2010年08月04日

●「グーグルの電子書籍戦略」(EJ第2869号)

 電子書籍ビジネスは、アマゾンを中心に展開されてきましたが
アップルがアイパッドを投入したことによって、アマゾン対アッ
プルの対立が生まれています。そして、アマゾンに嫌気した出版
社がアップルに擦り寄っているというのが現在の構図です。
 ところで、新大陸の雄であるグーグルは電子書籍に対して何を
しようとしているのでしょうか。
 実はグーグルこそ電子書籍にいちばん早く取り組んだ企業なの
です。それは、2004年12月にグーグルが、スタンフォード
大学やハーバード大学などで、書籍のスキャン作業を開始したと
きから始まったのです。
 グーグルのこの動きをついて、米国大学出版会はグーグルに対
して質問状を送り、その意図を確かめています。2005年5月
のことです。この質問状を受けて、グーグルはスキャン作業を一
時停止し、各出版社に対し、次のメッセージを送ったのです。
―――――――――――――――――――――――――――――
 スキャンした書籍データを公開するので、著作権内の作品で
 スキャンから外されるべきものを11月までに申し出ること
―――――――――――――――――――――――――――――
 これに対し、米国出版協会と米国作家協会がグーグルを訴えた
のです。2005年10月のことです。
 この訴訟の決着がついたのは、2008年10月になってから
です。米国出版協会と米国作家協会とグーグルは、和解案に到達
したのです。
 11月にこの和解案は、連邦地裁の仮承認を得たのですが、そ
の和解案に対し、抗議が持ち上がったのです。2009年9月に
なって、連邦司法省と米国著作権局が、和解案に対する異議を表
明したのです。
 実はグーグルがスキャンした書籍データの中には日本書籍も含
まれていたのです。そのため日本の作家、出版社も当事者になっ
たのです。しかし、グーグルサイドが日本については当面対象か
ら外す方向が示され、一段落しているのです。
 こうして、和解修正案が作られ、それに対して2009年11
月に連邦司法省と米国著作権局から仮承認が得られたのです。し
かし、2010年2月に、この和解修正案に対して、今度は米国
司法省が異議を表明して連邦地裁で公聴会が開かれています。こ
のようにもめにもめたのです。
 この6年以上にわたる訴訟の積み重ねを経てグーグルは、今年
の夏から「グーグルエディションズ」をスタートさせるといわれ
ているのです。そのスタート当初に品揃えができる書籍の数は、
出版社からライセンスを受けた200万冊に加えて、既に著作権
切れの書籍を含めると400万冊にもなるのです。
―――――――――――――――――――――――――――――
    グーグル ・・・・・・・・・・ 400万冊
    アマゾン ・・・・・・・・・・  50万冊
    アップル ・・・・・・・・・・   6万冊
       ──「週刊エコノミスト」6/1特大号
―――――――――――――――――――――――――――――
 どうやらグーグルと、アマゾンやアップルの電子書籍に関する
アプローチには大きな差があるのです。現在のところわかってい
る、グーグルの独自性について、基本的な点をまとめると次の3
つになります。
―――――――――――――――――――――――――――――
  1.電子書籍を購入してもダウンロードできない
  2.専用端末はなく、どのデバイスでも見られる
  3.書籍価格については出版社が決定権を有する
―――――――――――――――――――――――――――――
 第1の「電子書籍を購入してもダウンロードできない」につい
ては、グーグルの場合、アクセスはウェブブラウザに限定される
からです。つまり、ネットに接続して見るわけです。これが、ア
マゾンやアップルと根本的に異なる点です。
 問題はオフラインで読むときはどうするのかということです。
これについては、現在のところ明らかになっていませんが、何ら
かの処置が講ぜられるはずです。
 第2の「専用端末はなく、どのデバイスでも見られる」につい
ては、グーグルの電子ストアでは、特定の端末に依存しないので
す。特定の端末を使わず、携帯電話、スマートフォン、PCなど
あらゆるデバイスで書籍を見ることができるのです。
 第3の「書籍価格については出版社が決定権を有する」につい
ては、グーグル自体は明らかにしていませんが、そういう方針で
臨むことを検討しているということです。
 グーグルでは、出版社から電子書籍の提供を受けて販売するだ
けではなく、他のオンライン書店への取次も行う方針であるとの
ことです。ライバルのバーンズ・アンド・ノーブルやアマゾンに
も、希望すれば卸すとしています。
 米メディア各社によると、出版社に価格決定権を与えて、出版
社とグーグルの取り分を次のようにするということです。
―――――――――――――――――――――――――――――
    ≪自社販売≫
     出版社  ・・・・・・・・・・ 63%
     グーグル ・・・・・・・・・・ 37%
    ≪取  次≫
     出版社  ・・・・・・・・・・ 45%
     書 店  ・・・・・・・・・・ 55%
―――――――――――――――――――――――――――――
 注目すべきことは、取次についてはグーグルはマージンをとら
ず、それをオンライン書店側の取り分にしていることです。これ
なら書店側は歓迎し、グーグルに取次を依頼する出版社も出てく
ると思われます。このように、これからはじまるグーグルの電子
書籍戦略は、アマゾン、アップルとは根本的にアプローチのしか
たが異なるのです。     ──[メディア覇権戦争/08]


≪画像および関連情報≫
 ●グーグル、電子書籍販売に参入へ
  ―――――――――――――――――――――――――――
  グーグルが早ければこの夏にも電子書籍の販売事業に乗り
  出すと米ウォールストリート・ジャーナルが報じている。
  5月4日にニューヨークで開催された出版業界誌主催の討
  論会に出席したグーグルの戦略パートナー開発担当マネジ
  ャーが、その具体的なスケジュールを明らかにした。同社
  はこれまで、電子書籍のオンライン配信についてビジョンは
  語っていたもののその内容については発表してこなかった。
  現時点ではまだ不明な点があるが、ようやく概要が明らかに
  されたというわけだ。「グーグル・エディションズ」と呼ぶ
  この新サービスでは、ユーザーは同社の書籍検索・閲覧サー
  ビス「グーグル・ブック・サーチ」で探した書籍のデジタル
  コピーを購入できるようになる。
         http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/3428
  ―――――――――――――――――――――――――――

東京国際ブックフェア/グーグル・ブース.jpg
東京国際ブックフェア/グーグル・ブース
posted by 平野 浩 at 04:10| Comment(0) | TrackBack(0) | メディア覇権戦争 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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