電子書籍市場で主導権をとってきています。しかし、いずれアッ
プルが参入してくることをアマゾンは読んでいたので、それまで
にこの市場の価格決定権を掴んで優位に立とうと考えたのです。
しかし、かなり強引なやり方もしたので、出版社からは相当の反
発を買っていたのです。
そしてそのアップルは、2010年1月27日にアイパッドを
発表したのです。発売は4月3日ですが、既にアップルが出版社
との交渉を2009年12月頃からやっていることはアマゾンは
情報を入手していたのです。
アマゾンは、電子書籍の販売価格を99.99 ドルに設定し、
どの競合書店よりも安く販売する出版社には、販売価格の70%
を印税として支払うという提案をしたのです。アマゾンとしては
この70%プランで出版社を囲い込み、安売り戦略でアップルの
アイパッドの出鼻をくじこうとしたのです。
このアマゾンの安売り戦略に対して真っ向から反旗を翻す出版
社があらわれたのです。それが米出版大手のマクミランです。マ
クミランはアマゾンに対し、次の要求をしたのです。2010年
1月28日のことです。
―――――――――――――――――――――――――――――
12.99 ドル〜14.99 ドルの価格帯でキンドル向け電子
書籍を販売したい。もし、了承しないときは、新刊書のキンド
ル版の提供をハードカバー発売から数カ月遅らせる
―――――――――――――――――――――――――――――
このタイミングでのマクミランの反旗は、その前日にアップル
がアイパッドを発表していることと無関係ではないと思います。
しかし、アマゾンはこれに激怒し、その翌日の1月29日にマク
ミランの紙の書籍と電子書籍の取り扱いを中止すると宣言し、ア
マゾンのマクミランの本のコーナーの「買う」ボタンを削除して
しまったのです。
しかし、ここでアマゾンは不可解な行動をとるのです。それは
1月31日になってアマゾンはマクミランの提案を受け入れると
表明しています。ただし、エイジェンシー・モデルの採用が条件
であるというわけです。
エイジェンシー・モデルとは、現在アップルがアイフォーンの
アプリケーション開発者に対してとっている方式です。このモデ
ルでは、開発者のアプリがアップルの審査に合格すると、アップ
ストアでそれを販売することが許されますが、価格は開発者が設
定していいのです。しかし、それが売れた場合は、価格の30%
をアップルに支払うというものです。
アマゾンはマクミランの希望価格──12.99 ドル〜14.
99ドル)を受け入れるが、本が売れたときは、その販売価格の
30%の手数料を取るという条件を提示したのです。
なぜ、アマゾンはマクミランに対してこのように日替わりに対
応を変えたのでしょうか。それはおそらくアップルがアイパッド
向けの販売価格を12.99 ドルか14.99 ドルのどちらかに
するよう要望を出していたという情報を掴んだからです。アマゾ
ンにとって一番怖い存在はアップルであり、そのアップルに出版
社を奪われることに危機感を感じたのです。
しかし、マクミランはアマゾンの提案を受け入れることを表明
したにもかかわらず、アマゾンがサイト上のマクミランの紙の書
籍と電子書籍の「買う」ボタンを復活させなかったのです。
これに怒ったマクミランは、2010年2月4日付のニューヨ
ーク・タイムズ紙に添付ファイルのような全面広告を掲載して、
アマゾンを批判したのです。そこには次のように書いています。
―――――――――――――――――――――――――――――
Available at booksellers everywhere except Amazon.
アマゾン以外のどこの書店からでも書籍は購入できます
―――――――――――――――――――――――――――――
この広告が掲載された翌日の5日からアマゾンは、アマゾンの
マクミランのサイトに「買う」ボタンを復活させたのです。しか
し、このマクミランのアマゾンに対する対応を見ていた出版社の
中には、マクミランに同調するところが出てきたのです。
米国で「ビッグ6」といわれる大手出版6社のうち、5社は自
社のウェブサイトで電子書籍の販売を行っています。なかでもマ
クミランは、子会社に電子書籍流通会社を有しており、自社主導
の流通を指向しているのです。だからこそ、アマゾンの一方的な
価格設定に対し、異議を申し立て、その結果、一定の譲歩を引き
出すことができたのです。
しかし、出版社にとってネットのアマゾン書店は重要な存在で
あり、取り扱い停止は大打撃なのです。これまで伝統的メディア
は、何回もネット企業においしいところを握られ搾取されてきた
経緯があります。したがって、電子書籍販売において、グーグル
アマゾン、アップルが提案するプラットフォームにそのまま乗る
のではなく、端末も自前で開発し、自ら配信し、課金す方向に動
き出しているのです。
これら米大手出版6社とは別に、メディア王といわれるルバー
ト・マードック会長の率いるニューズ・コーポレーションも自前
の流通を目指しての動きを加速させています。
ニューズ・コーポレーションは、この6月には、ジャーナリズ
ム・オンライン社への出資を行っています。同社は、2009年
4月に設立された企業であり、課金代行ベンチャーで、豊富な課
金メニューを有しているのです。
さらにニューズ・コーポレーションは、電子書籍端末のプラッ
トフォーム会社の「スキッフ」を買収したのです。しかし、ニュ
ーズの関心は端末ではなく、ビューアーや課金プラットフォーム
などのソフトウェアなのです。
このように現在米出版業界は、新大陸のネット企業と旧大陸の
伝統的企業の熱い戦いを展開中なのです。しかし、ネット企業が
圧倒的に優位を保っています。──[メディア覇権戦争/07]
≪画像および関連情報≫
●ルバート・マードック氏の見解
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◎新聞各紙は将来に向け、ネット版の有料化の動きを強めて
いるが。
「1〜2年以内にどのメディアも有料化に踏み切るだろう。
新聞ばかりか、インターネットや携帯電話、読み取り専用携
帯端末など配信手段は多様化しているが、今後もニュースに
対する需要の強さは変わらないだろう。高いブランド力と正
確さや公正さに対する信頼感があれば、読者を獲得できる」
──ルバート・マードック氏
http://www.yomiuri.co.jp/net/interview/20091001-OYT8T00489.htm
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マクミランの全面広告/NYタイムズ紙


