2010年05月27日

●「訴因変更を繰り返す検察の公判戦術」(EJ第2821号)

 2010年5月22日、ほとんどのメディアが「小沢氏再び不
起訴──21日」を報道しているなかで、次のことが小さく報道
されたのをご存知でしょうか。
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 西松建設違法献金事件で公判中の小沢一郎民主党幹事長の元公
 設第1秘書、大久保隆規被告について、東京地裁(登石郁朗裁
 判長)は21日、西松建設事件の起訴内容に陸山会事件を加え
 る訴因変更を認める決定をした。すでに始まっている西松事件
 の公判のなかで、陸山会事件の審理がされることになった。
           ──2010年5月21日付、産経新聞
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 この記事を読んで、これが何を意味するかわかる人は少ないと
思うのです。大久保隆規被告がどのような訴因で起訴されたかと
いうと、2009年3月に西松建設事件で、2003年〜06年
に同社から受けた計3500万円の献金を「ダミー団体」から受
けたと偽って政治資金収支報告書に記載したというものです。
 しかし、大久保隆氏は今年の1月16日に陸山会の土地購入を
めぐって同報告書に虚偽記載した容疑で再び逮捕されているので
す。そのため、検察としては西松建設事件と重複する04、05
年分について、2009年3月の訴因に加えたいと、東京地裁に
訴因変更を請求していたのです。
 一見当然のことのように思えます。しかし、これにはウラがあ
るのです。実は大久保被告の裁判は既に判決を出せるところにき
ており、今年の3月にも判決が出る予定だったのです。そのため
大久保被告の弁護団は「既に公判前整理手続きで争点整理を終え
ており、起訴内容の変更は許されないと」と反論していたのです
が、21日に東京地裁は検察側の主張を認めたという報道です。
 まず、大久保被告の最初の訴因での公判は昨年の12月以降2
回にわたって開かれ、大久保被告無罪の判決が出るところにきて
いたのです。それは献金を受けた団体が「ダミー団体」ではない
事実が検察側証人から明らかにされたからです。この詳細につい
ては、2010年3月9日付のEJ第2769号を参照していた
だきたいと思います。
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http://electronic-journal.seesaa.net/article/143116270.html
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 実は今年の1月の時点で検察は新しい証言が飛び出し、苦悩し
ていたのです。このままいくと大久保被告に無罪の判決が出る可
能性がきわめて高くなったからです。小沢事務所が献金を受けた
2つの団体には実態があり、西松建設のダミー団体ではないこと
が証言されたからです。
 それに加えて、大久保被告は特捜部による取り調べで完黙して
いるのです。この場合は、裁判での大久保被告の陳述がそのまま
証拠として採用されるのです。これについては、リクルート事件
のところで述べた通りです。さらに大久保被告弁護団は経験豊富
なベテラン弁護士が揃っており、強力なのです。
 もし、大久保被告に無罪判決が出ると、ただでさえ検察の暴走
が批判されているときであり、検察の権威は地に落ちてしまうこ
とは必至です。そこで検察は何をやったのでしようか。
 石川議員らが逮捕されたのは1月15日ですが、大久保氏につ
いては、この容疑で逮捕する予定はなかったのです。しかし、検
察は判決をとりあえず伸ばす必要があると考えて、急遽大久保氏
を逮捕したのです。3人のうち大久保氏の逮捕だけが一日遅れた
ことがそれを物語っています。
 大久保氏逮捕の直後、検察は東京地裁に大久保被告のそれまで
の訴因に今回の陸山会事件を加える訴因変更を請求しています。
なぜなら、これによって3月に予定されていた判決を合法的に延
期できることと、それまでの訴因でたとえ無罪でも陸山会事件で
有罪の判決が出れば無罪判決の屈辱は避けられると考えたものと
思われるのです。
 実はこういうテクニックを検察をよく使っているのです。とく
に無罪判決が出そうな事件ではよく使われるのです。佐藤栄佐久
事件でも、郵便制度悪用事件でも似たようなことを検察は行って
いるのです。こんなことをやっていると、冤罪はこれからも次々
に出てくるものと思われます。
 その検察の訴因変更を東京地裁は21日に認めたのです。これ
によって検察の狙い通りになったわけです。しかし、これはいか
にもその場逃れの措置であり、単なる判決の先延ばしに過ぎない
のです。おそらく検察が有罪を勝ち取るとする陸山会事件でも検
察は敗れる可能性が出てきているのです。
 正しい判断というものは、正しい情報や判断をするのに十分な
情報に基づいて行われるものです。ところが今回の小沢氏を巡る
事件について新聞やテレビなどのメディアは、正しい情報を意図
的に歪めて報道し、正しい判断に必要な情報の多くの部分をあえ
て報道しないという姿勢を感じます。これでは、世論は間違った
方向に誘導されてしまうことになります。
 そのひとつの例として先の検察審査会の小沢氏に対する「起訴
相当」の議決についての報道があります。オリーブ=X!ニュー
スはこれについて次のように述べています。
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 郷原信郎氏が、あるテレビ番組で、(検察審査会の)起訴相当
 の中身を説明したら、全員が驚いたそうだ。当然だ。マスコミ
 は、検察審査会の議決の中身抜き・吟味抜きで、「小沢氏はま
 だ居直るのか」(朝日)「全員一致は重い」(毎日)など、煽
 るだけ煽ったのだ。マスコミは、関東軍の従軍記者として「戦
 勝」報道をし、国民を欺いたのだ。その前に、読売と毎日は、
 21億円がどこに消えたのかの検証(=敗戦)報道をすべきな
 のだ。      ──5.22付、オリーブ=X!ニュース
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             ―──[ジャーナリズム論/25]


≪画像および関連情報≫
 ●なぜ、大久保秘書まで逮捕したのか
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  小沢一郎民主党幹事長の公設第1秘書、大久保隆規容疑者の
  逮捕についての記者会見は1月16日正午から、東京・霞が
  関の東京地検で開かれ、佐久間達哉特捜部長が約30人の記
  者の質問に答えた。大久保秘書はすでに西松建設の違法献金
  事件で起訴され、東京地裁で公判中。このため、今回は逃亡
  の恐れや証拠隠滅の可能性は低いのではないかとの質問に対
  し、佐久間部長は「石川(知裕衆院議員)、池田(光智・元
  私設秘書)の両容疑者と逮捕時期にずれはあったが、基本的
  には一連の事件とみられる。共犯者間で罪証隠滅されるおそ
  れはあり、逮捕せざるを得なかった」と説明した。
      http://www.asyura2.com/10/senkyo77/msg/662.html
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大久保隆規氏.jpg
大久保 隆規氏
posted by 平野 浩 at 04:11| Comment(0) | TrackBack(0) | ジャーナリズム論 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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