2006年03月28日

大増税の仕掛け人は誰か(EJ1803号)

 財務省がどのように考えているか――副島隆彦氏の本を参考に
して、財務省の狙いをまとめておきます。2004年度の一般会
計の数値を例にとります。
 2004年度の国の歳入は84兆円ですが、税収は45兆円し
かないので、新規の国債発行は39兆円です。この39兆円の内
訳は次の通りです。
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
    国債費 ・・・・・・・・・・・・ 19兆円
    プライマリーバランスの赤字 ・・ 20兆円
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
 プライマリーバランスを均衡させるには、20兆円を何とか集
める必要があります。財務省はそれを増税によって埋めるつもり
でいるのです。
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
    消費税率引き上げ ・・・・・ プラス10兆円
    サラリーマン増税 ・・・・・ プラス10兆円
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
 そうすると、赤字20兆円はなくなり、プライマリーバランス
は均衡することになります。このために、消費税は10%以上に
せざるを得ないと財務省は主張するのです。しかし、この計算は
歳出の削減を考慮に入れず、増税だけでプライマリーバランスを
均衡化させる計画です。
 それにしても、この増税計画は常軌を逸しています。政府税調
のいうように計算すると、年収700万円のサラリーマンは、次
のように41万円の増税になります。
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
    所得税 ・・・・・・・・・ 21万3000円
    住民税 ・・・・・・・・・ 19万7000円
    ――――――――――――――――――――――
                  41万0000円
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
 この計算は、給与所得控除と特定扶養控除は半減、配偶者控除
はゼロにして算出しているのですが、石会長のいうように、基礎
控除や扶養控除も削減されると税額はもっと大きくなります。こ
れに消費税が10%以上になり、もしかすると同時に実施される
恐れがあるのです。
 1997年の橋本政権下における消費税の税率引き上げのさい
の国民負担額は9兆円――このときの名目GDP521兆円との
対比で見ると1.7%、当時の雇用者報酬は280兆円であった
ので、9兆円はその3.2%に相当したのです。この負担はきわ
めて重く、市場の株売りを招き、株価の暴落と金融恐慌を引き起
こしているのです。
 これと2004年度と比較してみると、名目GDPは521兆
円から501兆円に減少、雇用者報酬も280兆円から265兆
円へと、ともに約20兆円減少しているのです。しかし、増税額
は9兆円から11.3兆円に増加し、国民負担は増加する傾向に
あるのです。つまり、所得が減っているのに、国民は1997年
以上の大増税に追い込まれようとしているのです。
 新聞記者が、石会長の「論点整理」に関して、あまりにもサラ
リーマンいじめではないか、サラリーマンに対して会長はどう説
明するのかと問い正したところ、石会長は次のように答えている
のです。
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
 これから国民が全体としてこの国をどう支えるかという議論か
 らいいますと、サラリーマンが核にならなかったら絶対にでき
 ないですよ。サラリーマンというのは、就業者の8割を占めて
 います。・・・誰にやってもらうかと言ったら、サラリーマン
 の方々にみんなで頑張ってもらうほかないんじゃないですか。
 というメッセージを送りたいと思いますけれども。
      ――2005.6.21の政府税調石会長談話より
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
 勝手な言い分であると思います。しかし、石会長のこの発言は
与党の間でもさすがにマズイと考えた人が多かったようです。自
民党はその後必死に石発言の火消しをしたのですが、7月3日の
都議選では民主党に敗退しています。
 自民党税調でも政府税調の石発言については次のように反対を
表明しています。
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
 政府税調は、『所得税に増税の余地がある』という前提だが、
 まったく賛成できない。所得税課税を増税するかのような議論
 は党税調として受け入れることはできない。
    ――2005.7.1/津島雄二・自民党税制調査会長
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
 しかし、日本は確かに財政赤字は抱えていますが、巨額の貿易
黒字を持つ国であり、対外債権国なのです。それなのにどうして
ここまで追い詰められてしまったのでしょうか。
 副島隆彦氏は、「サラリーマン大増税」について、次のように
述べています。
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
 「サラリーマン大増税」の大本営発表は、日本の財務省にして
 みても、国民いじめの大悪政であることはわかっている。今で
 も重税にあえいでいるサラリーマン層から、さらに税金を年額
 で40万円も搾り取ろうというのである。しかも消費税を最低
 15%とかに引き上げることも同時にやろうとしている。こん
 なめちゃくちゃな大増税を国民に押しつけることは、まともな
 神経をしていたら、為政者としてできることではない。
          ――副島隆彦著、『重税国家日本の奈落/
        金融ファシズムが国民を襲う』より。祥伝社刊
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
 バックに何かがいるのです。    ・・・[日本経済45]


≪画像および関連情報≫
 ・『重税国家日本の奈落』について
  この本では、「誰も竹中平蔵大臣には逆らえない。なぜなら
  彼のバックには、アメリカのロックフェラーがついているか
  ら」という実態が明らかにされています。既に日本長期信用
  銀行(現・新生銀行)に8兆円もの税金をつぎ込んだあげく
  わずか10億円で外資に売り渡した“実績”を持つ竹中大臣
  です。そこにはアメリカの強力な「支持」と「指示」があっ
  たことは明白です。
  http://www.h2.dion.ne.jp/~apo.2012/bookstand-juzeikokka.html

1803号.jpg
  『重税国家日本の奈落』
posted by 平野 浩 at 06:20| Comment(0) | TrackBack(0) | 日本は本当に破綻危機なのか | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前: [必須入力]

メールアドレス: [必須入力]

ホームページアドレス:

コメント: [必須入力]


この記事へのトラックバック