田、長妻などの各大臣は記者会見オープン化の公約を一顧だにせ
ず、無視し、今まで通り、記者クラブメディアに対してだけ、記
者会見を行っています。検察庁までオープン化しているのにわれ
関せずの態度です。
国民の意識もこの問題に対する関心は薄いようです。なぜか。
大メディアが一切報道しないからです。メディアは自分たちに都
合の悪いことは報道しないのです。機密費がメディアにも流れて
いることが問題になったときもまったく報道していないのです。
しかし、唯一東京新聞を除いてはです。
したがって、記者会見のオープン化はおそらく菅内閣では実現
しないでしょう。現在菅内閣では、「脱官僚」を事実上廃し、廃
止したはずの事務次官会議も復活させる方向です。微妙な言い回
しながらも、仙谷官房長官はそう発言しています。そんな前言撤
回を恥じない内閣が記者会見のオープン化などやるはずがないと
思います。そしてそのことをメディアは批判しない──当たり前
である──ので、首相が何もいわなくても各省庁のオープン化記
者会見は元のかたちに戻ってしまうでしょう。菅内閣は多くの国
民が最も自民党的と考える「小沢なるもの」を引っ込めて、結局
は自ら民主党の自民党化を進めていることになります。
そういうなかで光っているのは岡田外相です。彼は反小沢であ
りながら、この10ヵ月あまりの間に一度も小沢批判をしていな
いのです。「一人で懸命に闘っておられる小沢幹事長に対し『説
明責任』などいうべきではない」といっています。不起訴の段階
で人を罪人扱いする他の一部の大臣とは一線を画しています。
岡田外相は、普天間問題で戦犯扱いされていますが、在任中に
沖縄返還密約を明らかにし、記者会見をオープン化、さらに民間
人を中国大使に就任させるなど、今まで外務省ができなかったこ
とを仕上げています。しかし、記者クラブメディアの報道は、あ
まりその点について岡田外相を評価していないように見えます。
記者クラブ開放に焦点を合わせて、岡田外相の動きを追ってみ
ましょう。
2010年2月、岡田外相は記者クラブだけに許されてきた閣
議後の「ぶら下がり取材」に応じないと宣言したのです。ぶら下
がり取材とは何でしょうか。当時の朝日新聞の記事を引用してお
きます。
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会見場やホテルなどを使う通常の記者会見とは異なり、記者が
取材対象者を取り囲んで行う取材方式。首相取材では、首相の
横を歩きながら録音やメモをしないで行う方式が定着していた
が、小泉前首相(当時)からカメラの前に立って質問に答える
現在の形になっている。安倍首相(当時)は原則として1日1
回、官邸内でぶら下がり取材を受けている。
──2007−06−08/朝日新聞朝刊/政治
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国民が日常目にする記者会見とは、正式な就任記者会見などを
除くと、首相が官邸で何人かの記者に囲まれ、代表記者が質問す
ることに答えるあの会見風景です。これを現在では、「ぶら下が
り取材」と呼んでいるのです。どうしてこういう形になったので
しょうか。
それは首相官邸が新しくなったことに関係があるのです。それ
まで記者は官邸内部を自由に歩き回ることができたのです。当
然首相と会う機会も増えるので、移動中の首相を呼び止めて、突
発的な取材をすることが普通に行われていたのです。もともとこ
れを「ぶら下がり取材」と呼んでいたのです。
しかし、新しい首相官邸ができると、当然のことながら警備体
制が強化されたのです。これによって、記者の官邸への出入り、
移動は厳しく制限されるようになったのです。そのため邸内を移
動中の首相を呼び止めて行う突発的な取材が困難になり、官邸と
記者クラブの話し合いの結果、現行スタイルが定着したのです。
このぶら下がり取材は、テレビで報道されないので、知らない
人が多いのですが、閣議終了後の各大臣も同じようなスタイルで
あ゛ら下がり取材を受けているのです。
岡田外相はこの閣議後のぶら下がり取材をしないと言明したの
です。これに対して、2月18日付の産経新聞ウェブ版は次のよ
うに批判的に報じています。
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≪岡田外相が閣議後の取材を拒否へ≫
記者クラブ側は、民主党政権の閣議では実質的な議論が行われ
ているとされているため、閣議後の取材機会は重要と主張。し
かし、岡田氏は、2月に入ってからぶら下がり取材に対し「何
もありません」と言うだけで、質問は無視して立ち去るケース
が続いていた。 ──2月18日付の産経新聞ウェブ版
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「なぜ外相だけ話が聞けないのか」──この批判に対し、岡田
外相は次のように反論しています。
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今のお話だけ聞けば何か取材を制限しているように聞こえます
が、全体を見て考えて頂きたいと思います。どこの省庁でオー
プンで、そして1時間近く毎週2回、こういう形で会見をして
いる、そういう大臣がいるだろうかということです。(中略)
閣議直後に官邸内や国会の中であれば、それは一部の人しか参
加できない、端的に言えば記者会の皆さんしか参加できない、
後の人はなかなか入るのが容易ではない。そういう中で、取材
の機会が偏ってしまうので、それよりはこのような会見の場で
オープンで取材機会に偏りがない中でやるべきだというのが私
の基本的な考え方です。 ──上杉隆著/小学館101新書
『記者クラブ崩壊/新聞・テレビとの200日戦争』
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──[ジャーナリズム論/43]
≪画像および関連情報≫
●沈黙の菅官邸──取材制限の方向へ
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菅内閣は「開かれた官邸」を掲げた鳩山前内閣と対照的に、
記者団への取材対応に消極的な姿勢を見せ始めた。8日の就
任記者会見で「取材を受けることで政権運営が行き詰まる状
況も感じられる」と語った首相は9日朝、前政権で通例だっ
た朝のぶら下がりをさっそく拒否。続いて仙谷官房長官の秘
書官が9日、内閣記者会に今後の取材対応案を提示した。内
容は(1)首相の朝夕2回のぶら下がり取材のうち朝の分は
やめ、代わりにフリー記者も含めた記者会見を月1回程度開
く。(2)官房長官の記者会見は1日1回とし、午前の記者
会見は官房副長官が行う──の2つ。いずれも旧自民党政権
の報道対応に比べても大幅に後退した内容だといえる。
──産経ニュース/ウェブ版より
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菅首相就任記者会見