2010年06月08日

●「記者クラブ開放はなぜできないのか」(EJ第2829号)

 「記者クラブのオープン化」──EJでも何度か取り上げてい
ますが、不思議なほど議論が盛り上がらないテーマなのです。民
主党は「記者クラブのオープン化」をマニュフェストに掲げて昨
年の衆院選を制したのですが、大臣によってそれへの対応の姿勢
が大きく異なっています。
 現在、記者クラブ開放の全体状況がどうなっているのかについ
て知る国民はいないと思います。また、記者クラブがどういうも
のかについて知る人も少ないと思います。どうしてかというと、
メディアがそれを報道しないからです。それどころかメディアは
記者クラブという存在そのものも隠そうしています。メディアは
都合の悪いことは報道しないのです。
 現在、民主党のマニュフェストというと、「財源の根拠なきバ
ラマキ」といわれています。奇怪なことに民主党の議員自体も半
ばそれを認めてしまっています。しかし、行政の無駄の排除は短
期間でできるものではありません。まして政権を取ったら、一年
以内にすべてやるといっているわけではないのです。
 民主党が約束したマニフェストの中に、財源がなくてもできる
ものはたくさんあるのです。「記者クラブのオープン化」もその
ひとつです。しかし、概して民主党の議員たちはそういうことに
は熱心ではないのです。もし、そういうことに民主党が熱心に取
り組み、次々と片づけていたら、民主党の支持率は少々のことで
は揺るがなかったはずです。
 「記者クラブのオープン化」に一番熱心に取り組んだのは、岡
田克也外相(当時)です。2009年9月29日、岡田外相は記
者クラブ開放の記者会見を行なっています。そのとき、記者たち
に配付された資料には次のように書かれてあったのです。
―――――――――――――――――――――――――――――
 外務省では、国民の知る権利と行政の説明責任の双方を担保す
 るため、9月18日付で『大臣会見に関する基本的な方針』を
 岡田大臣が発表し、すべてのメディアに記者会見を開放するこ
 ととしました。しかし、外務省記者会(霞クラブ)より留保の
 申し入れがあったため、その実施を見合わせていましたが、本
 日に至るまで、霞クラブから記者会見の開放について明確な見
 解は示されませんでした。そこで、改めて、別添の『基本的な
 方針』に基づき、本日より大臣・副大臣等の記者会見をすべて
 のメディアに開放することとしましたのでお知らせします。
              ──上杉隆著/小学館101新書
     『記者クラブ崩壊/新聞・テレビとの200日戦争』
―――――――――――――――――――――――――――――
 岡田外相は、大臣に就任すると、すぐ外務省幹部に外務省の記
者会見をすべてのメディアに開放するよう指示したのです。しか
し、外務省記者会「霞クラブ」より留保──しばらく待ってくれ
という要請があったのですが、いくら待っても何の音沙汰もない
ので、今日からすべてのメディアに記者会見を開放すると発表し
たのです。岡田外相は党としての約束を守ったのです。
 実はこの会見が行われた2009年9月29日の記者会見の始
まる30分前の午後5時30分の段階では、外務省の当時100
席ある会議室にはフリーの記者と外国メディアしかいなかったの
です。いつもであれば、この時間にはよい席を取ろうとして席の
取り合いをするのが常なのに、外務省記者会の記者たちは一人も
いなかったのです。そしてこの状態は、会見開始の5分前になっ
ても変わらなかったのです。
 どうしてこんなことになったのかというと、大臣の記者会開放
の方針に読売新聞の記者などが反対し、会見ボイコットをしよう
としていたのです。これは実に理屈に合わないことです。
 メディアの記者たる者は、役所に対して「国民の知る権利」の
ために情報公開を迫るのが仕事であるのに、国民の知る権利に異
議を唱えていることになるからです。外務省記者会の記者は、結
局はボイコットはまずいと判断して、記者会見に参加したようで
すが、一流メディアの記者とは思えないまことに児戯に等しい行
為であったといえます。
 しかし、本当の意味での記者クラブのオープン化を実施したの
は外務省だけであり、金融庁や総務省は開放はしたものの、いろ
いろな制約がついている開放なのです。
 金融庁は既に述べたように金融記者クラブは大臣の要請にもか
かわらず開放には同意しないので、亀井金融相(当時)の判断で
記者クラブとフリー記者のそれぞれに対して2回会見を行ってい
る状態なのです。これは本当の意味での開放ではないのです。
 総務省は1月から記者クラブに加盟していないフリーのメディ
アに対して総務相の定例会見を開放したものの、大臣に質問でき
るのは総務省記者クラブ記者だけであり、フリーのメディアが質
問をするには事前に記者クラブの承認がないとできないのです。
実際にはなかなか承認はしないので、質問権なしでフリー記者の
参加を認めたかたちなのです。妥協の産物といえます。
 もうひとつは、総理大臣記者会見のフリー記者への一部開放で
す。鳩山前首相は、かねてから会見をフリー記者に開放すること
に意欲を示していたのですが、平野官房長官(当時)が反対して
実現できず、今年の3月25日になって一部開放されたのです。
これについては、改めて取り上げますが、それほど記者クラブの
抵抗は強いのです。
 その他の省庁の記者クラブに関しては、私の知る限り、何も開
放されていないのです。大臣も知らん顔です。このたび総理に就
任した菅直人財務相の管轄下の財務省の記者クラブなどはまるで
開放されていないのです。菅氏は何もしていない。彼にとってこ
の公約は関心のないテーマのようです。
 そうなると、この公約をきちんと仕上げたのは岡田前外相だけ
ということになります。彼は外務省の「密約」調査もきちんと仕
上げています。そういう意味で岡田氏は立派ですが、他の大臣は
何をしているのでしょうか。それは大臣の資質をあらわしている
と思うのです。      ―──[ジャーナリズム論/33]


