2010年05月18日

●「既に取り調べの可視化は行われている」(EJ第2814号)

 江副浩正氏の本をていねいに読んでいくと、いろいろな発見が
あります。本の中に次の一節があります。
―――――――――――――――――――――――――――――
 雑談の時間に時折、検事は言った。「調書がなかなか作成でき
 ないので、僕はヘッドクオーターから、『いつまでぼやぼやし
 ているんだ』と叱られているんだよ。部長(松田昇)は叱らな
 いがヘッドクォーターは「鬼の吉永(祐介)」と言われていて
 検察庁でも有名な恐い人なんだ。僕の立場も察してくれよ。毎
 晩帰るのは3時過ぎ。朝も早い。事務官には残業手当がつくが
 検事には残業手当はつかない。事務官より僕の方が収入は少な
 いんだよ。                ──江副浩正著
    『リクルート事件・江副浩正の真実』/中央公論新社刊
―――――――――――――――――――――――――――――
 江副氏は、神垣検事がいつもいう「ヘッドクォーターは・・」
というのは何かなと思っていたのです。あるときは「取り調べの
状況が甘いとヘッドクォーターから叱られた」という発言も何度
も聞いているのです。
 これらのことから、江副氏は取調室にはどこかに監視カメラが
あって、それが本庁とつながっていることに確信を持ったそうで
す。そうでなければ、ヘッドクォーターとやらが、取り調べの状
況などを把握できるはずがないからです。したがってそれは、録
画されている可能性もあります。そして、有罪の証拠になるとき
だけその部分を出してくるのではないかと思われるのです。
 現在取り調べの可視化の議論が盛んであり、検察関係者は大反
対ですが、何のことはない、検察は既に別の目的でそれをやって
いるわけです。したがって、検察がその気になれば、すぐにでも
取り調べの可視化を実現できるのです。
 これについて、江副氏の本には、専門家の意見として次のこと
が指摘されています。取り調べの可視化の参考になると思われる
ので、引用します。
―――――――――――――――――――――――――――――
 第二次世界大戦中の日本では、銃撃の命中率を上げるために極
 小高性能の電子カメラの研究が進められ、月明かりでも敵の歩
 哨を撃てる暗視カメラが開発されました。戦後その技術が基礎
 となり、胃カメラなどの極小カメラ分野で、日本は世界一の先
 端技術の国になりました。想像ですが、取調室内の天井ボード
 の穴には極小電子カメラを組み込んだビスのようなものを貼っ
 て、そこから髪の毛ほどの細い高速デジタル回線か、マイクロ
 ウエーブで映像を本庁へ送信しているのでしょう。マイクは小
 型の一センチ四方、二〜三ミリの厚みで、接見室のテーブルの
 下や椅子の下に設置し、無線で音声を送れます。途中で増幅し
 て、検事の控え室や本庁に送信することもできます。
                ──江副浩正著の前掲書より
―――――――――――――――――――――――――――――
 ここで「江副氏の犯罪」について整理してみます。江副氏はコ
スモス社の未公開株を何らかの見返りの意思なしに多くの知人に
譲渡を勧誘した──これは事実です。しかし、これは違法ではな
く、慣例として認められているのです。
 しかし、その譲渡を勧めた対象が政治家をはじめとして、官僚
や経営者など、常識を超えて広く多岐にわたっており、そこに何
らかのビジネス上の期待があったのではないかと疑われても仕方
がない状況なのもまた事実であるのです。
 この「政財界に幅広く譲渡」ということがなければ、江副氏は
逮捕はもちろん起訴もされていないと思われます。しかし、騙さ
れたとはいえ、松原事件のようなものが起こると、メディアが派
手に報道しているので、検察としても動かざるを得なくなるので
す。さらに特捜部が動くとなると、そのプライドとしても事件と
して立件しないと収まりがつかないことになります。そこで大事
件として派手に報道したいメディアと組んで、意図的に一大贈収
賄事件に仕立て上げた観があります。
 そうなると、未公開株譲渡の中心人物である江副氏を贈賄罪で
起訴しなければならないのです。そのうえで利益を得た者のうち
公務員を収賄罪で起訴する──こういう手順になります。
 しかし、江副氏は知人に譲渡を勧めたのであって、何らかの見
返りを期待していないとあくまで否認したのです。しかし、江副
氏としても、「今後の付き合いを考えて」という漠然たる期待が
いっさいなかったかというとそうともいえないはずです。
 そこで江副氏は「単純贈賄」という罪に問われたのです。この
罪の最高刑は3年であり、江副氏は初犯なので、ほとんどのケー
スで執行猶予がつくのです。検察としては江副氏についてはこれ
で十分としていたのです。しかし、特捜部の予想に反して江副氏
はなかなか落ちなかったのです。
 この場合、特捜部側としては、江副氏を落とす方法はいくらで
もあるのです。
―――――――――――――――――――――――――――――
  1.罪のない関係者を逮捕するぞと脅すか実際に逮捕する
  2.リクルートの社長を逮捕すると脅すか実際に逮捕する
  3.保釈できる状況になっても保釈させず、長期拘留する
―――――――――――――――――――――――――――――
 1と3については、実際に江副氏に適用されています。しかし
2の「位田を逮捕するぞ」という脅しには江副氏は動揺したとい
います。当時リクルートには1兆7000億円の借入金があり、
借り入れている銀行は20行を超えていたのです。もし、位田社
長が逮捕されると、下位行は資金を引き揚げるはずです。しかし
世間体があるので、コア・バンクはその肩代わりを拒むはず。そ
うなるとリクルート・グループは資金ショートして倒産する──
江副氏に対する最も残酷な脅しだったのです。
 リクルートを潰さないため、自分が罪を受け入れても、3年以
下の懲役に執行猶予が付く。どう考えてもそうした方が得策と考
えてしまいます。     ―──[ジャーナリズム論/18]


≪画像および関連情報≫
 ●「賄賂」とは何か
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  賄賂は、主権者の代理として公権力を執行する為政者や官吏
  が、権力執行の裁量に情実をさしはさんでもらうことを期待
  する他者から、法や道徳に反する形で受ける財やサービスの
  こと。大和子と手場では「まいない」。日本国などの賄賂罪
  は贈賄先が公務員(法律上のみなし公務員規定により、公務
  員として扱われる民間人を含む)であることが要件であり、
  法人の責任者や従業員が他者から利得を得て株主などの利益
  や団体の趣旨に反する裁断を下した場合は、収賄罪ではなく
  背任罪に問われる。         ──Weblio辞書より
  ―――――――――――――――――――――――――――

東京地方検察庁.jpg
東京地方検察庁
posted by 平野 浩 at 04:19| Comment(0) | TrackBack(0) | ジャーナリズム論 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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