2010年05月13日

●「ターゲットにされたNTT眞藤会長」 (EJ第2811号)

 そのとき東京地検特捜部は、何とか眞藤恒NTT会長(当時)
を逮捕したかったのです。そのためには、特捜部側で作成した次
のストーリーが成り立つことが前提になります。
―――――――――――――――――――――――――――――
 1.江副浩正は、値上がり確実なリクルート・コスモスの未公
   開株を賄賂目的で、将来リクルートビジネスに対して便宜
   を図ってもらう目的で譲渡したこと
 2.江副浩正は、上記1について取り調べにおいて賄賂目的で
   コスモスの未公開株を多くのビジネス関係者に譲渡したこ
   とを認め、調書に署名していること
―――――――――――――――――――――――――――――
 未公開株の配布先のうち、受け取ると一番危ないのは、公務員
である官僚と政治家です。この中においてNTT関係者は準公務
員であり、どちらかというと、特捜部が一番最初に落としたかっ
た存在であったのです。
 そこで、特捜部は、上記2を江副氏に認めさせるため、執拗に
特捜部作製の調書にサインさせようとしたのです。しかし、江副
氏は、そういう目的で未公開株を譲渡したのではないと強硬に主
張していたのです。そして、これは真実であったと思われます。
 1989年2月13日、午後3時に江副氏は神垣検事から「逮
捕」を告げられたのです。逮捕容疑は次の通りです。
―――――――――――――――――――――――――――――
   NTT長谷川寿彦、式場英に対する単純贈賄容疑
―――――――――――――――――――――――――――――
 江副氏としては、取り調べでは、眞藤会長のことしか聞かれな
かったので、眞藤会長の逮捕を心配していたのですが、そうでな
くて少しホッとしたそうです。
 実際は、眞藤会長の秘書の村田氏と長谷川、式場両氏とがうま
くつながらず、関係者を逮捕・拘留して、江副氏を含めてウラを
取り、眞藤会長を逮捕しようとしていたのです。
 江副氏は逮捕を告げられると、神垣検事と一緒に車に乗せられ
小菅拘置所に向かったのです。車が拘置所に近付くと、神垣検事
は江副氏に次のようにいったのです。
―――――――――――――――――――――――――――――
 ここで君に手錠をかける。これから大勢のカメラマンが君を撮
 る。手錠がカメラに映らないように、手を下げて両足の間には
 さんでおいた方がいい。門を入るときにどういう姿勢をとるか
 は君の自由だが、君のような立場の人は正面を向いて胸を張っ
 て映される方がいいだろう。        ──江副浩正著
    『リクルート事件・江副浩正の真実』/中央公論新社刊
―――――――――――――――――――――――――――――
 何のことはない。マスコミに逮捕情報をリークし、拘置所に入
る瞬間の写真を撮らせて、共同演出を図っているのです。そして
拘置所の門のところで車はスピードを落とし、カメラマンが車中
の江副氏の写真を撮りやすいようにしたのです。これは、まるで
「見せしめ」であり、人権侵害そのものです。ちなみに先進国で
こんなことをやっている国は日本だけです。
 逮捕されたその日の午後7時36分に取り調べが行われたので
す。担当検事は同じ神垣検事ですが、その態度は逮捕前とは一変
して高圧的になったのです。
―――――――――――――――――――――――――――――
 私の正面に座るやいなや、検事は大声で言った。
 「お前の家のガサ入れ(家宅捜索)で何も出なかった!病院に
 もブツ(証拠物)はなかった!どこに隠したんだ!」
 「どこにも隠していません」
 「バカヤロー!嘘をつくな!」
 窓ガラスが割れるような大声を浴びせかけられながら、「おか
 しなことを言う」と私は思った。初めて取調べを受けてから、
 55日後の逮捕。隠す物があれば時間は十分あった。今になっ
 て証拠物が何もないと怒るのはおかしいし、そもそも私には隠
 すべきものは何もない。    ──江副浩正著の前掲書より
―――――――――――――――――――――――――――――
 特捜部は徹底的にNTTとリクルートの関係を聞いてきたので
す。特捜部としては、冒頭に述べたストーリーの2をクリアする
必要があったからです。江副氏は、リクルートとNTTは取引関
係にはあったが、NTTの大口顧客がリクルートであって、リク
ルートはNTTにお金を払う立場であって、NTTの長谷川、式
場両氏に特別の便宜など受けていないと何回も説明したが、神垣
検事はまったく聞く耳を持たないという状況だったのです。
 こういう押し問答は何日も続いたのです。
 遂に特捜部は江副氏に上記2のストーリーを認めさせるために
最も卑劣な「脅し」をはじめたのです。リクルート常務の間宮舜
二郎とコスモス取締役の舘岡精一の2人が逮捕されたのです。
 2月16日、神垣検事は江副氏に対して、次のように言い渡し
ているのです。
―――――――――――――――――――――――――――――
 君の態度は極めて挑戟的である。このような態度をとり続ける
 とさらに逮捕者が増えるぞ。館岡、間宮も君が正直に話せば、
 逮捕する必要はなかったが話さないので逮捕した。もし、この
 まま君が黙秘を続けるなら、第3弾、第4弾の逮捕も考える。
 位田社長、池田友之(コスモス)社長も逮捕せざるを得なくな
 る。             ──江副浩正著の前掲書より
―――――――――――――――――――――――――――――
 逮捕して無罪か有罪かを調べるのが検事の役割のはずです。し
かし、この調べ方は裁判で有罪にするための調書を取るのが検事
の仕事のようになっています。
 それにしても、検事の求める供述をさせるために罪のない関係
者を逮捕するというのは、権力の乱用そのものではないでしょう
か。これは戦前の特高そのものです。
             ―──[ジャーナリズム論/15]


≪画像および関連情報≫
 ●政治家の小菅拘置所訪問記
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  建設環境委員会で小菅拘置所を視察した。職員から「ようこ
  そいらっしゃいました」と迎えられたが、ちょっと変な感じ
  だ。3010名の定員に対して現在1984名が収容されて
  いる。窃盗などの犯罪が一番多いのかと思ったら、何と覚せ
  い剤がトップで23%を占めている。年齢では20代・30
  代で45.5%と半数近い。若い世代の犯罪が増えるのは、
  展望を見出すことができないからだろうか。建物の屋上にあ
  る運動場は狭く、外へでて土を踏むことはできない。人権の
  観点から問題にされている。外へ出られないので、これまで
  の拘置所の周りの高い塀も取り壊されつつある。
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東京小菅拘置所.jpg
東京小菅拘置所
posted by 平野 浩 at 04:06| Comment(0) | TrackBack(0) | ジャーナリズム論 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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