じであることです。いや、同じであるといういい方は正しくない
――同じにしているというべきでしょう。
人に聞いた話ですが、米国の予算においては歳入と歳出は違う
のが普通なのだそうです。そして歳入の不足分があるときは「財
政赤字」と明記されているそうです。これを埋めるのは国債であ
り、こういう会計のやり方であれば、「国債は借金である」こと
が誰の目にも明らかであって、大変わかり易いのです。
しかし、日本では「歳入の部」に「税収」と並んで「国債」の
項目があるのです。これはおかしな話です。国債は借金であるの
に歳入の部――すなわち、収入の部に計上されているからです。
赤字が収入の部に計上されている――これは基本的におかしなこ
とですが、これが当たり前なこととして通っているところに日本
財政の借金体質を見る思いがします。当然のように毎年借金をし
ているという感じなのです。
国債を償還するための借換債が100兆円ある――この事実を
認識している国民は少ないと思います。国民の感覚では毎年30
兆円前後の赤字国債を発行せざるを得ないことはわかっていても
その他に国債の償還のためにさらに100兆円以上の国債発行を
しているとは思っていないでしょう。国債償還費が特別会計で処
理されているため、国民には見えにくいのです。
日本は今後毎年100兆円以上の借換債に加えて30兆円前後
の赤字国債を発行し続けなくてはならないのです。それに道路建
設などのための建設国債もそれに加わるのです。こうなってくる
と、いかに日本は金融資産を持っているといっても安心はできな
いといえます。長期金利の上昇が心配だからです。
森本亮氏は、長期金利の上昇による債券クラッシュが起きる前
に、カルロス・ゴーン氏のような人が現われて、大なたを振るっ
てくれることが大事であるとして、国債の両刃の剣の怖さを知り
抜いている福井日銀総裁に次のように期待をかけています。
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福井総裁はかつて自分の立場を「両手を縛られてボクシングを
するようなものだ」と語ったことがある。福井総裁は大学時代
には、ハンドボール部の主将をつとめた方だけに、スポーツを
見る目、万事に通ずるということか。とにかく、最後のデフレ
ファイターである福井総裁が「両手を縛られたボクサー」から
抜け出す道は、「忍耐と寛容」から脱皮して、国債は今や「世
紀の愚策」であり、「両刃の剣」であることを堂々と口にする
ことではなかろうか。
――森本亮著『日本国破産に最終警告』
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その福井日銀総裁は、3月9日にコップ一杯の水でいい患者に
バケツ一杯の水を与えるに等しい量的緩和の解除を宣言して、既
に縛られた縄を解いています。しかし、最近の日銀のやっている
ことには、いささか懸念すべきことが多いのです。
そのひとつは、日銀が2003年度から会計ルールを変更した
ことがあげられます。ところで日銀、すなわち日本銀行は、れっ
きとした株式会社なのです。1960年に店頭登録されており、
1株の額面は100円、発行総額は1億円です。しかし、日銀株
の55%は財務大臣が保有していて、株主には議決権がなく、出
資総会(一般の株主総会)にも議決権はないのです。
2003年まで日銀は保有国債の評価法について「低価法」と
いう会計ルールを持っていたのです。低価法とは、取得原価と期
末時点での時価(時価とは期末時点での取得に通常要する価額で
す)とを比較して、いずれか低い方の価額で債券を評価する方法
です。つまり、低価法をとると、毎期評価損益を計上する必要が
あるのです。
これに対して「原価法――償却原価法」とは、期末時点で保有
する債券を取得原価で評価する方法をいうのです。この場合、期
末時点で保有する債券について、取得時から値下がりしていたと
しても、その値下がりについて損失を計上しなくていいのです。
日銀としては、原価法を採用したことによって、市中銀行が保
有している国債や株式――本来やってはならないことを引き受け
易くしたことは確かであり、そのための会計ルールの変更である
といわれても反論はできないと思うのです。
2005年12月現在、日銀の株価は14万6000円です。
日銀株価の最高値は、1988年12月の75万5000円でし
たので、実に約80%ダウンしたことになります。それに日銀の
現在の自己資本比率は7.33%であり、8%を割り込んでいる
のです。どうして、こうなったのでしょうか。
それは、日銀が財政法第5条で禁じられている「日銀による国
債引き受け」をやっているからです。次の2004年12月2日
付、日本経済新聞の記事を読んでください。
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政府・日銀は来年度以降の国債の大量償還に備えた協力体制を
強化する。現在はオペなどで日銀が市中購入した国債が満期を
迎えた際、政府が1年に限って短期国債を発行。日銀に引き受
けてもらって現金償還を先延ばししているが、政府・日銀はこ
の期間をもう1年延長する方向だ。過去に積み上がった国債の
償還を段階的に進める狙い。ただ、例外的に認められる「日銀
の国債引き受け」が拡大する懸念がある。
――2004年12月2日付、日本経済新聞より
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日銀が保有する長期国債は、償還期が来たら現金で償還される
のがルールです。ところが日銀はそれをしないで、1年間の短期
国債で借り換え、現金償還を1年延期したのです。これは事実上
の日銀による国債引き受けになります。上記の日経の記事はこの
方法が常態化することを懸念しているのです。なぜなら、そうな
ると、国債の相場が急落するからです。それに2008年には長
期国債の償還が激増するのです。 ・・・[日本経済41]
≪画像および関連情報≫
・財政法第5条
「すべて、公債の発行については、日本銀行にこれを引き受
けさせ、又、借入金の借入については、日本銀行からこれを
借り入れてはならない。但し、特別の事由がある場合におい
ては、国会の議決を経た金額の範囲内ではこの限りでない」
・財政法では、このように日銀国債の引き受けは禁じている。
しかし、日銀の「乗り換え短期国債」の引き受けは例外規定
に基づき、国会の議決を経て引き受け可能となっている。
