2010年07月23日

●「国民を惑わすメディアの小沢報道」(EJ第2861号)

 検察審査会の議決が出るたびに4億円とか8億円とかの数字が
新聞紙上に躍ります。この数字が根拠がないことについては、こ
れまで述べてきたことで明らかであろうと思います。
 しかし、現在2つの検察審査会で審査が行われているのは、石
川知裕氏を含む3人が逮捕・起訴のさい、事務所の責任者である
小沢一郎議員が不起訴になったことを不当としての訴えに基づく
ものです。
 ところで、検察が石川知裕氏を含む3人の罪状は一体何なので
しょうか。新聞は「政治資金収支報告書への虚偽記載」とのみ報
道し、それ以上のことはすべて省き、一切書いていないのです。
そうすると、何が起きるかというと、新聞の読者は虚偽記載と4
億円や8億円を結びつけ、小沢氏らは裏金を受け取り、悪いこと
をしていると思ってしまいます。
 しかし、起訴容疑は、小沢事務所が世田谷の土地を購入するさ
い、土地代金を支払った日─2004年10月29日には収支報
告書に記載がなく、土地を登記した日──2005年1月7日に
記載している。これは収支報告書の虚偽記載であって、これに小
沢一郎議員は共謀加担している──だから共同正犯として小沢氏
も起訴すべきだというだけのことなのです。4億円も8億円もカ
ケラもないのです。
 当初東京地検特捜部は、小沢氏が陸山会に貸した資金4億円は
水谷建設の裏金ではないかと疑い、現職の国会議員まで逮捕して
捜査したのですが、そういう証拠がなかったのです。だから検察
はそれを訴因にできなかったのです。
 しかも、小沢氏からの借入金である4億円は収支報告書に記載
されており、同額の定期預金を担保として銀行から借り入れた4
億円は収支報告書の「収入」に該当しないので、記載する必要は
ないのです。したがって、それを虚偽記載に問えない。このよう
に検察は、「虚偽記載」の中身をどんどん変更し、結局土地の代
金支払い日と登記の日がずれていて、年度をまたいでいるという
いわゆる「期ずれ」しか虚偽記載に問えなかったのです。小沢氏
はその「期ずれ」処理の共同正犯として2つの検察審査会で審査
が行われています。
 しかもです。その「期ずれ」も虚偽記載ではないのです。それ
は購入した土地の地目が「農地」であり、代金支払いの時点では
事務所経費として計上できなかったからです。そのため登記時点
で計上したものであり、虚偽記載ではないのです。
 「オリーブX!ニュース」の主宰者の徳山勝氏はこれに関連し
て次のように書いています。
―――――――――――――――――――――――――――――
 郷原氏が、あるテレビ番組で、(検察審査会の)起訴相当の中
 身を説明したら、全員が驚いたそうだ。当然だ。マスコミは、
 検察審査会の議決の中身抜き・吟味抜きで、「小沢氏はまだ居
 直るのか」(朝日)「全員一致は重い」(毎日)など、煽るだ
 け煽ったのだ。
    http://www.olive-x.com/news_ex/newsdisp.php?n=90280
―――――――――――――――――――――――――――――
 いちばん卑劣だと思うのは、民主党の反小沢グループの幹部た
ちが、その事実を知りながら、それを小沢一郎議員の追い落とし
のための政争の具にしようとしていることです。このようなこと
をしているようでは民主党は終わりであると思います。
 ところで第1検察審査会の審査について注目すべき事実があり
ます。第5検察審査会は、まさしく「期ずれ疑惑」の小沢氏の共
同正犯を扱っているのに対し、第1検察審査会の方は、「本件の
虚偽記載とは直接結びつかないが」と断って水谷建設の資金提供
疑惑の記述があることです。本件に関係ないのになぜ書いたので
しょうか。
 これについて、既出の「オリーブX!ニュース」の徳山勝氏は
次のように述べています。
―――――――――――――――――――――――――――――
 おそらく審査員の中から、(代金支払いの虚偽記載の謀議につ
 いて)「なぜ、何を謀議する必要があるのか」との趣旨の質問
 が出たのだろう。そこで検察は、「水谷建設からの資金提供を
 隠すためだ」とのシナリオを展開したと推測される。しかも、
 検察が捜査し立件した事件ではない。検察が1年以上かけ、捜
 査しても立証できなかった容疑である。
    http://www.olive-x.com/news_ex/newsdisp.php?n=90280
―――――――――――――――――――――――――――――
 本来検察審査会の審査の模様は守秘義務があって、絶対に外に
漏らしてはいけないことになっているのですが、なぜか漏れてき
ています。新聞はいっさい報道しないのですが、4月27日の第
5検察審査会の議決直後に評決が11対0の全員一致だったとす
る報道が流れたのです。それをめぐって、ある市民団体が東京地
検に補助弁護士を務めた米澤敏雄弁護士ら多数の関係者を「検察
審査会の守秘義務違反」で告発状を出したのです。しかし、検察
はこの告発状を受理しなかったようです。
 この告発を受けて米澤敏雄弁護士は補助弁護士を降り、現時点
でも第5検察審査会の補助弁護士は空席のままです。この市民団
体がどういう団体であるかは不明です。だれでもそういう告発は
できるはずですが、検察は自らにとって都合の悪い事案について
は拒否してしまうのです。
 しかし、これで第5検察審査会の議決が出るのは、早くても9
月以降になることは確実なのです。それにしても検察は、石川知
裕議員らの公判をなぜやろうとしないのでしょうか。
 それは明らかです。もし、公判を開いても検察の負けは必至で
あり、それが第5検察審査会の議決に影響を与えることは確かな
のです。したがって、特捜部としては第5検察審査会にもう一度
「起訴相当」を出させたかったのでしょう。しかし、頼みの第1
検察審査会も「不起訴不当」であり、どうやら検察の小沢潰しは
失敗に終りそうです。──[ジャーナリズム論/65/最終回]


