して、財務省の狙いをまとめておきます。2004年度の一般会
計の数値を例にとります。
2004年度の国の歳入は84兆円ですが、税収は45兆円し
かないので、新規の国債発行は39兆円です。この39兆円の内
訳は次の通りです。
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国債費 ・・・・・・・・・・・・ 19兆円
プライマリーバランスの赤字 ・・ 20兆円
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プライマリーバランスを均衡させるには、20兆円を何とか集
める必要があります。財務省はそれを増税によって埋めるつもり
でいるのです。
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消費税率引き上げ ・・・・・ プラス10兆円
サラリーマン増税 ・・・・・ プラス10兆円
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そうすると、赤字20兆円はなくなり、プライマリーバランス
は均衡することになります。このために、消費税は10%以上に
せざるを得ないと財務省は主張するのです。しかし、この計算は
歳出の削減を考慮に入れず、増税だけでプライマリーバランスを
均衡化させる計画です。
それにしても、この増税計画は常軌を逸しています。政府税調
のいうように計算すると、年収700万円のサラリーマンは、次
のように41万円の増税になります。
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所得税 ・・・・・・・・・ 21万3000円
住民税 ・・・・・・・・・ 19万7000円
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41万0000円
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この計算は、給与所得控除と特定扶養控除は半減、配偶者控除
はゼロにして算出しているのですが、石会長のいうように、基礎
控除や扶養控除も削減されると税額はもっと大きくなります。こ
れに消費税が10%以上になり、もしかすると同時に実施される
恐れがあるのです。
1997年の橋本政権下における消費税の税率引き上げのさい
の国民負担額は9兆円――このときの名目GDP521兆円との
対比で見ると1.7%、当時の雇用者報酬は280兆円であった
ので、9兆円はその3.2%に相当したのです。この負担はきわ
めて重く、市場の株売りを招き、株価の暴落と金融恐慌を引き起
こしているのです。
これと2004年度と比較してみると、名目GDPは521兆
円から501兆円に減少、雇用者報酬も280兆円から265兆
円へと、ともに約20兆円減少しているのです。しかし、増税額
は9兆円から11.3兆円に増加し、国民負担は増加する傾向に
あるのです。つまり、所得が減っているのに、国民は1997年
以上の大増税に追い込まれようとしているのです。
新聞記者が、石会長の「論点整理」に関して、あまりにもサラ
リーマンいじめではないか、サラリーマンに対して会長はどう説
明するのかと問い正したところ、石会長は次のように答えている
のです。
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これから国民が全体としてこの国をどう支えるかという議論か
らいいますと、サラリーマンが核にならなかったら絶対にでき
ないですよ。サラリーマンというのは、就業者の8割を占めて
います。・・・誰にやってもらうかと言ったら、サラリーマン
の方々にみんなで頑張ってもらうほかないんじゃないですか。
というメッセージを送りたいと思いますけれども。
――2005.6.21の政府税調石会長談話より
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勝手な言い分であると思います。しかし、石会長のこの発言は
与党の間でもさすがにマズイと考えた人が多かったようです。自
民党はその後必死に石発言の火消しをしたのですが、7月3日の
都議選では民主党に敗退しています。
自民党税調でも政府税調の石発言については次のように反対を
表明しています。
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政府税調は、『所得税に増税の余地がある』という前提だが、
まったく賛成できない。所得税課税を増税するかのような議論
は党税調として受け入れることはできない。
――2005.7.1/津島雄二・自民党税制調査会長
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しかし、日本は確かに財政赤字は抱えていますが、巨額の貿易
黒字を持つ国であり、対外債権国なのです。それなのにどうして
ここまで追い詰められてしまったのでしょうか。
副島隆彦氏は、「サラリーマン大増税」について、次のように
述べています。
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「サラリーマン大増税」の大本営発表は、日本の財務省にして
みても、国民いじめの大悪政であることはわかっている。今で
も重税にあえいでいるサラリーマン層から、さらに税金を年額
で40万円も搾り取ろうというのである。しかも消費税を最低
15%とかに引き上げることも同時にやろうとしている。こん
なめちゃくちゃな大増税を国民に押しつけることは、まともな
神経をしていたら、為政者としてできることではない。
――副島隆彦著、『重税国家日本の奈落/
金融ファシズムが国民を襲う』
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バックに何かがいるのです。 ・・・[日本経済45]
≪画像および関連情報≫
・『重税国家日本の奈落』
この本では、「誰も竹中平蔵大臣には逆らえない。なぜなら
彼のバックには、アメリカのロックフェラーがついているか
ら」という実態が明らかにされています。既に日本長期信用
銀行(現・新生銀行)に8兆円もの税金をつぎ込んだあげく
わずか10億円で外資に売り渡した“実績”を持つ竹中大臣
です。そこにはアメリカの強力な「支持」と「指示」があっ
たことは明白です。
http://www.h2.dion.ne.jp/~apo.2012/bookstand-juzeikokka.html

『重税国家日本の奈落』