2010年05月14日

●「ビックネーム逮捕に異常な執念」(EJ第2812号)

 江副氏は当時NTTの会長であった眞藤恒氏とは面識があった
のです。経営者6人による新橋「松山」での「眞藤さんを囲む会
/眞藤学校」のメンバーでもあったのです。その最初の出会いは
こういういきさつがあったのです。
 当時日米貿易摩擦問題が起きており、米国のヤイター通商代表
という、うるさい官僚がいて、日本は保護貿易政策をとっている
といっていろいろな分野の開放を求めてきていたのです。その中
にクレイ社のコンピュータも買えというのがあったのです。
 その矢面に立たされていたのが、NTTなのです。NTTは米
国製品調達協定を結んでいたのですが、調達実績が目標に達して
おらず、困っていたのです。しかし、NTTは国産のスーパーコ
ンピュータを有しており、追加して購入するわけにはいかなかっ
たのです。
 そういう背景があって、リクルートとの取引でNTT側の責任
者である営業部長の式場英氏から江副氏に連絡があり、眞藤会長
の顔を立てて、クレイ社のスーパーコンピュータをNTT経由で
リクルートが買ってくれないかと要請を受けたのです。1985
年9月のことです。
 江副氏は、リクルートでもス−パ−コンピュータは必要なので
クレイ社のスーパーコンピュータ「XMP16」を購入してもよ
いと返事をしたのです。その翌日、NTTの山口常務から連絡が
あり、「このたびはご配慮いただき感謝する。眞藤から直接御礼
を申し上げたい」というので、その翌日NTT本社で、短い時間
ではあったが、眞藤会長と山口常務と話をしているのです。こう
いうわけで、江副氏が眞藤氏と面識があるということがあとで眞
藤氏にとって不利に働いたのです。
 1988年11月21日、衆参両院の「リクルート問題調査特
別委員会」から江副氏は証人喚問の要請を受けたのです。そこで
は、クレイ社のコンピュータ買い取りの話も質問のなかに入って
いたのです。
 このとき江副氏は、弁護士から、証取法違反は最高でも一年で
すが、偽証罪は最高刑が10年ですから、絶対に偽証はしないよ
うにとくぎを刺されたのです。
 しかし、NTTの弁護士からは、スパコンがNTT素通しであ
ることがわかると、日米貿易摩擦が再燃しかねないので、その点
ご配慮願いたいという要請が入り、実のところ、どうしたらよい
か迷ったのです。
 江副氏は、熟慮のすえ、ことは米国との貿易問題であり、政治
問題になるのは避けなければならないので、自分は偽証罪になっ
ても仕方がないと腹をくくって、次のようにウソの証言をしたの
です。しかし、これは結果として、眞藤会長の逮捕につながって
しまったのです。
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 スパコンの購入は単なる「素通し」ではなく、NTTにバック
 アップを受けるつもりでした。       ──江副氏証言
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 これに加えてもうひとつ江副氏にミスがあったのです。それは
逮捕前に宗像検事から取り調べを受けたさい、調書を取られてい
たことです。村田幸蔵氏というのは、眞藤会長の秘書です。
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 「村田(幸蔵)さんへの株譲渡は、眞藤(恒)さんを念頭に置
 いた株譲渡でしょう」
 「ええ、そうです」
 「村田さんとどのような話をしたのですか」
 「『眞藤さんとご相談の上、コスモス株をご購入いただければ
  ‥…・』と言いました」
 「そうでしょう。そのことをこれから調書にしますよ」
 宗像検事はそう言って、村田さんへのコスモス株譲渡は眞藤さ
 んを念頭においたものであるとの調書を作成し、署名を求めて
 きた。私が調書に署名すると宗像検事は「よし!これでいい」
 と、満足げであった。           ──江副浩正著
    『リクルート事件・江副浩正の真実』/中央公論新社刊
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 1989年3月6日、江副氏は小菅の近くの足立区検察庁に連
れて行かれ、そこで逮捕状を見せられたのです。眞藤氏への単純
贈賄での再逮捕です。逮捕状に眞藤氏の名前があるので、眞藤氏
が逮捕されたことをそれで知ったのです。
 1988年12月14日に株譲渡がマスコミに報道されたとき
眞藤会長は直ちに会長を辞任し、そのうえで、自分の預金通帳は
すべて秘書の村田に任せていたといっています。
 江副氏は宗像検事への供述として、株譲渡の話を村田氏にして
いるのですが、この眞藤氏の話を聞き、村田氏の一存で処理し、
一切眞藤氏には伝えていなかったことがわかったのです。
 この村田幸蔵という人物は、眞藤氏が石川島播磨からNTTに
移るとき、唯一連れていった人物であり、眞藤氏がもっとも信頼
していた秘書だったのです。そのため、検察は何度取り調べても
「村田→眞藤」のルートがつながらず、困惑したのです。
 そこで検察は、江副氏から「村田氏の株譲渡は眞藤氏を念頭に
置いたもの」という調書を取り、それを基にして村田秘書に迫っ
たのですが、それも不発に終わったのです。そこで時間を稼ぐた
め、長谷川、式場両氏を逮捕し、そのあとで眞藤、村田を逮捕す
るという手順で、あくまで眞藤落としにこだわったのです。なん
といってもビックネームであるからです。
 こうなると、真実はどうでもいいのです。裁判で有罪になる証
拠(調書)を積み上げて有罪にしてしまうのです。これでは冤罪
が生まれるはずです。検察は自分たちが有罪にしたい人を誰でも
有罪にできることになります。それはビックネームであればある
ほど検事の評価は上がるのです。小沢氏などはまさにビックネー
ムですが、検察は起訴できなかったのです。
             ―──[ジャーナリズム論/16]


≪画像および関連情報≫
 ●長谷川寿彦氏について/江副浩正氏
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  長谷川さんがNTTのデータ通信事業本部長をしていたとき
  あるスキャンダルに巻き込まれて関係者が警視庁に告発され
  それが週刊誌に報道された。そのため、長谷川さんはNTT
  を辞めることを決めておられた。長谷川さんはそれがなけれ
  ばNTTデータの初代社長になるはずの方で、私は「リクル
  ートにお迎えしたい」と申し出た。私がコスモス株譲渡の話
  を長谷川さんに持ちかけたのは、リクルートに来られること
  が内々に決まってからのことである。
                ──江副浩正著の前掲書より
  ―――――――――――――――――――――――――――

眞藤恒元NTT会長.jpg
眞藤 恒元NTT会長
posted by 平野 浩 at 04:17| Comment(0) | TrackBack(0) | ジャーナリズム論 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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