2010年06月22日

●「期待薄い記者会見クラブ開放/菅内閣」(EJ第2839号)

 前回も述べたように、民主党の反小沢系大臣──菅、前原、野
田、長妻などの各大臣は記者会見オープン化の公約を一顧だにせ
ず、無視し、今まで通り、記者クラブメディアに対してだけ、記
者会見を行っています。検察庁までオープン化しているのにわれ
関せずの態度です。
 国民の意識もこの問題に対する関心は薄いようです。なぜか。
大メディアが一切報道しないからです。メディアは自分たちに都
合の悪いことは報道しないのです。機密費がメディアにも流れて
いることが問題になったときもまったく報道していないのです。
しかし、唯一東京新聞を除いてはです。
 したがって、記者会見のオープン化はおそらく菅内閣では実現
しないでしょう。現在菅内閣では、「脱官僚」を事実上廃し、廃
止したはずの事務次官会議も復活させる方向です。微妙な言い回
しながらも、仙谷官房長官はそう発言しています。そんな前言撤
回を恥じない内閣が記者会見のオープン化などやるはずがないと
思います。そしてそのことをメディアは批判しない──当たり前
である──ので、首相が何もいわなくても各省庁のオープン化記
者会見は元のかたちに戻ってしまうでしょう。菅内閣は多くの国
民が最も自民党的と考える「小沢なるもの」を引っ込めて、結局
は自ら民主党の自民党化を進めていることになります。
 そういうなかで光っているのは岡田外相です。彼は反小沢であ
りながら、この10ヵ月あまりの間に一度も小沢批判をしていな
いのです。「一人で懸命に闘っておられる小沢幹事長に対し『説
明責任』などいうべきではない」といっています。不起訴の段階
で人を罪人扱いする他の一部の大臣とは一線を画しています。
 岡田外相は、普天間問題で戦犯扱いされていますが、在任中に
沖縄返還密約を明らかにし、記者会見をオープン化、さらに民間
人を中国大使に就任させるなど、今まで外務省ができなかったこ
とを仕上げています。しかし、記者クラブメディアの報道は、あ
まりその点について岡田外相を評価していないように見えます。
 記者クラブ開放に焦点を合わせて、岡田外相の動きを追ってみ
ましょう。
 2010年2月、岡田外相は記者クラブだけに許されてきた閣
議後の「ぶら下がり取材」に応じないと宣言したのです。ぶら下
がり取材とは何でしょうか。当時の朝日新聞の記事を引用してお
きます。
―――――――――――――――――――――――――――――
 会見場やホテルなどを使う通常の記者会見とは異なり、記者が
 取材対象者を取り囲んで行う取材方式。首相取材では、首相の
 横を歩きながら録音やメモをしないで行う方式が定着していた
 が、小泉前首相(当時)からカメラの前に立って質問に答える
 現在の形になっている。安倍首相(当時)は原則として1日1
 回、官邸内でぶら下がり取材を受けている。
       ──2007−06−08/朝日新聞朝刊/政治
―――――――――――――――――――――――――――――
 国民が日常目にする記者会見とは、正式な就任記者会見などを
除くと、首相が官邸で何人かの記者に囲まれ、代表記者が質問す
ることに答えるあの会見風景です。これを現在では、「ぶら下が
り取材」と呼んでいるのです。どうしてこういう形になったので
しょうか。
 それは首相官邸が新しくなったことに関係があるのです。それ
まで記者は官邸内部を自由に歩き回ることができたのです。当
然首相と会う機会も増えるので、移動中の首相を呼び止めて、突
発的な取材をすることが普通に行われていたのです。もともとこ
れを「ぶら下がり取材」と呼んでいたのです。
 しかし、新しい首相官邸ができると、当然のことながら警備体
制が強化されたのです。これによって、記者の官邸への出入り、
移動は厳しく制限されるようになったのです。そのため邸内を移
動中の首相を呼び止めて行う突発的な取材が困難になり、官邸と
記者クラブの話し合いの結果、現行スタイルが定着したのです。
 このぶら下がり取材は、テレビで報道されないので、知らない
人が多いのですが、閣議終了後の各大臣も同じようなスタイルで
あ゛ら下がり取材を受けているのです。
 岡田外相はこの閣議後のぶら下がり取材をしないと言明したの
です。これに対して、2月18日付の産経新聞ウェブ版は次のよ
うに批判的に報じています。
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 ≪岡田外相が閣議後の取材を拒否へ≫
 記者クラブ側は、民主党政権の閣議では実質的な議論が行われ
 ているとされているため、閣議後の取材機会は重要と主張。し
 かし、岡田氏は、2月に入ってからぶら下がり取材に対し「何
 もありません」と言うだけで、質問は無視して立ち去るケース
 が続いていた。    ──2月18日付の産経新聞ウェブ版
―――――――――――――――――――――――――――――
 「なぜ外相だけ話が聞けないのか」──この批判に対し、岡田
外相は次のように反論しています。
―――――――――――――――――――――――――――――
 今のお話だけ聞けば何か取材を制限しているように聞こえます
 が、全体を見て考えて頂きたいと思います。どこの省庁でオー
 プンで、そして1時間近く毎週2回、こういう形で会見をして
 いる、そういう大臣がいるだろうかということです。(中略)
 閣議直後に官邸内や国会の中であれば、それは一部の人しか参
 加できない、端的に言えば記者会の皆さんしか参加できない、
 後の人はなかなか入るのが容易ではない。そういう中で、取材
 の機会が偏ってしまうので、それよりはこのような会見の場で
 オープンで取材機会に偏りがない中でやるべきだというのが私
 の基本的な考え方です。  ──上杉隆著/小学館101新書
     『記者クラブ崩壊/新聞・テレビとの200日戦争』
―――――――――――――――――――――――――――――
              ──[ジャーナリズム論/43]