≪画像および関連情報≫
 ●北海道の地域誌「北方ジャーナル」における記者クラブ問題
  ―――――――――――――――――――――――――――
  東京の政府機関関係の記者クラブをめぐっては、3月26日
  に首相官邸で行われた鳩山由紀夫首相の記者会見が初めて記
  者クラブ非加盟のメディアやフリーランス・ジャーナリスト
  に広く開放される出来事がありましたが、省庁ごとにまだバ
  ラつきも残っています。総じて記者クラブ問題は、クラブ加
  盟の新聞・放送の既存メディアと非加盟の雑誌、ネットメデ
  ィアやフリーランス・ジャーナリストとの対立構図が目立ち
  がちです。また、開放の方法論については、基本的にいずれ
  かのメディア団体に所属するメディア企業の一員か寄稿者で
  あることを参加資格にしています。日本新聞協会加盟のマス
  メディアかそれに準じるメディアの所属という従来の参加資
  格から広がりはしましたが、プロに限るという枠組み自体は
  変更がなく、NPOや個人ブロガーは排除されていることに
  変わりはない、との指摘もあります。
   http://d.hatena.ne.jp/news-worker/20100328/1269753166
  ―――――――――――――――――――――――――――

開放された外務省の大臣会見.jpg
開放された外務省の大臣会見
posted by 平野 浩 at 04:17| Comment(2) | TrackBack(0) | ジャーナリズム論 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
内鬱外患LIVEでやっています
Posted by MA at 2010年06月08日 19:54
記者クラブの閉鎖性が問題。

だから、以下の問題が発生する。

日経・読売は虚報「石川議員手帳 ホテル名メモ 現金授受と同じ日」を出し、翌日小さな訂正記事を出した。(石川議員が5000万円もらったと思わせたまま)

この記事は、検察→共同通信→日経・読売(その他の新聞にも配信されたが、2紙以外は怪しい情報なので記事にしなかった)

上記詳細を以下のブログに掲載。ぜひご覧下さい。

「一市民が斬る!!」

http://civilopinions.main.jp/2010/05/t.html
Posted by 世直し人 at 2010年06月10日 10:23
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