れを維持するに当たって、莫大な税金が使われているという問題
点があるのです。
というのは、記者クラブメディアは、庁舎内に記者室を有して
おり、各社ごとに一定のスペースを確保しています。記者たちは
そこで記事を書いたり、資料を作成するなどの作業を行うことが
できます。つまり、そこは彼らの勤務先なのです。
それに加えて、記者クラブが主催権を持つ記者会見場に関して
も、非記者クラブを締め出すかたちで、事実上の占有を行なって
いるのです。
これは非常に恵まれた環境であるといえます。米国では、記者
室のような作業場所はいっさいなく、すべての記者が記者会見場
のそばにあるフリースペースを取り合って、作業をするのです。
その場所は全メディアに公平に開かれており、無償であっても何
ら問題はないのです。
韓国ではかつて日本と同じような記者クラブがあったのですが
2007年に盧武鉉政権が大統領府や国防省などを除いて原則禁
止しています。その代わりに、すべての記者に開かれた「合同ブ
リーフィングセンター」が新設されています。このように今や記
者クラブがあるのは日本だけなのです。
2009年9月に消費者庁が発足したさい、高層ビルに入居す
るということで大きな問題になったのです。このビルは永田町の
山王パークタワーという民間ビルで、年間8億円もの賃料負担が
かかるとして新聞・テレビがこぞって書き立てたことを覚えてお
られると思います。何と贅沢なことか、と
ところが、その豪華ビルの約130平方メートル分は記者室で
あり、そこに記者クラブはちゃっかりと無償で入居していたので
す。新聞・テレビでは豪華、贅沢、無駄と書き立てながら、自分
たちがその中の大きな部分を無償で占有することに対しては、知
らん顔をして口をつぐむ。これは実におかしなことであると思い
ませんか。
山王パークタワービルの賃料は、1平方メートル当たり月1万
1034円、これを基にして年間の賃料を計算すると、記者室だ
けで約2600万円、会見場まで含めると、年間約5600万円
にもなるのです。
ここで留意すべきは、消費者庁は新しい官庁であるということ
です。ところが、そういう新しい官庁ができると、同時に消費者
庁記者クラブが作られ、次のように新規加盟条件が決められてい
たのです。
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加盟2社以上の推薦を必要とし、総会で3分の2以上の承認を
必要とする。 ──消費者庁記者クラブ加盟条件
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それでは、中央官庁の記者クラブが占有しているスペースを家
賃として払った場合、どのぐらいの金額になるのかについて、上
杉氏は計算しています。その総額は、年間12億6268億円に
も上ることがわかったのです。しかし、これは賃だけです。
そのほか備品があります。記者室にセットしてある机、椅子、
電話、ファックス、テレビ──外務省にはプラズマビジョンまで
あるのです。それと電気代は全記者クラブにおいて官庁の負担で
中には電話やファックス代まで負担している官庁もあるのです。
さらに記者クラブのために、専従の職員をつける官庁もありま
す。農林水産省の例でいうと、記者クラブの受付要員として3名
を外部委託し、年間1068万円の人件費を払っているのです。
これらの経費を計上すると、年間で記者クラブ関係の経費は次の
金額になることがわかったのです。
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13億4308万円
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民主党は記者クラブこそ事業仕分けするべきです。なぜなら、
記者クラブこそ税金の無駄遣いであり、存在することが百害あっ
て一利もないからです。
既に述べたように、記者クラブ制度は日本にしかないのです。
しかも、それによって外国の特派員記者は何回もひどい目に遭っ
ていて、評判は散々なのです。
ニューヨーク・タイムズの東京支局長であるマーティン・ファ
クラー氏は、西松建設事件について関心を持ち、取材しようとし
たのですが、やはり記者クラブの壁に阻まれたといっています。
彼は日本の記者クラブはカルテルにも似た最も強力な利益集団だ
といっています。かつてニューヨーク・タイムズ紙に在籍したこ
とのある上杉氏によるインタビューの一部です。
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記者クラブによるほとんどの報道が検察のり−ク情報に乗るだ
けで、検察の立場とは明確に一線を画し、なぜこの時期に検察
は民主党代表の小沢氏を夕−ゲットにしているのか、自民党の
政治家は法律上問題のある献金を受けていないのか、といった
視点から独自の取材、分析を行なうメディアはなかったように
思います。西松建設事件の時、私も東京地検に取材を申し込み
ました。しかし、「記者クラブに加盟していないメディアの取
材は受けられない」と拒否されました。以前ウォールストリー
ト・ジャーナル東京支局の記者だった時には、日銀総裁の記者
会見に出席しようと思い、日銀に許可を申請したところ、記者
クラブに申請するよう求められました。記者会見への出席をメ
ディアがメディアに依頼しなければならない、というのは異常
なことです。仕方なく日銀の記者クラブに連絡したところ、当
時の幹事社だった日本経済新聞社から「出席は認めるが、質問
はできない」と言われました。─上杉隆著/小学館101新書
『記者クラブ崩壊/新聞・テレビとの200日戦争』
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──[ジャーナリズム論/45]
≪画像および関連情報≫
●池田信夫氏のブログより/花岡信昭氏説に対する批判
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産経新聞の元政治部長だった花岡信昭氏が、日経BPで「記
者クラブ制度批判は完全な誤りだ」と主張している。昨今の
記者クラブ開放に反対する勇気ある発言、といいたいところ
だが、その論理があまりにもお粗末で泣けてくる。
彼はこう宣言する。
日本の記者クラブは閉鎖的だという主張は完璧な間違いであ
る。アメリカのホワイトハウスで記者証を取得しようとする
と、徹底的に身辺調査が行われ、書いてきた記事を検証され
指紋まで取られる。そのため、記者証取得には何カ月もかか
る。しかし、日本の内閣記者会には日本新聞協会加盟の新聞
社、通信社、放送会社に所属してさえすれば、簡単に入会で
きる。これは「閉鎖性」とは何の関係もなく、アメリカはセ
キュリティ・チェックがしっかりしていて、日本はいい加減
だということである。私がNHKに勤務していたころは、記者
証を政治部の記者に借りて首相官邸の中まで入ったこともあ
る。武器のチェックもしないので、テロリストが記者証をも
ってまぎれ込んだら一発だ。
http://www.asyura2.com/09/hihyo9/msg/601.html
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花岡 信昭氏