2010年05月24日

●「フェアでない、ためにする新聞報道」(EJ第2818号)

 宮崎県で発生した家畜伝染病口蹄疫は、日を追うにつれて深刻
な様相を呈しつつあります。しかし、気になるのは、マスコミが
これを政権バッシングの道具として使いはじめていることです。
 宮崎口蹄疫関連の新聞各紙のタイトルをいくつか上げてみるこ
とにしましょう。
―――――――――――――――――――――――――――――
       「政府の対応の遅れに対する不満」
           ──5月19日の毎日新聞
       「初動遅れ/感染拡大」
           ──5月20日の産経新聞
―――――――――――――――――――――――――――――
 いずれも政府の対応の遅れを批判する論調になっています。し
たがって、この記事を読むといかにも与党民主党はモタモタして
いるという印象を受けてしまいます。実際にそういうところはな
いとはいいませんが・・・。
 さらに5月18日夕刻の某民放ニュースは、宮崎2区選出の自
民党江藤議員が、4月22日の国会審議で激しく政府の対応をな
じる場面の映像を放映し、いかにも政府の対応の悪さを印象づけ
ています。しかし、公式には、4月20日にコトが発覚している
のです。それを22日に取り上げて政府を批判する──野党だか
ら仕方がないのかもしれませんが──これはいささか性急過ぎる
のではないでしょうか。
 しかし、本当のところはどうなのでしょうか。
 最初に強調しておきたいことは、家畜伝染病予防法ではその初
動の措置及びまん延防止のための措置は、県知事に責任があると
いうことをです。新聞・テレビではこのことをいわないか、ぼか
して報道しており、いかにも国に責任があるような印象を与えて
います。家畜伝染病予防法には次の条文があるのです。
―――――――――――――――――――――――――――――
 都道府県知事及び市町村長は、特定家畜伝染病防疫指針に基づ
 き、この法律の規定による家畜伝染病の発生の予防及びまん延
 の防止のための措置を講ずるものとする。
  ──家畜伝染病予防法/特定家畜伝染病防疫指針第3条の2
―――――――――――――――――――――――――――――
 それでは、宮崎県は口蹄疫の発生をいつ知ったのでしょうか。
5月18日付の読売新聞は次のように伝えています。
―――――――――――――――――――――――――――――
 宮崎県家畜保健衛生所が3月31日に4頭の水牛に発熱や下痢
 などの症状が出ているのを確認したが、「普段の下痢」と判断
 して口蹄疫の可能性を疑うこともなく、農林水産省には報告し
 なかった。この水牛農家から600メートル離れた繁殖牛農家
 で4月9日に口の中がただれた牛が1頭見つかった。そして東
 国原宮崎県知事に報告が上がったのが、4月20日であった。
―――――――――――――――――――――――――――――
 この経緯を知ると、3月31日の時点はともかくとして、4月
9日の時点で宮崎家畜保健衛生所は東国原知事に報告を上げる必
要があったと思います。いずれにしても知事への報告が遅れたこ
とは明らかに県の手抜かりであることは確かです。
 ところで、当の東国原知事のブログ「そのまんま日記」には、
次のような記述があります。
―――――――――――――――――――――――――――――
 4月20日/家畜伝染病である「口蹄疫」の疑似患畜が県内で
 確認された。県と農水省では、直ちに口蹄疫防疫対策本部を設
 置し、家畜伝染病予防法及びこれに基づく防疫要領に沿って、
 適切かつ迅速な対応・措置を行っている。「そのまんま日記」
―――――――――――――――――――――――――――――
 これによると、農水省は4月20日に防疫対策本部を設置して
いるのです。東国原知事の場合、4月9日の時点で知事に報告が
上がっていないことは知事の責任ですが、国としては、知事に報
告が上がったその日に直ちに対策本部を立ち上げているのですか
ら、遅いといわれることはないはずです。
 しかし、4月22日の国会審議で、自民党の江藤議員が質問に
立ち、農水省が20日に対策本部を立ち上げたのが「遅い」とな
じっているのです。なぜ、遅いのでしょうか。
 口蹄疫牛の発生地域は、江藤議員の選挙地盤であり、江藤氏は
20日以前に後援者(=育牛農家)から口蹄疫の発生情報を受け
西川議員自身4月20日に現地調査をしているのです。それなの
に、知事に報告があった4月20日に政府が対策本部を立ち上げ
たのを、遅かったと批判するのはおかしいではないでしょうか。
 それを5月18日になって、某テレビ局が西川議員の国会質問
を映像で流しているのです。この映像は4月22日のものなので
すが、テレビの映像を見る人はそんなことはわからないので、対
策本部立ち上げ以後の政府の対応の遅さを自民党が批判している
と誰でも思ってしまいます。
 22日の国会での議事録では、宮崎県から深夜に農林水産省に
連絡があり、その翌朝8時に政務三役による対策本部会議を開い
ています。しかし、この時点で対策を打つのは霞ヶ関ではなく、
現地なのです。まして、宮崎県は10年前の経験から早期防疫対
策は慣れているはずなのです。
 万が一にもそういうことはないと思いますが、初動対策の責任
は県であることを知事は知らなかったのではないでしょうか。記
者会見で知事は記者からそのことを指摘されるとヒートアップし
「夜も寝ないでがんばっているのに何をいうか」と逆ぎれしてい
ましたが、痛いところを衝かれたからではないでしょうか。
 しかし、テレビではその部分をカットして編集し、国の対応の
遅さに知事はイライラしているという印象の映像にしてしまって
いるのです。とにかく最近のテレビ報道は、意図的に民主党のマ
イナス面を強調する、ためにする報道ばかりです。一応不偏不党
・客観報道を謳っているのですから、そういう報道をしていただ
きたいと思います。    ―──[ジャーナリズム論/22]


≪画像および関連情報≫
 ●記者会見で逆ぎれする宮崎東国原知事
  ―――――――――――――――――――――――――――
  「我々は毎日寝ずに話している。(マスコミは)対応が甘か
  ったとか、防疫措置がどうかとかいうが、一生懸命やってい
  る」と時折涙を浮かべ、いら立ちをあらわにした。記者会見
  で、今後の防疫について方法や時期を重ねて問われた知事は
  顔を紅潮させて「帰ります。ケンカを売っているのはそっち
  だ」と声を荒らげ、席を立つ場面も。再び席に戻り、その後
  の質問に「封じ込めに失敗したとは思っていない。感染源は
  多岐にわたり、完璧なディフェンス(防御)はできない」と
  強調した。    ──2010.5.18/読売新聞より
  ―――――――――――――――――――――――――――

宮崎東国原知事/記者会見.jpg
宮崎・東国原知事/記者会見
posted by 平野 浩 at 04:16| Comment(0) | TrackBack(0) | ジャーナリズム論 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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