2010年05月19日

●「検事は被疑者に取引を迫ってくる」(EJ第2815号)

 検事は被疑者を有罪にするための証拠として被疑者から調書を
取ろうとします。検察にとって、その内容が事実と違っていても
そんなことはどうでもいいのです。
 逮捕され、拘置所に入れられた被疑者は、一日も早くそこから
出たいと考えます。しかし、それは検事の思う壺なのです。その
ため、検察側としては理屈上、拘置所の環境は劣悪であればある
ほどよいことになります。江副氏は弁護士から「早く出ようと思
うな!」と念を押されています。
 小菅は、拘置所と取調室と刑務所に分かれています。江副氏は
逮捕され、拘置所に収監されたのです。しかし、拘置所と刑務所
には冷暖房設備がないのです。ですから寒い冬などは、拘置所と
取調室では20数度の温度差があるといわれます。江副氏が逮捕
されたのは、平成元年2月13日ですから、寒いさかりだったの
です。また、逆に夏では、取調室には冷房が入っているので、や
はりそこは快適な空間になります。
 そのため、寒さや暑さに弱い被疑者は何とかして取り調べを受
けようとし、検事に迎合するような、ありもしないことを供述し
たりします。少しでも環境の良い場所に行きたがるのです。そし
て少しでもそこに長時間いたがるのです。
 水谷建設の水谷元会長が刑務所に収監中に、小沢一郎氏に対し
5000万円の裏金を渡したとの供述もこういう状況でなされて
います。水谷元会長はそういうウソの供述をした前科があるので
すが、検事たちはそんなことはまるで意に介さないのです。
 検事はそのことが真実であろうとなかろうと、そういう調書は
証拠となるので、それをマスコミにリークして、ありもしないこ
とでも平気で犯罪人を製造するのです。小沢氏はこういう手法に
よって不起訴であるにもかかわらず、既にまるで重犯罪人である
かのようにされてしまっています。
 これでは冤罪がたくさん生まれるのは当たり前です。とにかく
日本では起訴されたから最後、とくに政治家は、即その時点で犯
罪人にされてしまうのです。検察がマスコミに執拗にリークする
ので、そういう悪いイメージが世間に定着し、そのイメージはな
かなか拭えないのです。
 さて、取り調べにおいて検事は、被疑者に対しいろいろな取引
を仕掛けます。日本では司法取引は認められていませんが、検事
は自分たちにとって都合のよい調書にサインさせるため、被疑者
にいろいろな働きかけをするのです。
 江副氏の本から、そういう例をいくつかひろってみることにし
ましょう。
 神垣検事は腰痛の持病を持っているようです。ある日、検事は
腰痛でひどく苦しんでいたのですが、そのとき彼は江副氏にこう
いっています。
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 「腰がものすごく痛い。医者に行きたいが、調書が取れないと
 医者に行けない。協力してくれ。頼む!」(一部略)
 「求刑は検察が起訴時に決める。本件ではリクルートがNTT
 から利益を得たわけでもNTTが損害を蒙ったわけでもない。
 被害者のいない事件だ。起訴時の求刑は軽くできる。起訴時の
 求刑と論告の求刑とは同じだ。日野先生(江副氏の弁護士)に
 聞いて確かめてくれ。現金ではなく、所詮株の譲渡話だ。調書
 には君の言い分も書く。早期保釈はヘッドクオーターも了解し
 ている。頼む」それまで恐かった検事からしんみりと語りかけ
 られ、私は当惑した。           ──江副浩正著
    『リクルート事件・江副浩正の真実』/中央公論新社刊
―――――――――――――――――――――――――――――
 加藤六月農相の件で、宗像検事は「自民党から2名、野党1名
をあげる方針が決まった」といい、ところでといって、次のよう
な話を持ちかけてきたのです。
―――――――――――――――――――――――――――――
 そう言って宗像検事は私に身を近づけると、上目遣いで声のト
 ーンを落として言った。「そこであなたとのネゴシエーション
 なんだが・・・。政治家の件では君を逮捕しない。4回も逮捕
 されたらあなたの世間体も悪いだろう。僕もしのびないと思っ
 ている。任意の調べになれば弁護士と毎日自由に接見できる。
 それもあなたにとって有利なことなんだよ。政治家については
 任意で取り調べる。僕が作る調書に署名してくれれば、軽い求
 刑にして、早期に保釈する。求刑は起訴時に検察が決めるんだ
 よ。悪いようにはしないことを約束する」
                ──江副浩正著の前掲書より
―――――――――――――――――――――――――――――
 脅したり、すかしたり、泣き落しをかけたり、懇願したり、検
事はいろいろ被疑者に仕掛けてくるのです。このようなときに江
副氏は、リクルート大阪支社の顧問弁護士の笹川俊彦先生に次の
ようにいわれたのです。
―――――――――――――――――――――――――――――
 肉体労働者や暴力団組員などは長期勾留でも耐えられるけど、
 江副さんのような神経を使っている人は長期勾留されると元に
 戻るのに随分時間がかかる。新聞で見る限り罪にされても大し
 た罪ではない。おそらく執行猶予や。江副さんの弁護士は人権
 派のようだが、事実に反する調書に署名したらあかんと言うか
 もしれへんが、結果はたいてい同じで、あとでむなしい思いを
 するだけや。ここは検察官が作る調書に署名して早期保釈を受
 けた方がええ。あんまり頑張りなさんな。
                ──江副浩正著の前掲書より
―――――――――――――――――――――――――――――
 ロッキード事件では、田中角栄元首相の調書は一通もなかった
のですが、秘書の榎本氏や丸紅関係者の調書で有罪になっている
のです。どうせ有罪にされるのなら、ここで取引に応じた方がラ
クかなと考えて、江副氏は不本意ながら検事作成の調書にサイン
をはじめたのです。    ―──[ジャーナリズム論/19]


≪画像および関連情報≫
 ●司法取引とは何か
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  被告人による罪状認否の制度が存在する英国法の国で可能に
  なる制度であるが、実際に司法取引を使っているのは米国だ
  けである。犯罪の多い米国では刑事裁判の大部分が司法取引
  で行われている。一方、大陸法の国では、被告人が罪を認め
  ても裁判は行われ、裁判官がが有罪にする十分な証拠がない
  と判断すれば無罪となるというように、基本的に被告人によ
  る罪状認否という制度が無い。そのため、司法取引を行わな
  いか、限定している国が多い。    ──ウィキペディア
  ―――――――――――――――――――――――――――

加藤六月元農相.jpg
加藤 六月元農相
posted by 平野 浩 at 04:12| Comment(0) | TrackBack(0) | ジャーナリズム論 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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