裏付けになっているようで
すが、この3年間の数字は何とかやっと1000万部を維持して
いるようにも見えることから、そこに相当の無理があるとも考え
られています。        ──[メディア覇権戦争/12]


≪画像および関連情報≫
 ●『毎日RT』は中立を保てるか
  ―――――――――――――――――――――――――――
  実はその『毎日RT』は普通の新聞ではない。なんとニュー
  スや時事問題に関する皆の意見が取り上げられるそうだ。ど
  のように?そこが目玉ですね。つまり毎日新聞のニュースサ
  イト「毎日JP」のニュース記事についてのツイッターによ
  るつぶやき(意見、コメント、批評)などがニュースと共に
  掲載されるという。
        http://www.amamoba.com/pc/mainichi-rt.html
  ―――――――――――――――――――――――――――

ツイッターの記事も見える毎日RT.jpg
ツイッターの記事も見える毎日RT
posted by 平野 浩 at 01:00| Comment(0) | TrackBack(0) | メディア覇権戦争 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前: [必須入力]

メールアドレス: [必須入力]

ホームページアドレス:

コメント: [必須入力]


この記事へのトラックバック
×

この広告は90日以上新しい記事の投稿がないブログに表示されております。