≪画像および関連情報≫
 ●第5検審の再議決は「起訴相当」にはならない!?
  ―――――――――――――――――――――――――――
  関係者の間では、「小沢氏強制起訴」の可能性は以前より低
  くなった、とする見方が強い。法曹関係者はこう指摘する。
  「最初に陸山会事件で、小沢氏を告発した人は、反小沢的な
  考えの持ち主。今回、米澤氏らを告発しようと動いたのは、
  親小沢的な考えの持ち主でしょう。どちらの結論が出るにし
  ても、告発した『市民団体』の政治的意図を知りえないまま
  検察審査会が政治利用されている。現行の検察審査会制度に
  何らかの問題があることが、今浮き彫りになってきたのでは
  ないでしょうか」  『アエラ』7/19/編集部三橋麻子
  ―――――――――――――――――――――――――――

朝来市を訪れた小沢氏.jpg
朝来市を訪れた小沢氏
posted by 平野 浩 at 04:11| Comment(3) | TrackBack(0) | ジャーナリズム論 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
金曜日までの記事を読みました。
解釈の違いや重箱の隅をつついているかもしれませんがご容赦願います。

1.4億円は小沢氏の陸山会において大金である。
 これは資金の流れから見ても異論はないと思います。
2.石川氏は4億円の銀行からの担保有りの借入金を「収入」に該当しないと判断を下している。
 これも政治資金収支報告書から異論はないと思います。

-引用開始

 想像ですが、政治資金規正法の「収入」の定義については、石川議員は、知らなかったと思います。

-引用終わり

石川氏が政治資金規正法の「収入」の定義を知らないならば、4億円ものの大金の会計処理の仕方を「知らない」のに小沢氏に報告しないで処理したことになります。
小沢氏がこの資金の流れに関与していないことは、現状、小沢氏の発言や検察の調査から「事実」となっています。
ただそうなると小沢氏は資金繰りの相談を受けて、自らの現金を貸し、返済してもらった4億円の大金を巡る会計処理に対して、注視していなかった、石川氏を信用して全て任せていたこともまた「事実」と推測するのは乱暴ではないと思います。
ここから小沢氏は石川氏が政治資金規正法の「収入」の定義を良く知っていると「誤解」していたのではないかと想像するのは難しくありません。
ここを否定すると石川氏が政治資金規正法の「収入」の定義を知らないことを小沢氏が知っていた場合、会計処理に関与しないこと自体が不自然になります。
ですので現状、小沢氏は「関与」してない状態ですし、石川氏を小沢氏が会計事務担当にしたのですから、この「誤解」は十分ありうる話です。

