えています。
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◎ドコモとDNP、電子書籍サービスを秋から提供、紙と電子
のハイブリット型
NTTドコモ(山田隆持社長)と大日本印刷(DNP、北島義
俊社長)は、8月4日、携帯端末向けの電子出版ビジネスでの
業務提携を発表した。コンテンツ収集から配信、電子書店の運
営までを一貫して手がける電子出版サービスを、今秋から提供
する。 ──2010年8月4日付、アサヒコムより
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これに先立つ5月27日──アップルのアイパッドの発売前日
に、ソニー、KDDI、朝日新聞社、凸版印刷の4社は記者会見
を開き、次の発表をしたのです。
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ソニー、KDDI、朝日新聞社、凸版印刷の4社は7月1日付
で電子書籍配信の企画会社を作り、年内には事業を開始する。
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これら4社のそれぞれの役割について考えてみると、次のよう
になります。
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ソニー ・・・・・ 読書端末
KDDI ・・・・・ 課金プラットフォーム
朝日新聞社 ・・・・・ コンテンツ
凸版印刷 ・・・・・ ?
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ところで、凸版印刷の役割は何でしょうか。
電子書籍の場合は、印刷をしないので、印刷会社は必要ないよ
うに思えるのですが、4社が揃った会見では、凸版印刷が一番や
る気満々だったというのです。
紙の書籍づくりにおいて、出版社と印刷会社はこれまで一体と
なって、というよりも、まるで一つの会社のようにやってきたの
です。版下作成時におけるコンピュータの活用やDTP──デス
クトップパブリッシングなどの技術革新が必要になるたびに出版
社と印刷会社は手を取り合ってそれをクリアしてきた実績がある
のです。したがって、出版社が何かの新事業を行う場合、最も抵
抗なく組める相手が印刷会社なのです。
既に紙の書籍として発刊済みの書籍を電子書籍にする場合、一
番必要になるのは、出版社の赤字校正を反映させた印刷用のデジ
タルデータ──これを「最終版」という──これが一番必要にな
るのです。
問題は、この最終版をどこが持っているかです。本来最終版は
出版社のものなのですが、実際には最終版は印刷会社が持ってい
るケースがほとんどなのです。つまり、出版社は最終版を印刷会
社に預けたままにしているのです。
実はこれに足止めをされて困っているのがアマゾンなのです。
というより、半ばあきれ顔なのです。なぜなら、出版社と電子書
籍の販売の話をしても、肝心のデータがなければ話が先に進まな
いからです。アマゾンの日本法人は次のようにいっています。
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校正などをすべて終えた最終版のデータを、速やかに印刷会社
からもらうようにしてください。その前提がなければ、キンド
ルでの販売はできません。──『週刊東洋経済』7/3号より
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実は日本においては、電子書籍の配信を行う最もよいポジショ
ンを占めているは印刷会社なのです。実際に日本の代表的な印刷
会社である大日本印刷と凸版印刷は、既に電子書籍の配信事業を
やってきているからです。
大日本印刷と凸版印刷は、1999〜2000年に主要な出版
社との提携によって、「電子書籍取次」を開始しているのです。
その電子書籍取次のための会社として大日本印刷は「モバイルブ
ック・ジェービ−」、凸版印刷は「ビットウェイ」を有している
のです。2010年5月末時点の書籍タイトル数は、次のように
なっています。
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モバイルブック・ジェービ− ・・・・・・ 約5.3 万冊
ビットウェイ ・・・・・・ 約4.0 万冊
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印刷会社としては、こういう電子書籍取次としてのノウハウを
今度新設する企画会社に提供していくという考え方です。これに
ついて、大日本印刷の常務取締役・森野鉄治氏は次のように述べ
ています。
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モバイルブック・ジェービーで電子書籍配信を行っているのに
加え、書店(丸善、ジュンク堂、文教堂)、出版社(主婦の友
社など)に出資することによって、総合的な「出版プラットフ
ォーム」の研究を進めている。見込み生産で40%もの返本率
がある出版社の経営はこのままでは厳しいし、書店もこれまで
どおりの売り方では立ち行かない。かといって、アマゾシのよ
うなネット販売や電子書籍にすべてを奪われるわけでもない。
知恵を絞れば、出版社、書店の利益を伸ばし、読者にも喜んで
もらえるような解決策が見つかるはずだ。
──『週刊東洋経済』7/3号より
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印刷会社は、従来の紙の書籍に加えて、電子書籍の両方を提案
できる立場に立っており、今後大活躍しそうです。そういう意味
で、印刷会社は旧大陸に住んで動こうとしない老舗出版社をグー
グル、アマゾン、アップルなどが猛威を振るう新大陸にいざなう
役割を演ずるという意味でのキープレイヤーになることは確かな
ようです。 ──[メディア覇権戦争/10]
≪画像および関連情報≫
●斜陽NEWS●10/07/02より 本コレ!
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出版取次大手のトーハン(近藤敏貴社長)は7月1日、電子
書籍の取次ぎサービスを年内にも開始すると発表。これまで
のリアル書籍に加えて、電子書籍の分野にも進出することに
なった。電子書籍の普及で「中抜き」が懸念されている取次
ぎ会社が、こうしたサービスを始めるのは相当な危機感があ
る現れだ。トーハンが始めるサービスは、出版社から書籍の
電子データを預かり、電子書籍端末や携帯電話、パソコンな
ど、それぞれの形式に加工したうえで、アマゾン、アップル
のような電子書籍配信会社に送付。配信会社からの集金や著
作権の管理なども代行するというもの。また、オンライン書
店「eーhon」を通じて電子書籍を販売し、出版社と書店
を電子書籍ビジネスにおいてサポートするという。現在、配
信会社は100社を超えているが、より出版社に近い位置に
ある取次ぎ会社がこのようなサービスを開始することで、リ
アル書籍市場がどうなるか注目される。
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ドコモ・大日本印刷提携