2010年08月09日

●「有料の日経電子版は成功するか」(EJ第2872号)

 実はEJでは、電子書籍をテーマに取り上げたことが一度ある
のです。2004年4月のことです。
―――――――――――――――――――――――――――――
   EJ第1335号/2004年4月20日付 〜
   EJ第1344号/2004年5月07日付
―――――――――――――――――――――――――――――
 2004年というと、ウインドウズに対応したiPodが発売
された2年後なのです。iPodは爆発的に売れて、それまでの
МDプレーヤーを駆逐しつつあったのです。
 そしてiPodは、ケータイとともに常時携帯して持ち歩く電
子機器のひとつとして定着しつつあったのです。そのため、まだ
ディスプレーは小さいものの、ケータイやiPodなどのディス
プレーを利用して書籍を読ませる試みが少しはじまっており、電
子書籍が注目されていたのです。
 そこで、EJで10回にわたって取り上げたのです。しかし、
そのときはいろいろな情報を集めてみても、電子書籍が果たして
実現性のあるものかどうか実感が持てなかったのは事実です。
 それから6年後の現在、今回は明らかに雰囲気が当時とはぜん
ぜん違うのです。電子書籍について調べれば調べるほど、それは
明日からでも起こることのように思えてくるのです。
 フリージャーナリストの佐々木俊尚氏の本にこんなことが書い
てありました。ひと昔前はインターネット・メールのことを郵便
メールと間違えないよう「Eメール」と呼ぶのが一般的でしたが
今や「メール」といえば昔のEメールを意味します。なぜなら、
郵便メールよりもEメールの方が、はるかに多く使われるように
なったからです。
 電子書籍も最初は「Eブック(電子ブック)」などと呼ばれる
でしょうが、そのうちEが取れて「ブック」になってしまうとい
うわけです。今は「本」といえば紙の本ですが、そのうち「本」
は電子書籍を指すようになるというわけです。驚くべき変化の時
代であるということができます。
 ところで、新聞・雑誌の世界でとんでもないことが起きつつあ
ります。6月1日──ソフトバンクは、自社の携帯電話、アイフ
ォーン、アイパッド向けに定額コンテンツサービス『ビューン』
を開始したのです。
 『ビューン』とは、どういうサービスでしょうか。
 携帯電話では月315円、アイフォーンは30日ごとに350
円、アイパッドは30日ごとに450円を支払うと、『エコノミ
スト』、『AERA』をはじめ、雑誌21誌を発売初日から一部
分ではあるが、読めるというものです。当初は一部分であるが、
しだいに全部読めるようになるそうです。
 なお、毎日新聞、西日本新聞、スポーツニッポンの記事も読め
るのです。これら3社からは、それぞれ20本以上の記事が提供
されるのですが、アイパッド版については、きれいに見えるよう
に、写真を中心とする特別編集版を作って届けるようにするとい
うことです。紙の新聞とは異なる体裁にすることにより、紙との
競合を避けようとしているのです。
 現在、欧米の新聞社がいちばん頭を悩ましているのは、有料課
金モデル──ネットからいかに適正な収入を得るかなのです。こ
れは非常に難しいことですが、いくつかの有力紙でその試みは始
まっています。
 既に有料課金モデルを成功させている米ウォール・ストリート
・ジャナル──WSJを傘下に収めたメディア王と呼ばれるネパ
ート・マードック氏は次のように宣言しています。
―――――――――――――――――――――――――――――
    傘下の新聞のウェブサイトを速やかに有料化する
          ──『週刊東洋経済』7/3号より
―――――――――――――――――――――――――――――
 このマードック氏の宣言を受けて、英国ではネット有料化の実
験ともいうべきことが始まっているのですが、これについては改
めて述べることとして、すでに有料化モデルをスタートさせてい
る日本経済新聞の取り組みをご紹介します。
 日本経済新聞社は、今まで無料であった「日経ネット」を全面
改装して電子版をスタートさせたのです。2010年3月のこと
です。これに先立ち次の3つの登録を求めたのです。
―――――――――――――――――――――――――――――
       1.無料
       2.日経ID登録を行う無料会員
       3.有料会員
―――――――――――――――――――――――――――――
 開始一ヵ月で全登録者数は30万人、そのうち有料会員は6万
人を超えたのです。この滑り出しは上々で、サービス開始初年度
の目標10万人の達成は間違いないと思われます。
 日経電子版の購読料は月4000円、紙の新聞と併読する「日
経Wプラン」の場合、5283円なのです。電子版の記事内容は
紙の新聞の内容に加えて電子版独自の記事を加えるなど、紙の新
聞とは異なる編集をしています。
 しかし、日本経済新聞によると、当初想定していなかったこと
が起きているそうです。それは日経の紙の新聞の読者が、電子版
のみを契約し、紙の契約をやめる人が想定以上に多かったことこ
とです。とくに日本経済新聞と朝日新聞を併読している読者が、
紙の日経を日経電子版の単独契約にするケースが多いといわれて
いるのです。
 さらに日経が考えていることは、日経電子版のシステムを「プ
ラットフォーム」として他の新聞社も利用できるように開放して
いくことです。これがうまくいくと、「紙の朝日+日経電子版」
と「紙の読売+日経電子版」、「紙の毎日+日経電子版」などの
購読者を増やしていく戦略なのです。このように、日経はプラッ
トフォームの覇権を目指しているのです。
              ──[メディア覇権戦争/11]


≪画像および関連情報≫
 ●『ビューン』のサーバー初日にダウン
  ―――――――――――――――――――――――――――
  ソフトバンクグループの「ビューン」(本社・東京)が6月
  1日に始めた雑誌などのコンテンツ配信サービスは、初日に
  つまずいた。午前0時に始まった配信は約5分でストップし
  た。コンテンツを送り出すサーバーが大量のアクセスに対応
  できず、パンクしたからだ。その後、1カ月余りの間、サー
  バーの増強やソフトウエアの改修が終わるまで、サービスは
  停止した。ビューンのサービスは、米アップルの多機能端末
  「iPad」やスマートフォン「iPhone」などに、講
  談社、小学館、朝日新聞出版、毎日新聞社など13社、31
  媒体の記事、写真を月額315〜450円で配信するもの。
  新聞は紙の新聞とは違う特別編集版だが、雑誌は主要記事が
  誌面レイアウトのままで読める。
http://www.asahi.com/digital/internet/TKY201008060245.html
  ―――――――――――――――――――――――――――

「ビューン」を発表する孫社長.jpg
「ビューン」を発表する孫社長
posted by 平野 浩 at 04:17| Comment(0) | TrackBack(0) | メディア覇権戦争 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前: [必須入力]

メールアドレス: [必須入力]

ホームページアドレス:

コメント: [必須入力]


この記事へのトラックバック
×

この広告は90日以上新しい記事の投稿がないブログに表示されております。