前提が長くなりました。
では、石川氏は政治資金規正法の「収入」の定義を詳しく知らないのに担保有りの借入金を「収入」に該当しないと判断しているのは何故なのでしょうか?

--引用開始

 法律用語はわかりにくいですが、要するに政治団体が手元資金を銀行預金で運用し、それを担保に相当額を借り入れても、その借入金は政治資金規正法上の「収入」には該当しないのです。

--引用終わり

詳しく知らないのに銀行からの担保ありの借入金が「収入」に該当しないと石川氏が判断するのは無理がありませんでしょうか?
そもそも「収入」に該当しないというのも疑問に思っているのですが、「収入」に該当しないという解釈が正しく、検察側が無知で誤解したとするならば、石川氏も同様に無知で誤解して「収入」に該当すると判断するのが自然な流れだと思います。
何故ならば、政治資金規正法第9、12条に「すべての収入」、「すべての支出」について記載するよう求めているからです。
理解していないならば、分かりにくい条文をこねくり回すより、はっきり明文化されている条文に従うのが自然です。
よって石川氏が条文をよく「知らなかった」から銀行からの担保あり借入金を「収入」に記載しなかったとする展開は難しいです。

また政治資金収支報告書は、政治資金をどこから調達して、どこに使ったかを国民に報告するものです。
担保有りの借入金が「収入」に該当しないと解釈するならば、収支報告書外から資金調達が可能になってしまい、政治資金規正法の脱法的な使い方となってしまいます。
立法府に属する議員に関する法律を脱法的に運用することのまずさは言うまでもないことだと思います。

これまでコメントしてきたものは様々な解釈が可能であり、想像に想像を膨らませた事柄です。
ただ普通の人が感じる多くの「不自然」が存在していることも確かです。
「推定無罪」や「疑わしきは罰せず」が基本ですが、政治家は信じられることが重要です。
「推定無罪」「疑わしきは罰せず」でも、それと信用できる、信用できないは別の話です。
小沢氏は検察の捜査を批判しながら、その後検察は正しい捜査をしたと検察の捜査を根拠に説明しています。
このようなことをされたら何を信用していいのか余計に分からなくなります。
世論調査にも表れているように未だ多くの国民が納得のいった説明をされていないと感じています。
マスコミが正しく報道しないからだという意見もあるでしょう。
ただだからこそ未だ可視化されていない取り調べや非公開で行える政倫審ではなく、事実をはっきりさせるために偽証が罪になる証人喚問を求めるというのは素直な心情だと思っています。
検察が不起訴にしたから疑惑はないという晴らし方はいつまでも禍根を残すことになります。
政治家であるならば自らの疑惑は自らで晴らしてほしいものです。

他人さまのblogのコメント欄に長々と失礼いたしました。
Posted by 三字賢 at 2010年07月23日 10:28
ちゅうか小沢不起訴が妥当かどうかのコメントなんぞどうでもいい。そんなことの前に、小沢なんかよりもずっとずっと政治資金を私物化してる輩はたいそういるのに、なぜ小沢だけ検察もマスコミもこれだけ攻撃しているのかってのが問題でしょ。

それが一番の重大問題でしょ。
Posted by ふりーまん at 2010年07月23日 17:15
脱法行為がうんぬんなら、3世、4世の議員連中は立派に相続税脱税の脱法行為でしょ。

これを税務署も検察もマスコミも問題にしないで、鳩山を攻撃するのはなぜなの??

このブログはそういう面を告発するのがテーマなんだから、そういったテーマに反論したコメントを読みたいです。
Posted by ふりーまん at 2010年07月23日 17:20
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