2010年06月04日

●「メディア全般に機密費が渡っている」(EJ第2827号)

 「記者懇」というものがあります。これは表向きの会見とは別
に、大臣をはじめとする内閣関係者が夜回り記者たちに対し、オ
フレコを前提に話す懇談会のことです。なお、記者懇は与党の幹
部も開いています。
 以下にご紹介するのは、自民党時代に官邸がやっていた話であ
り、民主党がやっているかどうかはわかりません。あらかじめお
断わりしておきます。情報源は、『週刊ポスト』6/4号(上杉
隆/本誌取材班)です。
 オフレコといってもそれに参加するすべての記者は、ICレコ
ーダーを回し、後でそれを文章に書き起こしてメモ化します。こ
れを「記者懇メモ」というのです。
 記者は文章化した記者懇メモを上司のキャップにメールで送り
ます。そのとき「これはオフなので、絶対に表に出さないでくだ
さい」と断り書きを付けて送るのです。
 それを受け取ったキャップは、同じように断り書きを付けてデ
スクに送ります。そして、デスクは政治部長に、政治部長は編集
局長に順次送られます。記者懇メモは、大勢の政治部記者から上
がってくるので、相当な量になります。
 いわゆる政局記事は、こうしたメモを基にして書かれているの
ですが、このメモはもうひとつ重要な働きをするのです。それは
編集局長がそれらのメモを官邸に上納するからです。
 このメモを読むと、与党の各派閥や他党の動向が手に取るよう
にわかるのです。官邸にとってはとくに反主流派の政権批判や官
邸内でしか知りえない情報を野党の幹部が話しているような場合
どこから情報が漏れたかを調べることができるのです。
 官邸としては、一か月に1回程度の割合で編集局長などの新聞
社の幹部を食事に招待し、情報の対価として機密費から100万
円程度を支払うのです。このシステムはそれを作り上げた官房長
官の名前をとって、「Nシステム」──おそらくNは野中──と
呼ばれていたのです。なお、Nシステムといわれる前は「Gシス
テム」──おそらくGは後藤田──と呼ばれていたのです。
 それだけではないのです。これとは別に各記者クラブから一名
ずつ総勢10名ほどが参加する官房長官招待の食事会があるので
す。この帰りには官房長官の地元の銘菓などが参加者ひとり一人
にお土産として渡されるのですが、ただの銘菓ではなく、その中
に100万円程度の現金が入っていたとされています。もちろん
お金は機密費から出されています。
 このように新聞・テレビは機密費の毒に冒されているのです。
野中元幹事長はこれを「毒まんじゅう」と呼んでいますが、国民
に大きな影響力を持つ言論界が毒まんじゅうに汚染されているこ
とは、メディアの伝えることに信頼が置けなくなり、ジャーナリ
ズムの崩壊の原因になります。このようなカネを受け取っている
メディアに小沢氏の政治とカネの問題を正義ぶって批判する資格
などないと思います。
 しかも、毒まんじゅうをもらったのは、メディアの上層部だけ
ではないのです。彼らはメディア全体に「共犯関係」を形成する
ため、次のようなことをやっているのです。これについて、『週
刊ポスト』6/4号は次のように書いています。
―――――――――――――――――――――――――――――
 機密費を受け取った人間が、ある日、社内の後輩記者と食事し
 ながら囁く。「大変だろうから、お小遣いとっといて」。上司
 のポケットマネーかと思って受け取ると、後輩記者もその日か
 ら「毒まんじゅう」を食らった仲間入りだ。あるいは、上司が
 新任の部下や見込みのある若手記者を官房長官らに引き合わせ
 る。それぞれのお土産には、またもや菓子とともに現金が入っ
 ている。           ――『週刊ポスト』6/4号
―――――――――――――――――――――――――――――
 これに加えて、自民党──とくに経世会周辺では「就職陳情」
と呼ばれるものがあるのです。政治家自身の子息や後援者などか
らの就職依頼に関して、新聞・テレビへの就職の口利きをしてい
るのです。新聞・テレビに政治家の子息が異常に多いのはそのた
めです。中には、そのように就職した子息たちの中には、最初か
ら「色の消えたスパイ」として活躍している者もいるのです。
 こうした機密費を介したメディアとの「共犯関係」は自民党政
権を通じて強固に構築されてきたのです。それは習慣化しており
それが悪いことだとは誰も考えていないのです。
 だからこそ、元自民党官房長官の野中広務氏の機密費発言に対
して、新聞・テレビが一切報道しないのは、自らにやましいこと
があるからです。しかし、自分たちの都合の悪いことは報道しな
いという姿勢は、メディアの自殺行為といえます。
 しかし、なっとくできないのは、政権交代した民主党の平野官
房長官が公約であるはずの機密費の公開に背を向け、記者クラブ
の存続にも力を貸していることです。とくに官邸については再三
の申し入れにもかかわらず、会見のオープン化に抵抗しているの
です。これは完全に公約違反です。
 マニフェストに書かれていることの多くは、財源の問題もあり
すぐには着手できないものも少なくないでしょうが、機密費の公
開や記者クラブの廃止などはその気になればできるはずです。つ
まり、やればできることをやらないのです。こんなことを続けて
いると、真の民主党支持者まで民主党から離れてしまいます。ま
さか自民党時代と同じことをやっているわけではないでしょうが
何をもたもたしているのでしょうか。
 上記の『週刊ポスト』の記事は、既出のフリージャーナリスト
上杉隆氏によるものですが、現在上杉氏は、地上波民放テレビ各
局からの出演依頼はゼロになっているそうです。どうやら「上杉
を使うな」という談合が行われているからです。テレビ局は、メ
ディアを批判する者をテレビに出さないのです。上杉氏はメディ
アの敵なのです。上杉氏だけではないのです。今までにもメディ
アに批判的な多くの評論家たちが外されているのです。
             ―──[ジャーナリズム論/31]


≪画像および関連情報≫
 ●井沢元彦/上杉隆会談/平野官房長官は何をしている!?
  ―――――――――――――――――――――――――――
  上杉:鳩山さんも記者クラブ側も内閣報道室も当初はオープ
     ン化は仕方ないとあきらめていたんです。ところが、
     直前になっても平野博文官房長官が準備をしている様
     子がないので、内閣記者会(官邸記者クラブ)が「ど
     うするのか」と聞いたら、平野さんは限定的な開放に
     留めるよう指示したようなんです。しかもその後、平
     野さんは「自分は開けろつて言ったのに、内閣記者会
     が反対して開けなかった」って言ったものだから、内
     閣記者会が怒っちゃって。
  井沢:それは怒るね。平野長官はなぜそうしたんですか。
  上杉:オープンにすると記者クラブが怒る、政権の最初から
     敵を作るのはよくないと役人に騙されたんでしょう。
  井沢:それに対して岡田克也外相と亀井静香金融相はオープ
     ンにしていますよね。        ──上杉隆著
           『記者クラブ崩壊』/小学館101新書
  ―――――――――――――――――――――――――――

野中広務元官房長官.jpg
野中 広務元官房長官
posted by 平野 浩 at 04:08| Comment(0) | TrackBack(0) | ジャーナリズム論 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前: [必須入力]

メールアドレス: [必須入力]

ホームページアドレス:

コメント: [必須入力]


この記事へのトラックバック
RDF Site Summary