2010年07月14日

●「鳩山前首相の思考法を解明する」(EJ第2855号)

 鳩山前首相は、本気で「普天間基地の県外移設」を考えていた
し、そのための腹案をちゃんと用意していたのです。徳之島とは
別の案です。その腹案を作ったのは、桜美林大学大学院客員教授
の橋本晃和氏を中心とするグループなのです。
 鳩山前首相としては、政権交代のときしか米軍基地を沖縄から
移動させることはできないと考えて、それに政治生命を賭けて挑
んだのです。小沢氏もそれに同意していたのです。
 しかし、鳩山首相は、平野官房長官(当時)をはじめとする官
邸のスタッフの人選に失敗したのです。これによって、まったく
官邸が機能しないどころか、政権の足を引っ張ったのです。これ
は鳩山氏が犯した最大の失敗といえます。
 それに加えて、米国の安保マフィアの存在に首相は気づいてい
なかったようです。鳩山氏を取り巻くマイケル・グリーンの門下
生たちは、何の臆することもなく、次のように米国の代理人のよ
うなことをマスコミを通して何回も発言し、首相を牽制したので
す。とても同じ党の政権を担う閣僚や政務官のいうべきことでは
ないし、政権としての態をなしていなかったといえます。
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 鳩山政権は、アメリカの言うことを聞くべきだ。今の対立的な
 日米関係は危険である。
           ──副島高彦×佐藤優著/日本文芸社刊
  『小沢革命政権で日本を救え/国家の主人は官僚ではない』
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 もうひとつ多くの国民は、鳩山氏の考え方について行けなかっ
たところがあると思います。だから、鳩山氏は宇宙人といわれて
おり、本人もそれを認めています。これについて、佐藤優氏と副
島氏は非常に面白い分析をしているのです。佐藤氏によると、鳩
山由紀夫氏は大変な学者であるというのです。
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 最近、私は鳩山首相が英語で書いた学術論文を読んでみてびっ
 くりしました。まず英語が見事なうえに、論文内容も素晴らし
 い。政治家になるまで腰掛けで学者をしていたのではなく、間
 違いなく本物の学者でした。その論文のテーマはロシアの天才
 数学者、アンドレイ・マルコフが唱えた「マルコフ保全理論」
 の研究でした。    ──副島高彦×佐藤優著の前掲書より
―――――――――――――――――――――――――――――
 アンドレイ・マルコフといえば、「マルコフ連鎖」という確率
理論を提唱したことで有名です。マルコフの理論は、簡単にいう
と次の考え方に基づいています。
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    未来は現在のみに関係し、過去には関係しない
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 サイコロを指で押して転がす例で考えてみます。現在、1の目
が出ているとします。このとき過去にどの目が出ていたかに関係
なく、指でひとつ転がして出る目は2,3,4,5のいずれかの
目であることになります。つまり、過去のことは考慮せず、すべ
て現在から未来を思考するのです。これが基本的な考え方です。
これがベースになってОR──オペレーション・リサーチが生ま
れたのです。
 佐藤氏は、鳩山首相の政治哲学はこのマルコフ理論の影響を受
けているといっています。この理論を「偏微分」を駆使しながら
数理的に実証していくのです。鳩山氏はスタンフォード大学で博
士課程を修了しており、その専攻はオペレーション・リサーチな
のです。つまり、ロジスティクスの専門家なのです。
 普通の政治家は「足して2で割る」ということに象徴されるよ
うに加減乗除の思考しかできなかったのですが、鳩山氏は「微分
積分」を駆使することができるのです。これについて、佐藤氏は
鳩山氏について次のように述べています。
―――――――――――――――――――――――――――――
 鳩山発言は二転三転してブレていたように言われます。という
 のも、鳩山首相の思考は、オバマ政権の国家戦略や東アジアの
 国際情勢、沖縄の世論、さらには小沢幹事長と検察の闘いなど
 を「項」とする「関数体」となっているからです。その関数体
 の中で、ときにはアメリカ情勢が変数となることもあるし、最
 近なら検察の小沢一郎捜査が変数となっています。その時々の
 変数によって、自らの解答を変えるわけです。たとえば普天間
 問題だけを例にとれば、ゲーツ国防長官による桐喝のように、
 アメリカの対日姿勢の「項」が変化したことを受けて「日米合
 意を無視しない」と言ったかと思えば、別の日には沖縄の人々
 のいらだちが強まるという事態を踏まえて、「合意を前提とは
 しない」とも発言しました。外部からはブレたと言われますが
 彼の思考形態自体は、一貫して不変なのです。
            ──副島高彦×佐藤優著の前掲書より
―――――――――――――――――――――――――――――
 普天間基地の代替候補地の決定は難問だったのです。多くの要
素がからまっていてすぐに解を出せなかったのです。そこで鳩山
氏は、マルコフ理論を使い、自分があるタイミングを決めて、そ
の直近のどこかで自分が決めて起きたことを基準点にして、そこ
と比較して「よりましなシナリオ」を選択する──これを「最適
解」とする考え方を実施したと思われるのです。
 そこで、鳩山氏は5月末というタイミングを決定したのです。
そして5月の終りの状況以外は何も考えなかったのです。そして
5月の終わりになって、その現実と比べて、よりましなシナリオ
が、とりあえず、「普天間飛行場を辺野古に移設する」という決
断だったのです。
 きっと鳩山氏は、それによって沖縄の反対が激しくなれば、別
なオプションを出す予定だったのでしょうが、その前に自分が退
陣に追い込まれてしまったのです。彼が狙っていたのはあくまで
「基地の県外移設」だったのです。
              ──[ジャーナリズム論/59]


≪画像および関連情報≫
 ●オペレーションリサーチとは何か
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  政策実行や企業経営などの各種活動において、課題となる対
  象(問題)を操作・対応可能な系としてモデル化して分析・
  計算を行い、最良の対策や行動を導き出す数学的/統計的方
  法群のこと。あるいは、これらの方法を研究する学際的学問
  分野をいう。また、これらの方法を用いて諸問題の解決法を
  明らかにする活動そのもの、ないしそれを通じて意思決定者
  を支援することと定義される場合もある。
        http://www.atmarkit.co.jp/aig/04biz/or.html
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ORの専門家/鳩山由紀夫氏.jpg
ORの専門家/鳩山 由紀夫氏
posted by 平野 浩 at 04:13| Comment(1) | TrackBack(0) | ジャーナリズム論 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
鳩山元首相は、人選ミスをしたというより、させられた可能性はありませんかね?
Posted by cova at 2010年07月14日 09:16
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