2006年03月27日

サラリーマンはなぜ怒らないのか(EJ1802号)

 ブログEJの読者から次のコメントをいただいたので、ご紹介
し、そのことに関連して述べることにします。
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 いつも勉強させてもらっています。
 色々読ませていただきまして、少し疑問に思うことがございま
 したのでコメントさせていただきます。今までの正社員サラリ
 ーマン層が派遣社員、パートなどに置き換わってきているのが
 今の日本だと思うのですが、なぜ政府はこれからの日本を引っ
 張っていくこれらの層に対して、増税を行っていくのでしょう
 か?そしてなぜ、それらの層と反対側にいる恵まれた層には減
 税を行うのでしょうか?私には理解できませんので、ぜひ、見
 解をお聞かせ願いたいのですが。
      ――  Posted by てつを at 2006年03月21日 10:02
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 日本の税制が不公平税制であるとよくいわれます。不公平税制
を一言でいうと、徴税しにくい層から徴税する努力をしないで、
徴税しやすい層から取ろうとする点です。
 現在、所得のある就業人口は約6400万人といわれます。そ
の内訳は次のようになっています。
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              就業人口  税金未払い者
   サラリーマン   4500万人   700万人
   農業従事者     300万人   250万人
   個人事業主    1300万人   300万人
   フリーターなど   300万人   300万人
   ―――――――――――――――――――――――
            6400万人  1550万人
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 驚くなかれ、就業人口の24%が税金を払っていないのです。
確かに制度上税金を払わなくてもよい層もあります。しかし、支
払わなければいけないのに支払わないケースも多いのです。そう
いういわば取りにくい層から税金を徴収するのは税務署の仕事の
はずですが、ほとんど徴収できていない現状があります。
 フリーターの中にはかなりの高額所得者もいるのです。しかし
多くの場合、彼らには国民の義務として税金を収めようという精
神に欠けており、税金を払っていないのです。国民年金保険料の
払わないケースと同じです。
 つまり、こういうことになります。税を徴収する立場から見る
と、全就業人口の70%以上を占めるサラリーマン層が最も所得
を捕捉しやすく、徴税しやすいのです。
 したがって、所得を捕捉しにくい層や、納税義務のあるのに支
払わない層はそのままにしておいて、取り易いサラリーマンから
取れるだけ取る――こういう不合理な徴税方式になってしまうわ
けです。
 もう既に死語になっていますが、むかし税金に関して、「クロ
ヨン/9・6・4」という言葉があったのです。この9・6・4
は次のように対応するのです。
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  9 → 所得の90%を税務署に捕捉 ・・ 給与所得者
  6 → 所得の60%を税務署に捕捉 ・・  自営業者
  4 → 所得の40%を税務署に捕捉 ・・ 農業従事者
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 もうひとつ「トーゴーサンピン/10・5・3・1」という言
葉もあります。10はサラリーマン、5は自営業者、3は農業従
事者です。それでは1は何かといえば政治家なのです。
 これに関して、国家破綻説の元祖といわれる副島隆彦氏は著書
で次のように述べています。
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
 実は、この「クロヨン」とか「トーゴーサンピン」という税金
 の不平、不平等を言いつのるコトバを世の中に流行らせている
 のは、国税庁自身である。サラリーマンたちの不満を、自営業
 者や経営者にぶつけて、妬み、嫉妬の感情を煽り立てて、税金
 を取りやすくするための国税庁の策略である。
          ――副島隆彦著、『重税国家日本の奈落/
        金融ファシズムが国民を襲う』より。祥伝社刊
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 サラリーマンは源泉徴収されてしまうので、所得はほぼ100
%捕捉されることになります。したがって、他の所得者との不公
平を是正するために、サラリーマンには「給与所得控除」が認め
られてきたのです。これにより、所得から約30%が控除されて
いるのです。ところが今回の政府税調の「論点整理」には次のよ
うなことが書いてあるのです。
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
 給与所得者であることを理由に、所得の計算に特別な斟酌を行
 う必要性は乏しくなって来ている。
                ――政府税調の「論点整理」
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
 これに基づき、給与所得控除の見直し論が打ち出されているの
です。つまりこれは、今までサラリーマンにはお上のお情けで3
割控除を認めてやってきたが、今は国家財政の非常事態であり、
そんな特別待遇をする理由も必要もない――こういっているのと
同じです。
 日本の国家財政をここまで貶めたのは、財務省を中心とする官
僚機構です。自分たちの失敗を棚に上げて、そもそも不公平税制
を是正するために設けられている給与所得控除を見直すとはとん
でもない暴論です。
 給与所得控除を廃止するなら、財務省はサラリーマンに対する
源泉徴収制度を廃止し、確定申告制にすべきです。これが実施さ
れたら一番困るのは財務省です。4500万人が全員申告制にな
ると、税務署がパンクするからです。 ・・・[日本経済44]


≪画像および関連情報≫
 ・サラリーマンは全員確定申告すべし
  ―――――――――――――――――――――――――――
  約4500万人のサラリーマン全員が確定申告したらどうな
  るだろう。各人が経費として認められる「特定支出控除」の
  対象項目を拡充して申告したら、税務署はパンクしてしまう
  はずだ。   ――森本亮著『日本国破産に最終警告』より
                      PHP研究所刊
  ―――――――――――――――――――――――――――

1802号.jpg
posted by 平野 浩 at 06:29| Comment(0) | TrackBack(0) | 日本は本当に破綻危機なのか | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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