2006年03月29日

日本政府を支配する米国政府(EJ1804号)

 日本のバックに何がいるのかといったら、米国しかいないので
す。日本国内の政治・経済などの分析をするとき、確かに日米関
係を抜きにしては論ずることはできないと思います。
 政治評論家の森田実氏は、戦後日本の歴史は次の4期に分ける
ことができるといっています。
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  第1期 占領時代 ・・・・・・ 1945〜1952
  第2期 半自立時代 ・・・・・ 1953〜1982
  第3期 半自立崩壊時代 ・・・ 1983〜1995
  第4期 従属時代 ・・・・・・ 1996〜2005
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 第1の占領時代――米国としてはもっと長くする計画であった
のですが、朝鮮戦争が起こって方針が変更されたのです。日本に
再軍備させ、米国の尖兵として使おうと考えたのです。しかし、
吉田首相はこれに反対し、再軍備は実現できなかったのです。日
本は平和主義を国是として新憲法のもとで独立国として生きる方
向に一歩を踏み出したのです。
 第2期の半自立時代――この時代は、2つの路線の対立があっ
たのです。1つの路線は、米国との軍事的従属関係を緩和して自
立を目指す路線です。代表的な内閣は、池田隼人、田中角栄の両
内閣です。もう1つの路線は、従米路線をとった岸内閣です。
 これら2つの路線の争いは岸内閣が勝利し、中曽根内閣がその
路線を引き継いだのです。いや、中曽根内閣を仕掛けたのは当時
のレーガン政権だったといわれます。これによって、日本国の自
立路線は崩れたのです。
 第3期の半自立崩壊時代――第3期は中曽根内閣登場から村山
内閣退陣まで続くのですが、この時期日本は、米国の世界戦略と
対日戦略に乗せられて米国の利益のために働くようになったので
す。しかし、唯一の例外は細川内閣です。この内閣は国の自立を
目指したため、米国政府から嫌われ、追われたのです。
 第4期の従属時代――橋本内閣から現在の小泉内閣までです。
森田氏は、この間に日本は米国の好みの方向に「改造」させられ
たといっています。橋本・小渕・森内閣については「穏健な」従
米主義だったのですが、小泉内閣になって「過激な」従米主義に
なってしまっています。
 ここに一冊の本があります。森田氏が日本人ならぜひ読むよう
推奨している本です。
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 関岡英之著/文春新書
 『拒否できない日本――アメリカの日本改造が進んでいる』
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 この本は「米国政府の日本政府に対する年次改革要望書」とい
うものがあることを教えてくれます。この年次改革要望書は表面
上は「要望」のかたちをとっていますが、実際は米国政府の日本
政府に対する「指令」なのです。とくに1994年から今日に至
る日本の経済政策である構造改革は、この指令書に沿って行われ
てきたことを明かしています。
 こういう文書の存在は、日本の政治、外交、安全保障、経済政
策、社会政策のすべてが米国政府のコントロール下に置かれてい
ることの証明である――このように森田氏は述べているのです。
 この年次改革要望書について政府に質問した国会議員は与党・
野党を含めてかなりたくさんいます。森田氏が多くの国会議員に
この本を読むことを勧めたからです。
 しかし、これに対して小泉首相はのらりくらりとまともに答え
ようとはしなかったのです。しかし、これらの質問は無視された
わけではなかったのです。それは、2005年9月11日の衆議
院総選挙のあと、とくにこの問題に熱心だった前衆議院議員から
森田氏に次のような電話があったことで明らかです。
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 森田さん、国会で年次改革要望書を総理に質問した衆議院議員
 は、ほとんど落選しました。年次改革要望書を取り上げた議員
 が狙い打ちにされたような気が私はするのです。「年次改革要
 望書隠し」が徹底的に行われたような気がするのです。
   ――森田実著、『小泉政治全面批判』より。日本評論社刊
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 それだけではないのです。年次改革要望書問題を取り上げた学
者、ジャーナリスト、評論家などにもテレビ出演のお呼びがかか
らなくなったというのです。そして、現在では、テレビの政治番
組では、この問題を取り上げるところは皆無になってしまってい
るのです。
 副島隆彦氏も年次改革要望書については具体的に取り上げてい
ます。この年次改革要望書が出現したのは1994年のことであ
り、それから今日まで、「規制緩和」の名の下で次のような法律
が改正され、制度の大幅な手直しが行われたのです。
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  1.持株会社の解禁 ・・・・・・・・・ 1997年
  2.NTTの分離・分割 ・・・・・・・ 1997年
  3.金融監督庁の設置 ・・・・・・・・ 1997年
  4.企業における時価会計の導入 ・・・ 2000年
  5.大規模小売店舗法の廃止 ・・・・・ 2000年
  6.確定拠出年金制度の導入 ・・・・・ 2001年
  7.法科大学院の設置 ・・・・・・・・ 2004年
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 ちなみに2004年10月発表の年次改革要望書に「郵政民営
化」もはっきりと盛り込まれているのです。日本政府はこれらの
要望をきちんとこなしてきていることになります。
 今回の大増税についてもそのにバックには米国の意思が存在す
るといわれています。「日本は米国の51番目の州である」とは
よくいわれることばです。われわれは、今後のことを含めて日米
関係について正確に認識すべきです。 ・・・[日本経済46]


≪画像および関連情報≫
 ・落選した城内実前自民党衆議院議員のブログより
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  みなさんは、前に紹介した月刊文藝春秋12月号の関岡英之
  氏の論文「警告リポート奪われる日本」をお読みになったで
  しょうか。この論文は、郵政民営化の背後に米国保険業界の
  意向を受けた米国政府からの圧力があることを指摘したもの
  で、なかなか内容の濃い読み応えのある話題の論文です。そ
  の関岡氏ですが、同じ月刊文藝春秋1月号に再び寄稿されま
  した。「TVで暴言を吐いた竹中大臣へ」というタイトルの
  ものです。時間がありましたら、是非読んでいただきたいと
  思います。
  http://www.kiuchiminoru.com/blog/2005/12/post_3.html
  ―――――――――――――――――――――――――――

1804号.jpg
『拒否できない日本』
posted by 平野 浩 at 06:35| Comment(0) | TrackBack(0) | 日本は本当に破綻危機なのか | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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