2010年05月20日

●「検察はマスコミを使って捜査する」(EJ第2816号)

 江副氏の取り調べを担当した神垣検事は、新聞をはじめとする
メディアを非常に重視する人です。神垣氏に限らず、そもそも検
事はメディアを自分たちの手足のように使って事件を立件してい
るのです。宗像検事も例外ではないのです。
 彼らは、「新聞はこういっている」とか、「新聞も書いている
ように」とか、「新聞にはこう書いてあったが」などを連発する
のです。あたかも新聞が独自の判断でそう書いているような表現
ですが、実は検察に都合の良い情報をマスコミにリークしている
と思われるのです。
 江副氏は、取り調べの雑談のときに神垣検事に「どうして検事
さんは新聞記事や記者の話を私にするのですか」と尋ねたところ
次の答えが返ってきたのです。
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 特捜の人員はたかだか30数名。新聞やテレビ、週刊誌などの
 記者はわれわれの数十倍いるんだ。こちらは手が足りないんだ
 よ。特捜がどこかに犯罪がないかと探しに行ったって見つかる
 わけがないじゃないか。疑惑があると報道された中から挙げら
 れそうなものを選んで立件するしかない。リクルート事件も報
 道が続いているから、立件することになった。新聞は世論。特
 捜は世論に応えなければ、権威が失墜する。 ──江副浩正著
    『リクルート事件・江副浩正の真実』/中央公論新社刊
―――――――――――――――――――――――――――――
 一見もっともな意見のように聞こえます。確かに新聞社が独自
の取材を重ねて報道した事件を特捜部が取り上げるケースもある
と思います。しかし、逆に検察の方が立件したい事件のためにマ
スコミを利用し、捜査経過を特捜部に都合がよいようにマスコミ
に報道させることもたくさんあるのです。
 フリージャーナリストの上杉隆氏は、検察があの堀江貴文氏を
逮捕するためにあるマスコミを利用しているとして、自著におい
て次のようなに書いています。
―――――――――――――――――――――――――――――
 実例を挙げよう。06年にライブドア事件で堀江貴文民が逮捕
 される1年ほど前、ノンフィクションライターの窪田順生氏は
 知人の全国紙社会部記者に呼び出された。
 「特捜部が堀江を狙っていて、情報を欲しがっている。女ネタ
 でもクスリでも酒でもいいから、情報をくれないか」
 記者クラブは検察の「御用聞き」をしていたのである。窪田氏
 は堀江氏と面識のある女性を、記者を通じて検察に紹介した。
 1年後、堀江氏は逮捕された。        ──上杉隆著
   『記者クラブ崩壊/新聞・テレビとの200日戦争』より
                     小学館101新書
―――――――――――――――――――――――――――――
 小沢一郎論でも書きましたが、「政党」、「検察」、「マスコ
ミ」、「企業(経団連)」、「国民」というように、バラバラに
とらえると物事が分からなくなることがあります。
 検察が民主党の小沢幹事長の政治とカネの問題に対して強制捜
査をし、マスコミはそれを大々的に報道する──検察は社会正義
のためにそうしているのだと国民は考えます。そして、検察に対
して喝采を送ります。その結果、小沢幹事長は「巨悪」にされつ
つあります。80%以上の国民が「幹事長を辞任せよ」、「議員
辞職すべし」といっているのですから、既に「巨悪」にされてい
るといってよいと思います。小沢氏が何をしたのでしょうか。こ
れはリクルート事件の構図と同じです。この事件の場合、中心人
物が江副浩正氏という稀有の企業経営者でしたが、現在小沢一郎
氏がその立場にいるのです。
 そこで物事の見方を変えてみるのです。政権交代を果たした民
主党政権対検察を頂点とする官僚組織と自民党、新聞・テレビの
大マスコミ、そして大企業の連合体の抗争劇ととらえると、少な
くとも一般とは違った見方ができると思うのです。
 既出のフリージャーナリストの上杉隆氏は、検察とマスコミの
関係について次のように述べています。
―――――――――――――――――――――――――――――
 筆者がずっと言っている「官報複合体」──官僚機構とメディ
 アの癒着こそが問題なのに記者クラブメディアはそのことに気
 づいていないか、もしくは気づいていても触れようとしないの
 である。本来、検察とは別の視点からも取材し、それによって
 得た事実も合わせて報道し、その上で独自の判断を下すのが世
 界のジャーナリズムの常識である。ところが日本の記者クラブ
 メディアはその基本を忘れ、捜査ごっこ″に協力してしまっ
 ている。とりわけ検察と記者クラブメディアが強い「官報複合
 体」を形成している証拠に、記者クラブメディアは検察批判に
 対して極めて及び腰である。なぜか。それは批判をすれば、一
 定期間出入り禁止処分を食らってしまうからだ。記者クラブメ
 ディアは、自分の社だけが情報がないために報道できない「特
 オチ」を極端に恐れる。     ──上杉隆著の前掲書より
―――――――――――――――――――――――――――――
 113日もの長期間の拘留の間、江副氏はノートに毎日克明に
取り調べの模様を書きとめていたのです。江副氏の著書、『リク
ルート事件・江副浩正の真実』(中央公論社刊)は、その膨大な
る記録をもとに執筆されています。
 今までにも不本意にも検察に逮捕され、起訴された人の拘留・
取り調べに関する手記は多く出版されていますが、江副氏の本の
ように取り調べ担当検事、日付、時間にいたるまできちんと書か
れているものは他に例を見ないものであるといえます。
 ご本人は「自分が書くものだから、自分に都合のよい記述が多
くある」とあえて断っていますが、それを割り引いてもその内容
は鬼気迫るものがあり、リアリティを感ずるとともに、現在の検
察捜査のあり方に疑問を感じざるを得ないのです。このあとも引
き続きEJでは同書を参照しますが、ぜひご一読をお勧めしたい
書籍であります。     ―──[ジャーナリズム論/20]


≪画像および関連情報≫
 ●上杉隆著『記者クラブ崩壊』についてあるブログの記事
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  別のレビューで、最近「○○崩壊」という言葉をよく見聞き
  すると書いたが、この「記者クラブ崩壊」は国民にとって歓
  迎すべきことだ。著者の上杉隆氏は前著「ジャーナリズム崩
  壊」から一貫して「記者会見のオープン化」を訴え続けてい
  る。つまり記者クラブが主要新聞・TV・通信社のみの閉鎖
  組織のため、すべての情報が国民に伝わっていないというこ
  とだ。以前の私にとっては、全くそのようなことは思いもよ
  らぬことで、新聞報道やTV報道を信じ切っていたのだが、
  今は懐疑的に受け止めるようになった。確かに各誌、各チャ
  ンネルが横並びで同じ内容の報道ばかりしている。特に民主
  党政権になってからはさらにひどくなってきているようだ。
     http://www.yafo.net/blog/2010/04/-200-by-101.html
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上杉隆著『記者クラブ崩壊』.jpg
上杉 隆著『記者クラブ崩壊』
posted by 平野 浩 at 04:13| Comment(0) | TrackBack(0) | ジャーナリズム論 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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