≪画像および関連情報≫
 ●沈黙の菅官邸──取材制限の方向へ
  ―――――――――――――――――――――――――――
  菅内閣は「開かれた官邸」を掲げた鳩山前内閣と対照的に、
  記者団への取材対応に消極的な姿勢を見せ始めた。8日の就
  任記者会見で「取材を受けることで政権運営が行き詰まる状
  況も感じられる」と語った首相は9日朝、前政権で通例だっ
  た朝のぶら下がりをさっそく拒否。続いて仙谷官房長官の秘
  書官が9日、内閣記者会に今後の取材対応案を提示した。内
  容は(1)首相の朝夕2回のぶら下がり取材のうち朝の分は
  やめ、代わりにフリー記者も含めた記者会見を月1回程度開
  く。(2)官房長官の記者会見は1日1回とし、午前の記者
  会見は官房副長官が行う──の2つ。いずれも旧自民党政権
  の報道対応に比べても大幅に後退した内容だといえる。
              ──産経ニュース/ウェブ版より
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菅首相就任記者会見.jpg
菅首相就任記者会見
posted by 平野 浩 at 04:17| Comment(1) | TrackBack(0) | ジャーナリズム論 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
大臣と省庁の力関係が如実に表れている結果だと思います。財務省:現総理大臣も出来なかった事が野田大臣に期待する方が無理。国交省:口から出まかせの思いつき大臣に何が出来るのかなぁ官僚からは口から出まかせ大臣で馬鹿にされてるように見えます。前原大臣はヨン様好みのおばちゃま受けは良いみたいですが肝心の国交省は成果が見えません。厚労省:長妻大臣は社会保険庁長官では力を発揮できるかも知れませんが、厚労大臣では荷が重過ぎ、官僚の言う事を丸のみしなければやっていけません。初めは威勢が良かったが初めだけで終わりました
Posted by MA at 2010年06月22日 21:30
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